保存活用される昭和2年の名建築 九段ハウス リノベーションの状況

靖国神社に近い東京都千代田区九段北にある九段ハウスは、約290坪の敷地に1927年に竣工した実業家山口萬吉氏の私邸で、3階建地下1階スパニッシュ様式鉄筋コンクリート造りの洋館です。大戦の空襲や戦後の混乱を乗り越え、2018年にリノベーションされ、国の登録文化財になりました。昭和初期の建築の姿を残したリノベーションなので、九段ハウスはバリアフリーではありません。

現在では「会員制ビジネスイノベーション拠点」として、イベント会場などに保存活用されています。今回はAugust Vilella氏の個展「Memories」を観覧しました。会期は2022年7月2日から7月18日で、観覧料は無料ですが事前予約が必要です。

九段ハウス

来館者用の駐車場はありません。九段下駅から徒歩5分の案内です。周辺は傾斜地なので、九段下方面からは上り坂を通行します。

門には「山口一男」の表札があります。九段ハウスの所有者は現在も個人で、東急電鉄、竹中工務店、東邦レオの3社が共同で建物を賃借してリノベーションを行い、九段ハウス事業で生み出した収益から建物の維持費用を捻出しています。

九段ハウス

門から玄関口まではフラットな舗装路です。アプローチ右側の小さな建物は車庫です。

九段ハウス

車庫はリノベーションで、前面ガラス張の茶席の「待合」に見立てたギャラリー空間に変身しました。

九段ハウス

玄関は3段の階段があります。ドアは重厚な木製の開閉ドアです。館内は土足禁止。玄関でスリッパに履き替えます。

九段ハウス

「Memories」展では3Fは使用されません。以下は地階から2Fまでの館内の状況です。1Fのクラシカルルームはゲストのためのお部屋です。

九段ハウス

1F屋内テラス空間からお庭を眺めることができます。

九段ハウス

お庭もリノベーションされました。和洋折衷の素敵なお庭です。

九段ハウス

昭和初期のハイセンスな調度品で飾られたお部屋がつながります。

九段ハウス

山口邸は仕切りの多い構造です。関東大震災の後の耐震構造を重視した設計で、厚さ24㎝の壁が建物を支えます。リノベーションの際に耐震工事は不要であったそうです。設計は東京タワーを手掛けた内藤多仲氏。日本の耐震構造の父と称される建築家です。

