障がいと共に生きる「インクルーシブ教育システム」をやさしく解説

障がいと共に生きる「インクルーシブ教育システム」をやさしく解説

「障害者権利条約」で示されている「インクルーシブ教育システム」は、障がいのある人とない人が共に生きる「共生社会」の実現に向けての教育システムの理念です。

日本では2011年に「障害者基本法」が改正されて「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮」することが規定されました。

2013年には「学校教育法施行令」が改正され、特別支援学校への就学が原則とされていた一定以上の障害のある児童生徒は、総合的な観点から就学先を決めるようになりました。

そして同2013年から「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」が取り組まれ、事例の収集、検証が行われています。

現在、日本で取り組まれている「インクルーシブ教育システム」の概要を紹介します。

 

〇早期発達支援コーディネーターの配置

障がいのある子どもへの教育をどうするべきか。なるべく幼少の早期から専門家が関わり、家庭、教育機関、医療福祉機関と連携を進めるシステムの構築を目指しています。その中核になる人材として「早期発達支援コーディネーター」の育成が取り組まれています。

 

〇教育支援委員会による「合意のある」就学先の決定

障がいのある子どもの就学先を「障がいの状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から決定する仕組み」の構築を目指しています。

就学先は最終的には市町村教育委員会が決定しますが、「本人と保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人と保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行う」役割を担う組織として、各市町村の教育委員会に「教育支援委員会」を編成して有効に機能させる取り組みが行われています。

 

〇学校での基礎的環境整備の推進

障がいのある児童生徒の教育を行う上で、障がいの特性に応じて必要な環境を整備する必要があります。

例えば肢体不自由であれば、校舎や教室のバリアフリー化の推進、理学療法士、作業療法士など専門スタッフの配置、医療的ケア児であれば看護師の配置が必要です。

そのための財源の確保に、国、都道府県、市町村それぞれのレベルで取り組まれています。

 

〇学校での合理的配慮の充実、そのためのノウハウ構築

教育現場において、適宜個別に、障がいのある児童生徒に合理的な配慮を行うことが求められています。しかしながら、どのような行為行動が、教育的に最善の合理的な配慮であるのか、十分なノウハウがないのが現状です。

そのため文部科学省では、モデル事業として事例を収集し、評価する取り組みを行っています。教育現場での合理的な配慮の事例は、国立特別支援教育総合研究所のデータベース「インクルDB」で公開されています。

 

〇学校間の交流と共同学習

障がいのない児童生徒と、障がいのある児童生徒との交流は、双方にとって重要なインクルーシブ教育の活動です。そのため地域内の学校を組み合わせ、交流や共同学習が行われるシステム構築が進められています。

各学校において「狙いを明確にし、教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど計画的・組織的な推進」が取り組まれています。

 

〇教職員の専門性の確保

「インクルーシブ教育システム構築のため、すべての教員は、特別支援教育に関する一定の知識・技能を有していることが求められる」とされています。

その実現のため、特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状の取得率の向上、外部人材の活用、そして障がいのある人の教職員への採用が取り組まれています。

 

インクルーシブ教育への取り組みが本格的に開始されて約10年が経過しました。以上のような「システム構築」が、日本では進められています。

(本稿は2020年6月に執筆しました)