医療的ケア児がスクールバス通学 都立特別支援学校のガイドライン

医療的ケア児がスクールバス通学 都立特別支援学校のガイドライン

医療的ケアが必要な児童・生徒のスクールバスでの通学は、重度障がいと共に生きる多くの家族にとって、切実な要望です。

別稿「障がいのある子の保護者からみた 特別支援学校スクールバスの実際」をご参照ください。

2019年5月には、宮城県で特別支援学校高等部に通う医療的ケアが必要な生徒が、喀痰が原因で登校中のスクールバスの中で心肺停止状態となり搬送され、病院で死亡が確認されるという事案が発生しました。

東京都では2018年度から、一部の特別支援学校での「専用通学車両」での運行が順次始まっています。2019年4月に「都立学校教育部特別支援教育課」から公表された「都立肢体不自由特別支援学校における専用通学車両の運行に関するガイドライン」から、医ケア専用のスクールバス通学を行うための手順や注意点を紹介します。

○利用できる児童・生徒の要件

大前提として以下の3つの基準を満たす、とされています。

・体調、生活リズムが安定し、定期的に登校でき、決められた時間にバス停に来ることができる。

・主治医に加え学校医又は指導医が乗車可能と認めている。

・保護者が専用通学車両の運行条件を理解し、協力をすることができる。

この3つの基準に関連して、様々な要件が示されています。以下、保護者側からみたポイントを抜粋して紹介します。

○学校都合による保護者への同乗依頼

本格利用を始める前に、一定期間は保護者が同乗して、医療的ケアに関する確認を行います。

また、看護師が確保できない、急病により乗車できない場合などは、保護者が同乗します。

○人工呼吸器などは対象外

スクールバス内で実施できる医療的ケア項目は指定されています。

「呼吸補助装置の管理」と「人工呼吸器の作動状況の確認及び緊急時の連絡等」は「当面の間、専用通学車両内では実施しない」「今後の検討課題」です。

「血糖値測定及びその後の処置」は実施しません。

「経鼻エアウェイの挿入・抜去」は「緊急時対応」です。

○スクールバス利用の可否は毎年確認

必要があれば随時、問題がなくても毎年11月頃を目安に、医師、看護師、学校責任者と保護者で、次年度のバス利用の可否を確認します。当年度の利用状況や健康状態の変化などによっては、次年度はバスを利用できない可能性があります。

また、利用条件を十分に満たした児童・生徒でも、転校生はすぐにはスクールバスを利用できません。医療的ケアの学校での充分な状況確認、バスや看護師の手配が出来てからの利用になります。

○「夏休み明け初日」などは利用できない

児童・生徒の体調不良時は、バスは利用できません。ガイドラインでは、以下の場合は体調不良がなくても利用できないとしています。

・長期休業日明けの登校1日目の登校便

・1週間以上欠席した場合の登校1日目の登校便

・登校のバスで医療的ケアが通常時と比較し、頻回発生しているときの下校便

○その他一般的な事項

ガイドラインでは保護者に対して、以下の事項の協力をもとめています。

・主治医との連絡、学校あての意見書の申請と受け取り

・乗車マニュアルの共同作成と確認

・健康チェックカードの記入など、スクールバス乗車看護師への児童・生徒の日常的な健康状態の引継ぎ

・医療的ケアで使用する機器の充電や必要物品の用意

・緊急時の対応協力、常に連絡がとれること

まだ一部の児童・生徒に限られますが、医療的ケア児のスクールバス通学が始まっています。

(本稿は2020年8月に執筆しました)