埼玉県秩父市の「秩父神社」は創建が神代と伝承される古社で、武蔵国が成立する以前からこの地方の総鎮守でした。
毎年12月に行われる例大祭は「秩父夜祭」として知られ、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。秩父夜祭を紹介する「秩父まつり会館」が境内の隣接地にあります。秩父まつり会館のバリアフリー状況については、別稿「秩父まつり会館 車椅子見学ガイド バリアフリー情報」を参照してください。

秩父神社はバリアフリーではありませんが、決定的な段差を回避して、車椅子で参拝が出来ないことはありません。車椅子での参拝ルートと、参拝が可能な範囲を詳しく紹介します。

車でアクセスした場合、HPでは秩父駅側の駐車場が紹介されていますが、「西門」から境内に入ったエリアも、通常期は参拝者用駐車場として利用できます。車椅子利用者は、西門内駐車場のほうが、社殿までのアクセスが便利です。

大鳥居のある参道入口は、段差があるので車椅子では通行できません。

西門内駐車場からは、段差の上にある境内の高さに横移動できます。手水舎は大鳥居の近くにあり、車椅子でお浄めができる構造です。

西門内駐車場の横にあるトイレ棟には、バリアフリートイレがあります。

秩父駅から徒歩3分の案内です。駅から、あるいはHPで紹介されている駐車場からのバリアフリールートを紹介します。秩父神社に近づくと、道の左側に「まちなか観光パーキング」があります。

その正面付近に秩父神社の「平成殿」があります。車椅子では平成殿内から境内へ向かいます。

平成殿の正面入口は階段ですが、段差迂回スロープが設置されています。

スロープを上がり平成殿のエントランスに進みます。

出入口は2重の自動ドアです。横に靴箱がありますが、土足禁止ではありません。車椅子でそのまま館内に入ります。

館内はフラットな構造です。館内を直進すると、境内側の出入口があります。

境内側の出入口もフラットな構造で、2重の自動ドアです。

平成殿境内側のドアから外に出ると、参道入口の段差を回避した高さ、西門内駐車場からのルートと同じ高さに出ます。しかし、御本殿があるエリアは更に段差の上になります。

ここからは西門内駐車場ルート、平成殿ルート共に同じ段差回避ルートを通行します。平成殿の出口の横に車椅子マークが掲示された段差回避スロープ路があります。

スロープ路を折り返しながら、御本殿がある高さに車椅子で上がります。

スロープを上がりきると境内の最高地点、御本殿の高さに出ます。

車椅子マークルートの出口から、境内中央部の舗装路面まで、舗装路が設けられています。

境内中央部の舗装路は、御本殿前まで続きます。拝殿の賽銭箱は2段の上にあります。車椅子では段の手前からの参拝になります。

神札所は御本殿の横にあり、デコボコがある石畳を進みます。ゆっくり進めば、車椅子で通行可能です。

窓口は車椅子から手が届く高さです。

御本殿は素晴らしい彫刻で飾られています。左甚五郎作「子育ての虎」などがある正面側は、車椅子から問題なく見学できます。

御本殿の周囲は、未舗装の砂利路面です。砂利の深さは一律ではなく、砂利が薄い地点を選んで通行すれば、車椅子が動かないことはありません。もちろん快適な移動ではありません。

無理をして御本殿を一周すると、見事な彫刻を楽しむことができます。左回りで紹介します。クジャクが舞う世界が広がります。

まだまだクジャクが舞い続けます。

御本殿左側奥まで進むと「お元気三猿」がいます。日光東照宮とは異なり、秩父神社の三猿は「よく見て・よく聞いて・よく話す」お元気三猿です。

御本殿裏側は「北辰の梟」。体は正面を向き、頭は正反対の真北を向いています。秩父神社は、北極星を中心とした北辰北斗の信仰です。

御本殿右側には左甚五郎作「つなぎの龍」。修復事業が完了し、色鮮やかに蘇りました。

境内にはいくつも祠やお末社がありますが、未舗装の砂利路面を通行するので、車椅子では全域を参拝するのは困難です。

「神降石」と「柞稲荷神社」がある一帯は、車椅子で近づくことができます。

「つなぎの龍」まで進むことができれば、「皇大神宮」は参拝できます。

バリアフリー神社とはいえませんが、秩父神社の御本殿は車椅子で参拝できます。そして無理をすれば、車椅子で見事な装飾を鑑賞することができます。
(本稿は2022年3月に執筆しました)