重度重複障がいがある高校生の卒後の進路 通所施設の見学と体験

重度重複障がいがある高校生の卒後の進路 通所施設の見学と体験

重度の障がいがある人の一般的なキャリアパスは、特別支援学校小学部、中学部、高等部、そして卒後は「通所施設」になります。

現在では福祉行政が進み、ほとんどのエリアでは、複数の通所施設から進路を選ぶことが出来ます。

特別支援学校の高等部では、1年生から卒業後の進路についての勉強が始まり、2年生では見学、3年生では体験をして、卒業後の進路を決めていきます。特別支援学校での進路指導プログラムの実例を紹介します。

多くの特別支援学校高等部には、進路担当専任の先生が配置されます。重要な役回りなので、優秀な先生が配置されることが多いようです。

重度障がいのある生徒の進路指導の場合、勉強する必要があるのは保護者です。保護者によっては、基本的な障害者福祉制度の枠組みの理解が不足している人もいます。

進路担当の先生は、学校管轄エリア内の通所施設の状況、今後の新設施設の計画などを調査して、適宜保護者に情報を提供します。

高校生の卒後の進路 通所施設の見学と体験

高校1年生の保護者には、保護者会などでの説明や「進路通信」などの文書を作成して、制度の基本、現状の通所施設の実態などを紹介します。

夏休み期間などを利用して、施設の見学会を企画します。高校1年生の時点では、保護者に正しい知識と現状認識を持ってもらうことが重要です。

高校2年生になると、学校活動として生徒の施設見学会が企画されます。保護者の希望と意思に基づいた見学会です。

学校活動なので、学校の先生も同行しますが、ほとんどの場合学校のバスはでません。保護者と生徒が自力で自分のエリアの施設に行き、施設のスタッフの説明を聞きます。

通常平日に企画されるので、時間がとれない保護者はスケジュール調整に苦労します。幾つの施設に行くか、何日間いくか、などは保護者の意思が尊重されます。1か所だけ、1日だけ、という判断をする保護者もいます。

高校3年生になると進路指導は本番です。遅くとも11月には進路希望先を決めて最終調整に入りますので、10月までには希望する施設を決めます。したがって9月ごろまでに、学校の活動として、保護者の希望する施設への体験入所を行います。体験入所は、2か所以上、3日間以上程度が基準です。

施設に生徒を連れて行くのは保護者の責任、施設での活動時間は学校の責任になります。したがって、先生も施設体験にフルに参加する場合が多く、学校は手薄になります。あまり同じ日程に集中して学校に先生がいなくならないように、日程が調整されます。

高校生の卒後の進路 通所施設の見学と体験

希望の進路先の施設を決めて、学校に提出します。希望者が多くて入所者の調整が必要な施設が出た場合、行政、施設、学校、保護者での調整が始まります。

円満に解決できるといいのですが、なぜうちの子はダメなのか、と揉める事例が多々あります。

それでも近年は、どこにも行き場がないという話はあまり聞かなくなりました。全体の受け入れ枠は拡充されています。

重度障がいのある生徒の進路について、特別支援学校ではこのようなことが行われています。生徒は永遠の18歳ではなく、加齢とともに障がいの状況は変化していきます。長期的な視点で卒後の進路を考えることは、とても難しいことです。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「障がい者通所施設で重度重複障がいがある人は何をしているか」を掲載しています。ご参照ください。