歩行困難者の家屋内移動を支える福祉器具 天井走行リフト

歩行困難者の家屋内移動を支える福祉器具 天井走行リフト

天井走行リフトは、重度障がいがある家族の介護のために、自宅を改修して装備します。同じ目的のための様々なタイプのリフトがありますが、イメージをシンプルにするために、本稿では天井走行リフトを中心に紹介します。

装置としては、天井にレールを埋め込み、電動モーターでレールを走行する「電車」をセット、その「電車」から利用者へのアタッチメントをぶら下げる装置です。この装置で、どのようなソリューションを狙うかで、設置場所、アタッチメントが変わります。

福祉器具 天井走行リフト

例えば、ベッドからトイレへの移動を楽にしたい、という目的の場合。利用者のイメージは、自立歩行は困難な障がいがあるが、トイレ内では独力で排泄が出来る人、とします。

この場合は、ベッドの上からトイレの中まで天井にレールを敷きます。2点間据え置き設置型、と呼ばれます。アタッチメントは、自分で乗降が出来る方式のブランコタイプシートなどになります。

ベッド上でブランコシートに体を乗せてスイッチをオンにして、「電車」につるされてトイレまで移動し、トイレでシートを外して用を足し、またシートを装着してベッドに戻る、こういう利用イメージになります。

家屋内移動を支える福祉器具 天井走行リフト

例えば、少しの介助があれば歩行が出来る人が、訓練も兼ねて自宅内を歩きたい、という目的の場合。家庭内の主な動線に沿って、天井にレールを敷きます。

そこから利用者が足を使って歩くのにちょうどよい高さになる、体をつるアタッチメントをつけ、半分吊り下げられながら歩いて自宅内を移動します。「電車」は低速で移動でき、利用者の真上にいつもあることが出来るタイプになります。

家屋内移動を支える福祉器具 天井走行リフト

その他にも、両足を事故で切断したがそれ以外の部位は健常な人が移動のために使う場合、重度身体障がいの人のベッド上での体位変換のために使う場合など、ソリューションによって様々なレールと「電車」、アタッチメントがあります。

天井の改修が出来ない住居でも使用できる、天井走行リフト以外のタイプでは、天井にレールを敷かずにレール付きのバーにモーターが設置されているもの、お風呂浴槽内に設置する床設置型防水タイプのもの、などがあります。

福祉器具 天井走行リフト

ソリューションに応じた装置になるので、価格は様々です。ケースバイケースですが、公的助成の対象になります。助成のレベルも様々です。お住まいの行政担当部署に相談してください。

家屋内移動を支える福祉器具 天井走行リフト

この装置は、利用者本人の利便性よりは、家族の介護の負担を減らすために使われることが多いようです。大勢の人が疲れ果てながら体を使った介護をしています。障がいの状況によっては、天井走行リフトは有効な福祉機器になります。

(本稿は2019年12月に執筆しました)

別稿で「脳性麻痺の人の体を支える座位保持のための装置」を掲載しています。ご参照ください。