通常の視力検査は、被験者が応える、あるいは目の焦点を合わせることで成立します。
コミュニケーション障がい、知的障がい、身体障がいなどのために、発語が無い人、呼びかけに対して通常の反応が無い人の視力を検査するのは大変です。
一般に正確な測定は出来ません。
3歳児検診から視力検査がおこなわれますが、生まれつき障がいのある子供で、呼びかけに反応出来ない人は、視力検査が成立しません。
何らかの反応があれば、どうにかなります。
何かを見せてしっかりと目で追うことができれば、とにかく見えていることが証明されます。
明るくしたり暗くしたりすることで、何らかの反応があれば、少なくとも明るさは見えていることが証明されます。
動物のキャラクターなど解り易い絵に反応があるようなら、本格的な検査が進みます。
「くまさんはどっち」などで指差しが出来る場合などは、絵の大きさと距離によって、認識が可能な距離で大まかな視力の測定が成立します。
視力検査で使う上下左右の一か所だけ切れている輪の模様。これを見せて、手元に見本をおき、指で同様の輪をさせるなら、発語がなくても正確な視力検査ができます。
問題はほとんど反応がない人です。
それでも、何らかのちょっとした反応はあるはず。その人の状態を見極め、手を変え、品を変えて検査を行います。
DVDなどで音を交えて見ることの反応を探る、クッキーなど実際の好きな食べものを見せるなど、方法はいろいろあり得ます。
実力のある眼科医は「今目が動いたから見えている」など、横にいる素人には解らない解析が出来る人がいます。
もしある病院の検査で、障がいのある子供が、ほとんど見えていない、と診断されても、日常生活で見えている気がするなら、別の病院で検査を受ける価値はあります。
さて、見えていることがわかっても、反応出来ない重い障がいのある人の場合、遠視、近視、乱視などの状況は、検査では正確には解りません。
人間は生まれたときから見えてはいるが、だんだんと目を使っているうちに正しくピントがあってくる、という説があります。
生まれつきの障がいのために目を意識的に使う機会が少なく、結果的に目のピント機能が発達しない遠視の人も多いようです。
この場合は、なるべく早期から遠視用のメガネで矯正することが望まれます。
また早産で未熟児出生し、保育器での酸素治療を受けた子の場合、極度の近視になる可能性があります。
検査結果だけではなく、その人のリスクの可能性を分析して、総合的な視力の判断と必要な治療の実施が必要です。
重い障がいがある子供は、力のある小児眼科専門医にかかり、継続的な検査を行うことが重要です。
(本稿は2019年11月に執筆しました)