じっとしていられない障がいがある人の脳の検査

じっとしていられない障がいがある人の脳の検査

障がいのある人にとって病院は切っても切れない縁。病気になると検査はつきもの。障がいによって、じっと静かに検査を受けることができない人の場合、大変なのが脳の検査です。CT/MRIによる撮影と、脳波の検査が主になります。

その人の騒ぎ方のレベルやタイプにもよりますが、脳の検査の一般的な難易度順でいえば、比較的簡単なのはCT、次に脳波、最難関はMRIになります。

CTの場合、撮影時間が短く、且つ介助者が付くことできます。当事者には寝台に寝てもらい、介助者が防護服を着て横につきます。女性よりも男性が被ばくリスクは少ないので、男性家族が介助者に指名されるケースが多いようです。

防護服といっても、通常はエプロン状の簡単なものが用意されます。これを着用して、撮影時に頭が動かないように、手で頭を押さえます。ちょっとでも頭が動くとCTの写真がブレます。多少のブレなら、診断上の大きな問題は解りますが、やはり詳細な状況は見難くなります。介助者が力を入れて頭を押さえても、当事者の動きに負けます。激しい動きが出る場合は、睡眠薬を使う必要があります。

脳波検査の場合、頭に電極を付けた状態で、最低でも30分、通常なら1時間以上安静にする必要があります。電極を付けた段階ですぐに外してしまうタイプの人は、睡眠薬で眠らせるしかありません。CTとは違い多少の動きは大丈夫なので、介助者がそばにいて1時間おとなしくしていられる人なら検査を受けられます。体はじっとしていられても、精神的に強く興奮してしまう人は、睡眠薬を利用したほうが適正な検査になります。

MRIは、検査時の音が大きく、且つ介助者が押さえることが出来ません。時間的には数分程度ですが、それに耐えられるかどうかです。時々ちょっと首が動いた、程度なら何とかなりますが、激しく動くと検査になりません。動いてしまう障がいのある人には、難しい検査です。

難しいなら睡眠薬で、と紹介していますが、障がいのある人に睡眠薬を上手に使うのは、とても難しいことです。検査に睡眠薬が必要なタイプの人は点滴が難しい場合が多く、また服用は検査をさせたい側が思うようには飲んでくれません。経口のタイミングが早くても遅くても、うまくいきません。薬の量の調整も難しい課題です。検査が始まるのになかなか寝ない、寝ていたのに起きた、検査が終わっても起きなくて帰れない、などのトラブルが起こります。検査の間2時間だけぐっすり寝てもらう、というのは至難の業です。

てんかんも含めて、脳に関わる障がいのある人は、医師の指示にしたがって検査を受ける必要があります。とても大変ですが、障がいのある人と家族は努力をして、脳の検査を受診しています。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「重度の知的障がいがある子の入院に付き添う親の苦労」を掲載しています。ご参照ください。