日本の障がい者福祉 戦後から2020年まで75年の歴史をやさしく解説

日本の障がい者福祉 戦後から2020年まで75年の歴史をやさしく解説

現代からみると信じられないことですが、戦前戦中まで日本には、国家的な障害者福祉制度は傷痍軍人を対象とした制度があるだけで、一般的な障害者を対象にした制度はありませんでした。むしろ「路上の狂癲人の取扱いに関する行政警察規則」などに象徴されるように、精神障がい者は取締りの対象になる社会でした。

もちろん社会には篤志家、社会事業者など、障がい者福祉に携わる民間人はいました。それでも重度重複障がいがある人は、家族の中でその保護をうける生活をおくるのが一般的でした。

戦後、現行憲法において福祉が定められ、1946年に「生活保護法」が制定され、日本の国家的な福祉行政が始まりました。

戦後から2020年までの、障がい者福祉の歴史を紹介します。

 

《1945年~1959年》

この時代は障がい児の義務教育と、障がい者の就労を中心に、法律や制度の整備が進みました。

 

1947年には「教育基本法」と「学校教育法」が公布され、養護学校や特殊教育が学校教育の一環として位置付けられました。

盲学校と聾学校の中学校までの就学義務は段階的に政令で公布されています。

1956年には「公立養護学校整備特別措置法」が公布され、大阪府立養護学校と愛知県立養護学校が、最初の公立肢体不自由養護学校として創設されました。

1957年に児童福祉法が改正され、知的障害児通園施設が定められています。

 

障がい者の就労については、1949年の職業安定法の改正で、身体障害者に対する職業補導等が規定されました。また同年「身体障害者福祉法」が公布され、18歳以上の障がい者に身体障害者手帳・補装具の交付、更生援護などが定められています。

1958年には「職業訓練法」が公布され、身体障害者職業訓練所の設置が定められました。

 

《1960年~1969年》

60年代は障がい者の定義や範囲の拡充、それに基づいた障がい者への手当の支給が整備されました。

 

1961年に「障害福祉年金」が支給開始。

1964年は「重度精神薄弱児扶養手当法」が公布され、家庭介護の重度知的障害児に「重度知的障害児扶養手当」が支給されるようになりました。

1965年は「国民年金法」等の改正が行われ、障害年金の支給範囲の拡大、福祉年金の額の引上げが実施されました。

1966年は「特別児童扶養手当法」が公布され、「重度精神薄弱児扶養手当法」を改正し、支給対象を重度の身体障害児に拡大。

1967年は「身体障害者福祉法」が改正され、障害の範囲が心臓、呼吸機能障害まで拡大されました。

同年「児童福祉法」が改正され、重症心身障害児施設が創設されます。

また「精神薄弱者福祉法」が改正され、授産施設が新設されています。

1969年には、障害者の保護者が死亡又は重度障害になったとき障害者に年金が支給される「心身障害者扶養保険制度」が始まりました。

 

《1970年~1979年》

70年代になると、障がい者を社会の中に受け入れるための制度改正が進みます。

 

1970年は、心身障害者福祉に関する施策の基本的事項を規定する「心身障害者対策基本法」が公布。同年「心身障害者福祉協会法」が公布され、特殊法人心身障害者福祉協会が設立されました。

1971年に「道路交通法」が改正され、車椅子利用者を歩行者として扱うことが正式に定められています。

1973年には、国電中央線に「シルバーシート」が登場。

1979年に「民法及び民法施行法」が改正され、身体障害者を準禁治産宣告の要件から廃止しました。

 

《1980年~1989年》

80年代になると、障がい者差別の解消のための制度改正も行われています。

 

1981年は「障害に関する用語の整理のための医師法等の一部を改正する法律」が公布され、「つんぼ・おし・盲」の呼称が改められました。

1983年は「障害者に関する用語の整理に関する法律」が公布され、「不具・ 奇形・廃疾・白痴者」などの呼称が改められています。

1985年には、建設省より「視覚障害者誘導用ブロック設置指針について」が通達され、視覚障害者誘導用ブロックの形状設置方法が定められました。

1989年には、知的障害者のグループホームの制度化、手話通訳士制度の創設が行われています。

 

この他に重要な改正になったのは、1985年の「国民年金法」の改正です。ここで「障害基礎年金制度」が創設されました。

 

《1990年~1999年》

90年代になると、バリアフリー化をはじめ、現代のテーマにまでつながる取り組みが始まります。

 

1991年には建設省から「官庁営繕における身体障害者の利用を考慮した設計指針」や「鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針」などが発生。

1992年は「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、重度知的障害者の雇用率制度におけるダブルカウント制度などが取り入れられました。

1993年には、名称の改正や障害範囲の明確化、障害者の日の規定、障害者計画の策定などが織り込まれた「障害者基本法」が公布されています。

同年には「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」も公布され、身体障害者向けの通信・放送のサービスに対する助成が始まりました。

1994年には、障害者基本法に基づく初めての「障害者白書」が刊行。

1998年「特定非営利活動促進法」が成立。

1999年は「民法の一部を改正する法律」が成立し、成年後見制度の改正、聴覚・言語機能障害者による公正証書遺言の利用を可能にする遺言方式の改正が行われています。

 

《2000年~2009年》

2000年代になると、障がい者福祉の新しい制度設計が始まります。

 

2000年に「介護保険法」が施行されました。

2001年は、バリアフリーに関する関係閣僚会議「バリアフリー化推進功労者表彰要領」が決定。

2002年は「障害者基本計画」が閣議決定。また同年には「身体障害者補助犬法」が成立しています。

2003年には、身体障害者と知的障害者の福祉サービスが「措置制度」から「支援費制度」へ移行。

2004年は数多くの制度が決められた年です。「バリアフリー化推進要綱」。「障害者基本法の一部を改正する法律」で差別禁止理念の明示、障害者の日の障害者週間への拡大、都道府県・市町村障害者計画策定の義務化。「発達障害者支援法」成立。「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」成立。主なものでもこのような改正が行われました。

2005年には「障害者自立支援法」が成立。また「ユニバーサルデザイン政策大綱」が公表されました。

2006年にはバリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が成立。

2009年は「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が一部施行され、企業グループ算定特例、事業協同組合等算定特などが創設されました。

 

《2010年~》

日本は2014年に国際条約である「障害者権利条約」を批准しました。この実現のために、2010年代以後、様々な取り組みが行われています。

 

2010年は「障害者自立支援法」の改正。

2011年は「障害者基本法改正案」が成立。「障害者虐待防止法」も成立しています。

2012年には「障害者総合支援法」が成立。また障害者施設から商品を優先購入する「障害者優先調達法」も成立しています。

2013年は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立。「第三次障害者基本計画」が閣議決定。そして障害者の法定雇用率が引き上げられました。

2016年は、障害者に対する差別の禁止、合理的配慮の提供義務が定められた「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が一部施行。

2018年は「第四次障害者基本計画」を閣議決定。

2019年は「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を公表。

2020年はいわゆる改正バリアフリー法が可決されています。

 

75年の時間をかけてここまで来ました。この先も障がい者への差別がない、障がい者の権利を守る社会の実現に、日本は取り組み続けます。

(本稿は2020年6月に執筆しました)