障がいのある人が何人いて、どのような生活をしているのか。実は正確に把握されていません。主に用いられるデータは「身体障害者手帳交付台帳登載数」と「生活のしづらさなどに関する調査」です。
「身体障害者手帳交付台帳登載数」は、毎年度末に「福祉行政報告例」として、都道府県から厚生労働省に報告されます。データ管理における都道府県と市町村の役割分担、利用する情報システムなどは、各自治体によります。そのため、新規交付者、死亡者、住所移転者などの情報の精度がはっきりしません。また厚生労働省による集計作業に時間がかかるため、2020年7月現在で公表されている最新の数値は、2019年3月末のデータです。存在するデータは障害者手帳交付数だけで、生活実態に関する情報はありません。
「生活のしづらさなどに関する調査」(以下「生活の調査」に略します)は、厚生労働省が5年毎に実施しています。障がいのある人が暮らす家庭に詳細なアンケートをお願いし、回収して分析する調査で、現時点の最新調査は2016年12月1日が基準日です。有効回答数は6,175件で、この結果を全体数値に比例法で推定して試算します。対象は身体障害者手帳の交付を受けていない、長引く病気や怪我による障がいのある人も含まれます。
基準日と調査方法、調査対象が異なるので、2つのデータの数値は合致しません。
〇身体障がい者の人数
「福祉行政報告例」 509万人(2019年3月)
「生活の調査」 429万人(2016年12月)
内閣府による「令和元年版障害者白書」では、「生活の調査」に加えて「社会福祉施設等調査」と「患者調査」のデータを加味して、436万人と推定しています。
中間数値としてこの436万人を分子にした場合、2019年度では全人口の3.4%が身体障がい者と計算されます。
〇補装具の購入決定件数
「福祉行政報告例」で2018年度の正確な支給決定件数が示されています。
車椅子 21,230件
電動車椅子 2,944件
装具 44,696件
座位保持椅子 2,039件
歩行器 2,427件
この他に車椅子及び電動車いすの修理費用の支給決定件数は以下です。
車椅子修理 39,412件
電動車椅子修理 13,645件
したがって、2018年度に新規に購入された車椅子と電動車椅子は24,174台、修理された車椅子と電動車椅子は53,057台、合計で77,231台の車椅子が助成対象になりました。
ついでながら、障がいのある人の生活に関するデータを一部紹介します。
〇身体障がい者の外出の頻度
「生活の調査」によると、身体障害者手帳の交付者で65歳未満の人の外出の頻度は以下になります。
毎日外出する 33.4%
1週間に3日から6日程度外出する 31.7%
1週間に1日から2日程度外出する 15.1%
ここまでの累計で80%を超えます。
〇知的障がい者と比較した生活実態
2つのデータは共に障害者手帳の種別「身体障害者手帳」と「療育手帳」の交付者にデータが区分けされます。以下に「生活の調査」から、身体と知的で、極端に違いがあるデータを紹介します。
・施設入所者の割合(65歳以上の高齢者も含む)
身体障害者 1.7%
知的障害者 11.1%
・自宅で生活する人の同居者(65歳未満)
身体障害者 親と同居 48.6%
知的障害者 親と同居 92.0%
「生活の調査」では、身体と知的、両手帳の交付を受けている重複障がい者のデータは明確ではありません。
以上のデータから概算すると、日本には500万人近くの身体障がい者が暮らし、年間で8万台弱の車椅子が購入または修理されています。身体障がいのある人の半数は家族と自宅で生活し、8割の身体障がい者は定期的な外出をしています。
(本稿は2020年7月に執筆しました)