医療用ヘッドギアは、頭部を衝撃から保護するための道具です。障がいのある人で、ヘッドギアを着用している人には、大きく分けて3つのタイプがあります。
1.自立歩行に挑戦しているが転倒する危険性のある人。
誰でも転ぶことはありますが、下肢の障がい、脳梗塞などの後遺症、高齢から来る運動機能障がいなど要因は様々ですが、転倒リスクが高い人が自立歩行に挑戦するときに、安全確保のために着用します。
2.通常は歩行や運動に問題はないが、突然卒倒する可能性のある人。
てんかんの人などが典型ですが、糖尿病など様々な病気が原因になり得ます。いつ卒倒するのか解らないので、外出時だけではなく、室内でも着用したほうが安全です。
3.自分で自分の頭部を痛めてしまう人。
いわゆる自傷行為です。原因になる脳障がい系の病気は様々あります。一番大変なのはこのタイプの人です。
ガンガン壁に頭を打ちつけたりします。そばに介助の人が付いていたとしても、手が付けられない場合が多いのです。
ヘッドギアをしても、自分で取ってしまう人も少なくありません。本人も周りの人も、辛い症状との戦いです。
ヘッドギアは、オーダーメイドで作ると高いのですが、医療器具として認定されれば、公的な助成の対象になります。
ボクシングの選手がつけるヘッドギアはカッコイイかも知れませんが、やはり普通は格好悪いので、頭部保護の機能性は劣ってしまいますが、普通の帽子の内と外にヘッドギアの部材をまいた、一見すると普通の帽子に見えるタイプもあります。足元に不安がある程度の障がいのあるお年寄りなどには、普通の帽子タイプが人気です。
近年、福祉施設での入居者への強制的なヘッドギアの着用が、身体拘束の一種で人権侵害にあたるのではないかという議論があります。
本人に着用の是非の判断が出来ない場合のヘッドギア強制着用をどう考えるのか、難しい問題です。
一般原則をつくることは難しく、その人の障がいの状況と、外出か屋内か、などの場面の状況を鑑みて、人道的配慮のある合理的な判断をするしかないと思います。
格好の悪いヘッドギアを着用して、いかにも障がいがある、という印象を受ける人がいます。障がいのある人は、転倒、卒倒、自傷などのために、やむを得ず医療用ヘッドギアを着用しています。
(本稿は2019年11月に執筆しました)