医療的ケア児と家族の生活 命と人権を守る社会の取り組み

医療的ケア児と家族の生活 命と人権を守る

生きていくために日常的に医療的なケアと医療機器が必要な子どもたちがいます。医療的ケア児の人数、本人の状態と家族の生活、そして社会での取り組みの状況を紹介します。

2016年に改正された児童福祉法では「地方公共団体は、人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児が、その心身の状況に応じた適切な保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を行う機関との連絡調整行うための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるように努めなければならない」と定められています。

 

〇医療的ケア児の人数

2017年5月1日を基準日として、全国の公立特別支援学校(幼稚部から高等部まで)、公立の小中学校を対象に調査が行われました。

その結果は特別支援学校に8,218名、公立小中学校に858名、合計で9,076名の医療的ケア児が在籍していました。

就学年齢以前の幼児や、公立特別支援学校の高等部に在籍していない生徒は調査対象外になるので、医療的ケア児の全体数はもっと多くなります。厚生労働省では全国で約2万人と推定しています。

 

〇必要な医療的ケアの内容

同調査では、「吸引」が必要な人数、「経管栄養」が必要な人数など、医療行為別の件数も調査しています。

その結果は延べ件数で28,131件。つまり医療的ケア児一人当たり、平均で約3件の医療的行為が行われています。一人で複数の医療的ケアを必要とする子どもが多数存在することが分かります。

内容としては「たんの吸引等」の呼吸器関係の医療行為数が67%を占めています。

 

〇家庭の状況

複数の自治体で医療的ケア児の実態調査が行われています。2019年に神奈川県が実施したアンケート調査が2020年4月に公表されました。神奈川県内には約1,000人の医療的ケア児が生活していると推定されています。今回の調査は約200人から有効回答がありました。その結果からデータを紹介します。

・主たる介護者

「母親」が71.0%、「父親」が4.5%。「祖母」が1.0%です。残りの23.5%は、主たる介護者を選択していない回答です。

・主たる介護者の就労状況

「就労している」が31.5%、「預け先があれば就労したい」が43.5%です。自由意見爛には、就労ができないことによる経済面での不安の声が複数あげられています。

・重複障がいの状況

身体障害者手帳と療養手帳の両手帳の交付を受けている子どもが122人。

その内、両手帳とも1級(A1)の人が102人います。

医療的ケア児の多くは、重度で重複した障がい児です。

・本人の状態

「寝たきり」が61.5%、「自分で座れる」が12.5%、「一人立ちできる」が21.5%です。

過半数の医療的ケア児は寝たきりです。そして「寝返りが出来ない」が47.5%を占めます。

食事は「全介助」が74.0%。排せつは「全介助」が82.5%。入浴は「全介助」が81.0%です。

言語理解は「不可」が42.0%。コミュニケーションは「ほとんどできない」が46.5%です。

・通学手段

複数回答ありの条件で、一番は「自家用車」76.7%です。

二番は「スクールバス」で24.2%。神奈川県の分析では、医療的ケアの内容から、ほとんどの子どもはスクールバスを利用出来ないはずなので、下校時に利用する放課後等デイサービスへの送迎車両が、この回答に含まれている可能性があるとしています。

 

〇国や自治体の政策

医療的ケア児に関わる、国家予算がついている主な政策を紹介します。

・看護師の配置

政策により管轄省庁が異なり予算枠は複数になりますが、保育所から高等学校、放課後等デイサービスまで、そしてスクールバス添乗者も含めて、医療的ケア行為が出来る看護師の拡充が取り組まれています。

また指導的な立場の看護師の配置や、今後の在り方の調査研究にも予算が組まれています。

・事業者への報酬改定

医療機関から通所、入所サービス事業者など、医療的ケア児を受け入れる報酬を増額する政策に予算がついています。

・医療的コーディネイターの配置と協議の場の設置

医療的ケア児総合支援事業として、各自治体で障害児福祉計画を策定し、関係機関の協議の場を創設し、医療的ケア児等コーディネイターを配置して、計画を推進する政策です。2019年8月には都道府県レベルでの協議の場の設置は100%になりました。市区町村レベルでは68%と報告されています。

 

〇医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)

予算が組まれる政策の中から、2020年度に運用が始まる予定の新システムを紹介します。

「医療的ケア児の外出時の安心をサポート」することを目的とした、全国どこでも必要な医療の提供を受けられるように、かかりつけ病院以外でも医療情報を共有するシステムです。国家予算は2019年度に約2億円、2020年度は約5,400万円です。

事前登録制で、診察記録を登録し、許可した相手がその内容を参照できます。2019年からプレ運用が始まり、2020年度中には本格運用が開始される予定です。

 

全国の医療的ケア児とその家族の命と人権を守るために、以上のような取り組みが行われています。

(本稿は2020年7月に執筆しました)