水戸八景 名勝広浦 車椅子で行く茨城涸沼 バリアフリー情報

茨城県茨城町の「涸沼広浦公園」は、湖畔ギリギリまで車椅子で行ける景勝地です。ただしバリアフリーではありません。現地の状況を紹介します。

「広浦公園」は、県指定の「名勝広浦」とされています。その起源は江戸時代、水戸藩第九代の藩主、徳川斉昭公が「水戸八景」のひとつに選んだこと。公園には斉昭公が読んだ和歌の碑が建っています。湖面に映る中秋の名月を見て読んだ歌です。

県指定の「名勝広浦

淡水と海水が混じり合う汽水湖の涸沼(ひぬま)。6000年前までは海だったのですが、地殻変動などで、涸沼川の下流がふさがれて沼を形成。下流になる那珂川から満潮時は海水が逆流して流れ込む汽水湖となっています。

名物は「ヤマトジジミ」。黒いダイヤとよばれる大粒のシジミです。そして天然のうなぎです。昭和初期までは「涸沼ニシン」が水産業の柱でしたが、乱獲と環境汚染により絶滅したと考えられています。現在では「ヤマトシジミ」などの固有種が絶滅しないように、様々な対策が施されています。涸沼一帯をラムサール条約に登録したのは、貴重な自然を守るためです。

汽水湖涸沼

「広浦」は涸沼の漁港です。シジミを売っているお店、歴史ある鰻屋など、いくつかの商業店舗があります。

赤い鳥居の神社は「大杉神社」。本社は茨城県稲敷市にあり、通称「あんば様」。この広浦の大杉神社のお祭りも、通称は「あんば祭り」。湖上に浮かべた船を舞台にして、踊りを奉納するお祭りです。

祭りのとき、夏のキャンプシーズンは賑わいますが、それ以外の季節は静かな、風光明媚な景勝地です。

赤い鳥居の神社は「大杉神社

広浦公園は、赤い鳥居が浮かぶ水戸八景の景勝地にあります。キャンプ場がメインの公園で、無料駐車場があります。

広浦公園の周辺はフィッシングゾーンで、自由に釣りができます。淡水と海水が混じり合う汽水湖なので、マハゼなどが釣れるということです。

アクセスは車が便利です。涸沼の周囲を走る道路から、湖畔寄りの側道に入ります。

キャンプ場の無料駐車場として、隣接する第一駐車場と、100mほど離れた第二駐車場があります。

第一駐車場はキャンプ場宿泊利用者専用となっていますが、オフシーズンであれば、実際には誰でも利用可能です。

また第二駐車場に停めても、キャンプ場まで舗装路を車椅子で行くことが出来ます。ただし狭い道なので、車が来ると、車椅子を慎重に道の脇に寄せる必要があります。どちらの駐車場にも身障者用駐車区画はありません。

車椅子でのアクセス

公園内のバリアフリー状況です。駐車場からキャンプ場に到着します。

キャンプ場の中央には、未舗装でデコボコですが、車椅子でもなんとか通行可能な通路があり、湖畔に向けて進むことができます。通路の横はBBQ広場です。

湖畔への最後の箇所が、大きな岩がゴロゴロするゾーンです。赤い鳥居まではあと一歩ですが、車椅子では沼の畔や鳥居の下にはたどり着けません。

キャンプ場のバンガローは「ツリーハウス」と呼ばれる階段利用の仕様で、車椅子での利用は出来ません。

キャンプ場の公衆トイレには、バリアフリートイレはありません。

涸沼広浦公園

「涸沼広浦公園」は、多少のゴツゴツ、デコボコは気にならない車椅子利用者なら、湖畔の一歩手前まで行くことができます。

茨城町の「涸沼自然公園」を別稿で紹介しています。ご参照ください。

(本稿は2016年11月の取材に基づいています)

