発育に問題のある赤ちゃんが、脳性麻痺を診る病院で初診を受けるまで

ご家族、特にお子様になんらかの障がいの疑いがある場合、専門の病院と関わることになります。

本稿では発育に遅れがあり、生後1年検診で脳性麻痺障がいの可能性を指摘されたケースを想定して、専門病院へのコンタクトの実際と注意点をご紹介します。

1歳になると、一般的には様々な運動が出来るようになります。その一般水準に比して、運動的な反応の発達が遅い場合に脳性麻痺(以下「CP」と記します)が疑われます。

1歳になる前の検診でも、首のすわりが遅い、手足に緊張があり突っ張っている、な どの状態があると、CPの可能性が疑われます。

現在の日本では、積極的に障がいの可能性を検知し、早期の専門医療受診を促す医療方針です。したがって一般検診では、疑いがあれば早めに専門医への受診を薦めることになっています。

わが子の症状を想像していなかった場合、親はショックですが、一般論としては早期の受診をお薦めします。

脳性麻痺など身体障がいがある子供と整形外科との深い付き合い

一般検診を担当した医師が、専門病院に紹介状を書きます。

お住まいのエリアによって状況は変わりますが、「この3つの病院をご紹介できますがどこがいいですか」という医者からの話がある場合、すなわち複数の病院を選択できる場合は、ぜひ一度現地を見学されてから決めることをお薦めします。

その病院を以前からよく知っている場合は別ですが、近くを通ることはあっても中は全く知らないことが多いと思います。

といっても、病院の医療自体の評判を正確に把握するのは困難です。あの病院は・・・、という噂があっても、簡単にそれを信じてはいけません。

短期間でできることは、病院のハード施設の確認です。

車で通院したい場合なら、利用しやすい駐車場があるかを確認します。

電車やバスでの通院なら、実際にかかる時間や、雨の日に行けるかどうか、などを確認します。

それから重要なのは、施設の綺麗さや、雰囲気です。

これらの見た目で解る状況だけでも確認して、病院を選びます。

紹介状をいただけたら、専門病院に初診の申し込み連絡を入れます。

大概の病院は、初診を担当する医師が決まっていて、初診受付の予約は相当先まで埋まっています。

そんなに先なの、という初診日の候補が伝えられると思いますが、めげないで下さい。むしろその期間、疑われる病気について、勉強ができます。

初診を受けると、療育が必要であるか、つまり病院として受け入れるか否かが判断されます。

限られた受診時間の中で、なるべく正確な状況を医師に理解してもらう必要があります。日頃の様子のポイントなどを説明できるように、家族も頭をよく整理しておきます。日常の生活の様子を、写真や動画にとっておくことも有効な手段です。

気になることを中心に、正確に状況が伝わるように工夫をします。

診察の最後には、診療、療育の必要性の有無について、医師が判断をします。

気を付けたいのは、この有無の判断が、そのまま障がいの有無であり将来の状況を判断しているということではない、ということです。

あくまで、1歳の現時点において、専門的な診療や療育を受けることが、将来にわたる予防的な医療という点でも価値があるという判断をされたと考えてください。したがって家族は、安心も絶望もするべきではありません。

赤ちゃんが、脳性麻痺を診る病院で初診を受ける

療育の必要性を認められた場合です。

CPは、病気としては脳の障がいによる身体障がいの病気です。ただし一般に、内臓疾患などの別の身体的な病気や、知的障がいやコミュニケーション障がいを併発する可能性が高い病気です。

専門病院では、総合的な見地から、今後のあらゆる可能性を考慮した医療行為が行われます。そのための受け入れ態勢、担当医師団の編成準備が始まります。

標準的な医師団の体制は、主治医としての内科医、身体障がい面を主に診る整形医、そして日常的なリハビリテーションを担当するPT、OT、STの技師により構成されます。

PTは理学療法士で、主に体の動きの発達を支援します。

OTは作業療法士で、主に手を使った作業力の向上を中心に発達を支援します。

STは言語の発達の他に摂食指導も担当します。

1歳児の場合は、まだOT、STには早いと判断されることが多いはずで、PTからのリハビリテーションから始まるのが一般的です。

ただし、この医師団の予定も、相当先まで埋まっている可能性が高いです。月単位で待ち、医療が始まることが多いでしょう。

赤ちゃんが、脳性麻痺を診る病院で初診を受ける

検査としては、血液検査、脳波検査、そしてCT検査またはMRI検査が行われます。

1歳ですから、血液検査は無理やりの採血です。健康状態の様々なデータが取れるので、かわいそうですが注射針を刺します。

脳波は主にてんかんを検査します。ほとんどのてんかんは薬で制御できるので、早期発見が望ましい病気です。

CTやMRIは脳の障がい状況の検査です。明らかな傷が見える場合もあります。ただし、脳の傷につける薬は残念ながらありません。

脳波検査やCT・MRI検査は、一定の時間じっとしてもらう必要があります。そのため睡眠薬を飲ませて眠らせます。1歳くらいなら、ミルクに混ぜて飲ませる方法が一般的です。

以上、CP疑いの1歳児が、専門病院に関わり始めるケースのあらましです。

何らかの障がいと向き合うことになった場合、病院とは長い付き合いになります。

日常的な通院が楽に出来る立地に、良い病院があればいいのですが、なかなかそうはいきません。病院の近くに引っ越すご家族もいます。

この先、障がいと共に生きる家族と病院は、深くつながることになります。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「脳性麻痺など身体障がいがある子供と整形外科との深い付き合い」を掲載しています。ご参照ください。

