成田山新勝寺はエレベーターを導入するなど、境内のバリアフリー化に力を入れている寺院です。境内ほぼ全域が車椅子でお参りができます。
隣接する成田山公園は桜と紅葉の名所。1928年に開園した名園ですが、車椅子で散策できる範囲は限られます。
車椅子からみた成田山のバリアフリー状況を紹介します。
○参道の状況
JR成田駅の近くから表参道が始まります。
表参道はバリアフリー改修済みで、歩道と車道の段差はほとんどなく、歩道の路面は一部を除きフラットです。車椅子で通行しやすい参道です。
ただし鰻屋が軒を連ねる参道の中間付近は急坂です。道幅は狭くなり交通規制がない日は、バスなど車両が通行します。元気な介助者がいれば、なんとか通行できる坂道ですが、車椅子での上り下りは楽ではありません。
坂を下りて「総門」付近までくると、道はフラットになり、車椅子で楽に通行できます。
○駐車場の状況
成田山周辺には数多くの有料駐車場があります。現時点で、駐車料金の障がい者減免制度がある駐車場は未発見です。また身障者用駐車区画の用意がある駐車場は、ほとんど見かけません。今回の取材では、駅に近い「成田市営第一有料駐車場」に、1台分身障者用駐車区画がありました。
○総門から最初のエレベーターまでの状況
成田山新勝寺の境内に入ります。「総門」は2007年の建立。門の下に段差はなく、車椅子で通行できます。
その先に見える重文の「仁王門」は階段路です。車椅子では車椅子マークのサインに従い「光輪閣」方面へ左折します。
そこから傾斜路があります。角度はきつくはありません。
総門をくぐらずに、車両通行路から「光輪閣」へ向かうルートもありますが、入口の傾斜路は角度があります。
突き当り右側のトイレにバリアフリートイレがあります。奥に細長い個室で、ウォシュレット付き便器です。ユニバーサルベッドはありません。
車椅子マークのサインに従い、突き当りを左に進むと、エレベーターが2基あります。このエレベーターで「大本堂」の高さに上がります。
○大本堂のバリアフリー状況
エレベーター乗降場所から大本堂方面へ舗装通路が整備されています。
車椅子マークのサインに従い、大本堂の横に進むと、エレベーターが1基あります。このエレベーターで大本堂に上がります。
大本堂内のほとんどの段差箇所は、段差解消されているか、スロープが設置されています。車椅子で移動できない箇所はありません。
そのまま第本堂の裏に回り、車椅子から石庭園を眺めることができます。
○大本堂周辺のバリアフリー状況
大本堂がある高さに重文の「三重塔」「釈迦堂」があります。どちらも舗装路を移動して車椅子で近づけます。
釈迦堂の先には、お店が並ぶ「奥山広場」があります。ここも車椅子で移動可能です。
「出世稲荷」は階段の上で車椅子では参拝できません。
○平和大塔へのエレベーターの状況
大本堂の横を進むと、段差箇所に階段とエレベーター2基があります。このエレベーターで平和大塔などがある高さに上がります。
エレベーターの横には、境内で最も新しいトイレがあり、バリアフリートイレが1つ用意されています。
ウォシュレット付き便器、オストメイト装置が備えられています。
○平和大塔のバリアフリー状況
平和大塔はスロープが設置されています。傾斜角度は緩く、見た目よりも楽に車椅子で上がることができます。そして車椅子で不動明王を拝むことができます。
○平和大塔周辺のバリアフリー状況
エレベーターの乗降場所から舗装通路が整備され、平和大塔までの間に複数のお堂などがあります。
「額堂」と「光明堂」は重文です。車椅子で近づいて見学できます。
スロープがあるお堂もあります。
新しい祠もあります。
また平和大塔付近からは、隣接する成田山公園を見下ろすことができます。
平和大塔から境内を出た地点にある資料館「霊光館」にも、スロープがあります。
○成田山公園のバリア状況
境内に隣接する成田山公園の状況です。境内から公園へ入るアクセスルートが2ヵ所ありますが、どちらも階段路で車椅子では通行できません。
平和大塔から霊光館の横を通り「書道美術館」駐車場に向かう車道があります。この道は急坂です。特に公園から書道美術館付近の区間の傾斜はきつく、車椅子ではかなり辛い角度です。無理ではありませんが、お薦めできません。
車椅子で成田山公園内を散策できるフラットな舗装路は、「龍智の池」周辺のごく一部です。
その先はすぐに未舗装のデコボコ路や傾斜路、そして階段路になります。
したがって、成田山公園には車でアクセスして、フラットエリアに近い「成田山公園駐車場」を利用して、車椅子で無理をすることなく、龍智の池周辺を散策するコースをお薦めします。
現在のところ成田山公園駐車場の駐車料金は1回500円で前払い。支払いに紙幣は使用できず、硬貨のみです。料金の障がい者減免制度はありません。500円分の硬貨を用意して利用して下さい。
成田山新勝寺の境内は、3ヵ所のエレベーターを利用して、ほぼ全域を車椅子で参拝できるバリアフリー寺院です。
成田山名物「栗羊羹」で名高い「なごみの米屋」の詳しいバリアフリー情報を別稿で掲載しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2020年12月に執筆しました)