琵琶湖に行ったら車椅子で立ち寄りたい、バリアフリーな観光施設を紹介します。
○琵琶湖博物館
草津市にある琵琶湖を学ぶ施設です。2016年7月にリニューアルオープン。車椅子で展示を見学しやすい、バリアフリーな博物館です。
身障者用駐車区画は、エントランス前に屋根付で6台分、少し離れた場所に屋根無しで6台分あります。館内の段差はスロープ及びエレベーターでバリアフリー対応。バリアフリートイレは6箇所。入館料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。
「淡水魚の水中トンネル」は特殊な音響装置を用いて琵琶湖の水中の音も楽しむことが出来る展示で、車椅子で利用できます。建物中央部には1F・2F吹き抜けの琵琶湖ビューの大きな窓があり、車椅子でインドアから琵琶湖の雄大な景観が楽しめます。
○佐川美術館
守山市のバリアフリー美術館です。立地は琵琶湖畔、遠くに比叡山を仰ぎます。水庭に浮かぶ建物はそれ自体がアートで、各種の建築賞を受賞しています。
駐車場は十分なスペースが用意されていますが、身障者用駐車区画も含めてフラットな舗装面ではなく、駐車区画の後ろ側が側溝のような構造でややデコボコがあるので注意してください。美術館正面で乗降することも出来ます。
入館料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。すべての通路は広くフラット、すべての展示物が車椅子から見やすい美術館です。バリアフリートイレは2か所あります。
常設展示は絵、彫刻、陶器の「日本三大高峰の発信地」がコンセプト。絵画は「平山郁夫氏」、彫刻は「佐藤忠良氏」、陶器は「樂吉左衛門氏」の個人展示です。
「平山郁夫館」と「佐藤忠良館」は1998年に佐川急便40周年事業として開館しました。水庭に浮か切妻造の2棟の平屋建ては連結しています。その連結部には、車椅子でも利用できる素敵なカフェがあります。
「樂吉左衛門館」は2007年に開館した50周年事業。水庭の底に広がる展示館で、天井の一部に明かり窓があり、幻想的に水越しの光が降り注ぐ素敵な地下空間です。車椅子での地下への移動はエレベーターを利用します。
敷地面積28,871㎡、建築面積8,280㎡で、建物の外にも「佐藤忠良」作の彫像が複数展されています。
○道の駅アグリの郷栗東
琵琶湖周辺には数多くの道の駅があります。その中から栗東市にある個性的な施設「道の駅アグリの郷栗東」を紹介します。
2003年の開業。古い施設ですが道の駅なので、バリアフリートイレ、身障者用駐車区画など、必要なバリアフリー要件は満たしています。
新幹線の線路のすぐ近くにある道の駅で、そのことをセールスポイントにしています。「ドクターイエローをみて幸せになろう」は、架線や線路の点検をするドクターイエローを道の駅から見よう、という企画です。そして新幹線の轟音に負けないように、BGMとして昭和の歌謡曲が大音量で流れます。
○ラコリーナ近江八幡
近江八幡市にある、お菓子と自然がテーマの「たねやグループ」の施設です。2015年1月にメインショップがオープン。広大なスペースと広い店舗群ですが、大変な人気で大混雑します。
敷地内へ正面入口から車で入ると、一般駐車場は左手へ、二輪車、大型バス、身障者用駐車場は右手へと、駐車場の場所が完全に区分けされています。身障者用駐車区画は10台分以上を確保。身障者用駐車場からの歩道はほぼ溝無しの構造で、車椅子で問題なく移動できます。
メイン棟は2階建てで、1Fがお菓子のショップ、2Fはカフェ。エレベーターがあるので、車椅子での上下移動に問題はありません。1Fにバリアフリートイレがあります。
メイン棟から手動ドアがある裏口へ抜けると、田園風景を再現した中央サークルに出ます。