秩父の奇観「ようばけ」車椅子観光ガイド バリアフリー情報

「ようばけ」とは、秩父地方の方言で「陽の当たる崖」、または「岩の崖」を意味します。

埼玉県小鹿野町の「ようばけ」は高さ100m、幅400mに及ぶ地層の大露頭で、1,500万年前に堆積した地層が観察できる、国指定の天然記念物です。

「ようばけ」の真下の赤平川岸まで立ち入ることができますが、歩道はデコボコした未舗装路の急坂なので、健脚の人しか行けません。

車椅子では近づけませんが、離れた場所から奇観を楽しむことができます。現地のバリアフリー状況を紹介します。

「ようばけ」の近くにある、有料施設「おがの化石館」が見学の拠点になります。アクセスはバス停から徒歩20分の案内。車の利用が便利です。おがの化石館には無料駐車場が用意されています。駐車場から「ようばけ」を眺めることができます。

おがの化石館と秩父のようばけ

駐車場の端に「ようばけ」の案内板があります。「ようばけ」からは時々巨石が転がり落ちるので、「ようばけ」の下の川岸は立入禁止です。手前の川岸は立ち入り出来ますが、過去には対岸まで転がった巨石もあったということです。落石に注意、そして毒蛇、毒虫にも注意するように書かれています。

駐車場から先は舗装路が続くので、車椅子で無理のない範囲を移動しながら、「ようばけ」を観察することができます。

おがの化石館と秩父のようばけ

「ようばけ」について説明します。秩父盆地は1,500万年前まで古秩父湾の海底でした。その後の地殻変動で隆起した地層を赤平川が浸食した地層が「ようばけ」で、1,500万年前の水深50mまでの海の浅い箇所で堆積した海成層が露出しています。

地層の境界線が何層にもはっきり見えるのは、砂岩と泥岩が交互に堆積したためです。堆積した年代によって大きく2区分され、「ようばけ」の上半分が「鷺の巣層」、下半分が「奈倉層」と呼ばれています。

特に「奈倉層」が化石の宝庫で、クジラ・サメ・ウミガメから貝、カニ、ウニなど、海の生き物の化石が大量に発掘されています。なかでも大型魚類の新種として認定された「チチブサワラ」の化石と、奇獣とよばれる「パレオパラドキシア」の化石が有名です。

おがの化石館と秩父のようばけ

これらの化石について、おがの化石館で学ぶことができます。次に、おがの化石館のバリアフリー状況を紹介します。

おがの化石館と秩父のようばけ

駐車場から段差解消箇所を通行して化石館に進みます。

おがの化石館と秩父のようばけ

おがの化石館は有料の施設で、入館料の障がい者減免制度はありません。2フロア構造の施設で、エレベーターはなく2Fへは階段で上がります。

エントランスまでは段差なく車椅子で移動できます。前庭に巨大な天然のコンクリート「石灰質コンクリーション」が展示されています。

おがの化石館と秩父のようばけ

埼玉の奇獣パレオパラドキシアの模型展示があります。

おがの化石館と秩父のようばけ

化石館の入口は2重のドアで、1枚目は手動ドア、2枚目は自動ドアです。手指消毒、検温をして、受付で入館料を支払い、化石館内に入ります。

おがの化石館と秩父のようばけ

バリアフリートイレは1Fにあります。スペースに余裕がある個室で、設備はシンプルなトイレです。

おがの化石館と秩父のようばけ

1F 展示室は小鹿野町で産出した化石を中心に、秩父地方の化石、ジオパーク秩父の紹介などが展示されています。パレオパラドキシアの骨格復元展示が目立ちます。

おがの化石館と秩父のようばけ

パレオパラドキシア化石の産出状況の展示です。

おがの化石館と秩父のようばけ

パレオパラドキシアの生体復元模型の展示もあります。

おがの化石館と秩父のようばけ

1Fの展示は車椅子で観覧できます。

おがの化石館と秩父のようばけ

2Fへは階段のみです。

おがの化石館と秩父のようばけ

2Fは「日本と世界の古生代から新生代の化石」を展示しています。

おがの化石館と秩父のようばけ

展示室内はフラットな構造です。

おがの化石館と秩父のようばけ

2Fは円形の構造で、周囲にテラスが設けられています。

おがの化石館と秩父のようばけ

2Fのテラスから「ようばけ」を眺めることができます。

おがの化石館と秩父のようばけ

「ようばけ」は「おがの化石館」周辺から車椅子で見学できます。「おがの化石館」は、1F だけの観覧で「ようばけ」に関する化石の勉強ができます。国指定天然記念物「ようばけ」は、観光地化されていない静かな景勝地です。

(本稿は2022年3月に書き直しました)