脳性麻痺など身体障がいがある子供と整形外科との深い付き合い

脳性麻痺など身体障がいのある子どもは、必ず整形外科と関わります。

特別支援学校には、学校医として整形の先生がいて、定期的に「整形診」と呼ばれるメディカルチェックが行われます。

整形外科の領域ですので、外科的な医療についての診断が行われます。

身体障がいのある子どもの家族にとって、外科的な医療の是非はとても悩ましい問題です。

身体障がいのある子といっても様々ですが、本稿では主に脳性麻痺の子どもによくある悩みをご紹介します。

脳性麻痺は残酷な病気で、年齢とともに骨格の奇形が進みます。進行性の骨格異常の病気という側面があると思ってください。

一般的に、年少の頃からよく奇形が発生するのが足です。足首、ひざ、股関節の異常が出現し、ほっておくと奇形が定着してしまいます。

骨の成長が止まる前、つまり10歳くらいまでに、手術をするべきかの判断を迫られます。

身体障がいがある子供と整形外科

手術についての専門的な詳述は避けますが、奇形する箇所を手術で切って正し、ギブスなどで固定して定着させ、リハビリで運動機能を回復させる、そういうイメージです。

大手術で、長期の入院が必要で、正しいリハビリが重要です。

子どもにとっては、傷は痛み、ギブス固定での寝たきりを強いられ、その後に痛みをともなうリハビリを強要されることになります。

ただし、手術をするなら、一般的には10歳くらいまでです。「このまま足が曲がったままでいいのですか」と整形外科医から言われて、家族は悩むことになります。

手術の他に、薬による治療が行われます。

奇形の進行をとめるために、短期入院して点滴で薬剤を投与し、その後のリハビリにつなげる治療もあります。

体の緊張を緩める薬剤を注射によって投与する方法もあります。これは大人になってもある種の緊張性障がいのある方には、施される治療です。

手術、薬剤、リハビリが組み合わされて、整形外科の医療が行われます。

身体障がいがある子供と整形外科

補装具に公的な助成を受ける場合も、整形外科医の診断が必要です。

運動機能を発達させる、あるいは機能低下を抑える、運動を補佐する、などの目的で、足首をサポートするための装具や、その子の足の形に合った装具靴など、各種の装具が開発されています。

これら各種装具の必要性判断は整形外科の領域です。

車椅子も含めて、福祉医療器具に公的な助成を得るためには、資格を有した整形外科医の「治療のために必要です」という一筆が必要になります。

身体障がいのある子供と整形外科は、深い付き合いがあります。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「重度の知的障がいがある子の入院に付き添う親の苦労」を掲載しています。ご参照ください。

重度重複障がいがある人と家族の「かかりつけ医」探し

医療行政の大方針の一つに「かかりつけ医」があります。「かかりつけ医」からの紹介状を持たずに大病院に行くと、料金が加算されたり、そもそも診療を拒否されたりします。

重い障がいがある人でも、行政上は全く同じ扱いです。お住まいのエリアに「かかりつけ医」を見つけておくことが必要です。

重度障がい者の診療を拒否するお医者さんもいます。

重度の身体障がいがある人で、薬を処方するとどうにかなってしまうかもしれない人、知的障がいがあり、静かに受診が出来ない人などは、近所に診てもらえる医院が見つからないことがあります。

一般に医師会はエリア制で、ほとんどの場合は市区町村レベルで一つの会になっています。

そのエリアの「かかりつけ医」が、そのエリア管轄の大病院に紹介状を書くのが通常ルートで、エリア外からの受け入れは一般的ではありません。

ただ、難病治療などの場合は、その医師の出身大学の病院などへの紹介があります。

先天性の障がいがある人の場合、幼児の頃から医療機関との関わりがあります。

障がいのある小児専門の病院に子どものころからかかっていた人の場合、18歳を超えると小児病院の診療対象から外れてしまします。

この場合、いったん地域の「かかりつけ医」に診てもらい、成人の障がい者を診る大病院を紹介してもらう、という手続きが原則として必要になってきます。

専門病院への転院などの事情が無くても、住まいの近くに障がいのある人を診てくれる医者がいることは、家族にとっても心強いことです。

近年、歯科は障がい者の受け入れを表明している地域の医院が増えてきました。

内科など他の診療科目の医院で、障がい者の受け入れを明らかにしている地域の医院は、まだ数は少ない状況です。

重度重複障がいがある人と家族の「かかりつけ医」

「かかりつけ医」の探し方の例です。エリアの特別支援学校の校医や、障がい者通所施設の担当医を引き受けている医者は、一般に障がいのある人への医療に理解のある人です。ただし稀に評判が悪いこともあるので、情報を集めましょう。

公的機関に相談するなら、障害福祉相談課などエリアの行政担当部署です。通常、実績のある医者を紹介してくれます。

医者も人間なので、リスクを気にするタイプの人、逆にどんな障がいのある患者も診る人など、様々なタイプの人がいます。

障がいのある本人と家族からみて良い医者と思える「かかりつけ医」と、なかなか出会えないこともあります。

候補の医院が見つかったら、先ずはインフルエンザの予防接種あたりから、受診するのも作戦です。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「重い知的障がいのある人の口腔ケアと歯科医のかかり方」を掲載しています。ご参照ください。