「フードコート」は一段高い段差の上ですが、スロープがあるので車椅子で利用できます。ただし店舗の出入り口は、やや狭い手動ドアに小さな段差があるショップがあります。注意して車椅子でご利用ください。
○醒井宿
大人の観光地として人気の米原市の醒井(さめがい)。日本遺産認定の街で、静かな宿場町に清流「地蔵川」が流れ、水中藻「梅花藻(ばいかも)」が咲き、淡水魚「ハリヨ」が泳ぎます。
特別なバリアフリー対策があるわけではありませんが、駅からは近く、駐車場があり、バリアフリートイレもあり、そして「地蔵川」沿いの道はフラットで車椅子での通行が可能です。
駅に隣接して「醒井水の宿駅」という2階建て構造の商業施設があります。1Fは段差の上で、車椅子では急なスロープを上ります。駐車場は施設正面に3台分、施設裏側の狭い通路を抜けた先に20台分ほどありますが、身障者用駐車区画はなく、狭くて傾斜があるので、車椅子で利用しやすい駐車場とはいえません。梅花藻の花盛りの夏休みシーズンは、駅改札を挟んだ反対側の駐車場が有料開放されます。
「地蔵川」沿いにある観光施設は「木彫美術館」。彫刻家森大造の個人美術館で、4月から11月の土日祝のみの開館。「木彫美術館」が閉館している日は、「地蔵川」沿いにある美術館の駐車場が無料開放されています。「地蔵川」の「梅花藻」や「ハリヨ」を楽しむなら、この駐車場利用が便利です。
「旧醒井郵便局」は大正4年築の「ヴォーリズ建築」です。昭和48年まで、郵便局として使用されていたということ。現在は1Fが観光案内所兼歴史資料館として無料公開されています。車椅子で入館可能です。
「加茂神社」はヤマトタケルが飲んだという「居醒(いざめ)の清水」がある、ヤマトタケル立像がある神社です。神社崖下の「地蔵川」沿いの風景は、見る価値のある清流と緑の風景です。ただし「地蔵川」からだと、「加茂神社」の本殿は階段の上なので、車椅子での参拝は出来ません。
○マキノピックランド
琵琶湖の北岸、高島市にある、全長2.4kmのメタセコイア並木が有名な、50年以上の歴史がある大規模農業公園です。
果樹園、産直ショップ、お土産&レストラン、グランドゴルフ場、野球やサッカーができる多目的グランドなどがあります。
現在の主要な施設は1999年に完成しているで、今どきのバリアフリー施設ではありませんが、車椅子での利用に大きな問題はありません。駐車場は広く、身障者用駐車区画が設定されています。
駐車場から「センターハウス」方面に向かうルートは段差構造で、迂回スロープが設置されています。他に「野菜直売所」「レストラン」があります。
「野菜直売所」は30坪ほどの小型の店舗です。「レストラン」はホール60席、テラス60席の規模。段差解消スロープがあり、可動式のテーブルと椅子席なので車椅子での利用は可能です。
「センターハウス」には、お土産ショップ、ソフトクリーム、自由に使える休憩コーナー、授乳室などがあります。この建物は広く、内部の通路幅も余裕があります。ただし入口ドアは手動ドアです。
バリアフリートイレは、独立棟の公衆トイレが2か所と「センターハウス」にもあります。
ぶどう、栗、りんごなどの各種の果樹園は、「メタセコイア並木」を隔てた反対側の敷地に広がります。果樹園はバリアフリーではありません。
琵琶湖の湖中に建つ大鳥居で有名な「白髭神社」と、2千棟以上の建築を手がけたウィリアム・ヴォーリズを学ぶ「今津ヴォーリズ資料館」を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
琵琶湖周辺には、車椅子での利用に問題がある施設も多々あります。周到な行動計画を立てて、快適な車椅子観光を楽しんで下さい。
(本稿は2016年9月の取材に基づいています)