九段ハウス

床にアンティークな調度品が埋められています。

九段ハウス

ナショナルマークの配電盤がそのまま使用されていました。

九段ハウス

階段を下りて半地下のフロアに移動します。地階は比較的仕切りの少ないフロアです。

九段ハウス

スペースを活用した様々な利用方法がイメージされるフロアです。

九段ハウス

半地下なので壁の上部に採光の窓があります。

九段ハウス

金庫室は畳敷きの茶室にリノベーションされました。作品が展示されています。

九段ハウス

同じフロアに外光を活かした作品の展示があります。同じ空間内で面白い展示手法の組み合わせが楽しめます。

九段ハウス

1F から2Fへは大理石で飾られた華やかな階段があります。

九段ハウス

水は出ていませんでしたが、階段の下にはヨーロッパ調の噴水があります。

九段ハウス

2Fへ上がります。2Fは和洋折衷のフロアです。

九段ハウス

まずはリノベーションされたトイレから。バスルームと一体になったトイレは女性用です。

九段ハウス

男性用トイレは狭い空間に設けられています。

九段ハウス

重厚な雰囲気のソファーが置かれたラウンジ3。アンティーク家具も置かれています。

九段ハウス

ラウンジ1はまた違う雰囲気のテーブル席が配置されています。

九段ハウス

そして二間続きの和室があります。スリッパを脱いで上がります。

九段ハウス

床の間に作品が飾られています。窓からはお庭を見下ろします。

九段ハウス

次に建物の外観とお庭の様子を紹介します。門の近くから見ると一部が3F構造になっていることが分かります。

九段ハウス

敷地内から門を見学します。瓦と木材による純和風の門です。

九段ハウス

玄関前からお庭へのアプローチを進みます。凝ったお庭であることがすぐに感じられます。

九段ハウス

お庭から建物を見ると1Fと2Fの素敵な外観デザインが楽しめます。よく見ると半地下フロアの採光窓が分かります。

九段ハウス

歴史と伝統、その中に新しさがある格式高いお庭です。

九段ハウス

お庭には純和風の要素も取り入れられています。

九段ハウス

そしてスペイン調の景観を楽しむお庭でもあります。

九段ハウス

裏側は竹の小径です。お庭も独特な和洋折衷様式です。

九段ハウス

九段ハウスはバリアフリーではありません。車椅子での見学および利用は困難な施設です。障がいの状況に応じて利用してください。

(本稿は2022年7月に執筆しました)

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道 車椅子散策ガイド バリアフリー情報

東京都千代田区、皇居内堀の千鳥ヶ淵は桜の名所。開花シーズンには多くの花見客で賑わいますが、その時期を外せば、混雑することなく、車椅子で散策を楽しめる散歩道が整備されています。九段下から九段坂公園、そして千鳥ヶ淵緑道を車椅子で散策するルートで、現地のバリアフリー状況を紹介します。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

〇昭和館から田安門までの状況

九段下交差点から靖国通りの坂道を上がります。交差点近くにある窓のない大きな建物は「昭和館」です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

平成11年に開館した戦争の労苦を後世に伝えるための施設。一部の展示は有料ですが、障がい者減免制度があり、本人と介助者1名は無料に減免されます。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

昭和館は7フロア構造の施設です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

坂道の途中から2Fに進める段差回避バリアフリールートがあります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

昭和館を過ぎて坂道を進むと、北の丸公園への入口があります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

車止めがありますが、幅の広い箇所もあるので車椅子で通行できます。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

北の丸公園の入口に建つのは、1620年築の国指定重要文化財「田安門」。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

現地に解説版があります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

〇九段坂公園のバリアフリー状況

田安門の横を通過すると、坂道の途中に九段坂公園が現れます。東京2020にあわせて、2020年に整備されました。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

公園の傾斜路面には、階段とスロープが併設されています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

手前が常燈明台、奥が品川弥二郎像です。傾斜路面ですが、段差を回避して車椅子で散策できます。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

品川弥二郎像の先に、トイレ棟がありバリアフリートイレが用意されています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

スペースに余裕がある個室で、ウォシュレット付き便器、オストメイトが備えられています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

トイレ棟から坂道を上がると、大山巌像があります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

まだ坂道が続きますが、すべて段差回避ルートが整備されています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

公園上部から、九段下交差点方面を振り返った風景です。長い坂道ですが、少し頑張れば車椅子で上がることができる傾斜角度です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

九段坂公園の最高地点から観た千鳥ヶ淵です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

〇千鳥ヶ淵緑道のバリアフリー状況

皇居内堀沿いに左折して、桜の名所、千鳥ヶ淵緑道に入ります。入口の車止めは、車椅子が通過できる幅があります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道は、平成19年から20年にかけての整備で舗装されました。九段坂公園に比べると舗装路面に傷みがありますが、車椅子での通行に大きな問題はありません。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

現地の案内板です。ここの桜の多くは、昭和30年代に植栽されました。現在では老木となり弱っています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

現在千代田区では「さくら再生計画」を推進しています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

桜の開花時期、千鳥ヶ淵緑道の通路は、立ち止まり禁止、飲食禁止、通路が左右に分けられて一方通行になります。内堀沿いのルートを通行できるので、本稿で紹介しているルート順である、九段坂公園側から千鳥ヶ淵緑道に入る観桜客が多いそうです。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

緑道沿いのアート作品。背景に写るのは建て直されたインド大使館です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

緑道上に、車椅子対応型の水飲み施設があります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

巨木の下に、巨石を利用したベンチ。アート作品のようです。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道の大部分は、中央に桜が植栽されて左右に分かれています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

所どころ中央分離がないスポットがあり、左右の通路間を移動できます。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道の全長は約700ⅿ。下の写真の案内板は、緑道のほぼ中央部にあります。田安門前からここまで、約400ⅿの距離です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道は、明治40年から昭和43年まで運行していた市電の軌道の跡地を活用して、昭和54年に整備されました。当初は土路面でデコボコや段差があり、車椅子での通行は困難な散歩道でした。平成20年の改修でバリアフリーになった散歩道です。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

