障害者虐待防止法に基づき、厚生労働省が毎年度「都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応等に関する状況について調査」を実施し、その結果を公表しています。
2021年3月26日付で、令和元年度の調査結果が公表されました。全体で虐待と判断された被害者は2,398人。死亡者は2名でした。
調査結果から、虐待から障がい者を守る現場の状況を抜粋して紹介します。
〇養護者による虐待事案の過半は48時間以内に事実確認を実施
相談・通報・届出を受けてから事実確認を行うまでの日数の現状です。当日が45%、翌日が15%、2日目が6%と、ここまでで約66%になります。これが市町村を中心にした現場の対応スピードの実態です。
この数値から判断すれば、緊急性が高いと判断される事案については、ほぼ当日ないし翌日には、事実確認の初動がとられているものと思われます。
〇法に基づく立入調査は112件
これも養護者による虐待が疑われる事案の状況です。全5,864件の内、「法第11条に基づく立入調査により事実確認を行った事例」は112件でした。またその内、警察が同行したのは30件です。虐待調査を受け入れない、特に悪質な養護者は、全体ではこのような状況です。
〇虐待被害者の43%を分離保護
養護者による虐待が確認された被害者総数は1,664人でした。この内の711人は、施設に一時的に入所させるなど、虐待養護者からの分離措置が行われました。
逆に「一度も分離していない被虐待者数」は698人です。つまり助言や指導、あるいは定期的な見守りなどで、養護者による今後の虐待は防止できると判断されたケースが42%ありました。
〇事実調査不要と判断される事案が11%
養護者による虐待に関して相談・通報・届出があった事案で、受理した段階で明らかに虐待ではなく事実確認調査不要と判断された件数です。
5か年の累計数値で受理件数が24,794年件、その内の2,634件が事実調査不要と判断されています。約10件に1件が、事実確認調査不要と判断されました。
〇指定が取り消された事業所は3件
障がい者福祉偉業所で、虐待の事実が認められた事例 が547 件ありました。この中で障害者総合支援法又は児童福祉法の規定による権限の行使として、強力な処分である指定取消をしたのが3件、指定の効力の全部又は一部停止が11件、改善命令が2件でした。
多くのケースは「施設・事業所に対する指導」「改善計画の提出依頼」「虐待を行った施設従事者等への注意・指導」など、比較的軽い措置がとられています。
以上、虐待から障がい者を守る現場の取り組みの状況です。
(本稿は2021年3月に執筆しました)