有効期間がない身体障害者手帳は、長期間更新されずに、顔写真が古くなるケースがあります。身体障害者手帳を身分証明証として利用する重度の障がいがある人は多く、あまりにも写真が古く本人と分からないと問題です。
身体障害者手帳は顔写真が古いことを理由に再交付を申請できます。その場合は、医師の診断書や意見書は不要です。自治体によって多少の違いはあるようですが、新しい写真と身体障害者手帳を窓口に提出するだけの自治体もあります。
顔写真が古いことを理由した再交付申請について、経緯をまとめます。
昭和24年に「身体障害者福祉法」が制定され、昭和25年4月に施行されました。その内容や記載事項は現在の手帳とは異なりますが、この時に身体障害者手帳が誕生しました。
詳しい経緯は不明ですが、厚生労働省が昭和31年に、北海道知事からの照会に対し「昭和 31年2月1日付け社発第 64号」で、「年数の経過等により、容貌が著しく変化して、その写真によって本人を認識することが困難になった場合には、本人に対し、新たな写真の提出を求めることが適当。・・当分の問、居住地等の変更の手続に準じる等、適宜措置して差し支えないこと。」と公式に回答している記録が残されています。
そして月日は流れ、平成25年に「総務省中部管区行政評価局」が、総務省設置法第 4条第 21号に基づいた、行政に関する苦情や意見、要望を受け付ける「行政相談」として以下の相談を受け付けました。
「身体障害者が各種援助措置を受ける場合、身体障害者手帳の提示を求められるが、手帳には有効期間はなく、貼付されている 顔写真が古いものになってしまう。このため、手帳を提示しても本人確認ができず、不審に思われることがある。申請により新しい顔写真を貼付した手帳の再発行ができるとのことであり、このことを周知してほしい。」
申出を受けて総務省は行政苦情処理委員会に諮り、「同委員会の意見を踏まえて、平成 25 年3月13日付けで、愛知県等に対して、障害をお持ちの方が円滑に日常生活をおくれるよう、身体障害者手帳に貼付された顔写真が古くなった場合、手帳の再交付が可能であることの周知ついて検討が求められることを参考連絡」しました。
このような経緯があったため、愛知県内の市町村では、顔写真が古くなった身体障害者手帳は再交付できることが、広報されています。
愛知県以外の自治体では、積極的な広報はほとんど見かけませんが、身体障害者手帳は顔写真が古いことを理由に再交付申請ができます。
(本稿は2020年7月に執筆しました)