千鳥ヶ淵緑道の終点は、千鳥ヶ淵ボート乗り場です。公衆トイレにはバリアフリートイレがあります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

ボート乗り場の近くになると、緑道中央部が桜並木ではなくなり、緑道の雰囲気が多少変わります。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

ボート乗り場へは階段で下ります。バリアフリー仕様ではありませんが、ここは仕方がありません。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

ボート乗り場の上部が、スロープで上がることができる展望バルコニーになっています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

バルコニーからは、このような眺望が楽しめます。車椅子目線では、ギリギリで眺望が楽しめる壁の高さです。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

ボート乗り場にある千鳥ヶ淵の解説版です。千鳥ヶ淵ボート乗り場の開業は、昭和25年。年間利用者は約3万人で、その8割が桜の開花時の利用者であると公表されています。つまり開花時以外は、ボートは空いています。

九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道

九段坂公園から千鳥ヶ淵緑道にかけての約1㎞の区間は、坂道はありますが、車椅子で散策ができる散歩道です。

(本稿は2021年11月に執筆しました)

九段の博物館 千秋文庫 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

東京都千代田区九段南にある、旧秋田藩主佐竹家に伝わる文化資料を集めたミニ博物館です。設立は昭和56年。約2,300点の資料が企画展のスタイルで順次公開されています。

今回取材時は、「佐竹氏の秋田開発」展が開催中。秋田領内の地図、参勤交代の行列を描いた絵画、秋田城の絵図など18点が展示されています。

アクセスは九段下駅から徒歩10分の案内。靖国通りの坂を上がり、九段坂上交差点を左に進みます。来館者用の駐車場はありません。見どころが多いこの間のルートの状況は別稿「九段坂公園・千鳥ヶ淵緑道 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」で詳しく紹介しています。ご参照ください。

千秋文庫のエントランスは2段の段差があります。スロープはありません。前輪を持ち上げると、車椅子で乗り越えることが出来ないことはない段差です。

千秋文庫

館内に入るとすぐに受付があります。千秋文庫は有料の施設。障がい者減免制度があり観覧料が100円割引されます。受付で障害者手帳等を提示して割引を受けてください。

千秋文庫

展示室は2Fです。1F奥のエレベーターを利用して2Fへ上がります。

千秋文庫

バリアフリートイレはありませんが、2Fのトイレはスペースに余裕がある洋式トイレです。つかまり立ちができる人なら、利用できないことはないかもしれません。

千秋文庫

大きな展示室ではありませんが、フロア内に段差は無く、通路は車椅子で移動できる幅があります。

佐竹氏は平安時代の末期に現在の茨城県に土着しました。その後、現在の群馬県太田市に移り、太田城で地域経営を始め、以来約400年間太田城を本拠とし、現在の茨城県水戸方面まで支配を伸ばしています。

関ヶ原の戦いの際に、日和見的な態度が家康の心証を悪くし、1602年に現在の秋田県に国替えとなりました。以来明治維新までの約260年間、秋田の大名として統治を続けた家系です。

明治以後は華族として家系が続き、第34代当主佐竹義春侯爵が、昭和17年に佐竹家に伝わる資料を家令職の小林昌治氏に譲渡し、後世に伝える文化財として永久保存するように懇請。その意をうけた小林氏が創立者となり、千秋文庫が設立されました。

「千秋文庫」の館名は、佐竹氏に縁の深い、秋田県秋田市にある「千秋公園」に由来します。

千秋文庫の主な収蔵品は、古文書・古記録、模写絵画、古地図、古戦場図に分類されています。他に歴代藩主所用の花押・印章があり、合計で約2,300点を収蔵。戦中戦後の混乱期を乗り越えて守られた、貴重な文化資料です。

千秋文庫はバリアフリーではありませんが、エントランスの段差を乗り越えることができれば、車椅子で観覧できないことはありません。

(本稿は2021年11月に執筆しました)