「ようばけ」とは、秩父地方の方言で「陽の当たる崖」、または「岩の崖」を意味します。
埼玉県小鹿野町の「ようばけ」は高さ100m、幅400mに及ぶ地層の大露頭で、1,500万年前に堆積した地層が観察できる、国指定の天然記念物です。
「ようばけ」の真下の赤平川岸まで立ち入ることができますが、歩道はデコボコした未舗装路の急坂なので、健脚の人しか行けません。
車椅子では近づけませんが、離れた場所から奇観を楽しむことができます。現地のバリアフリー状況を紹介します。
「ようばけ」の近くにある、有料施設「おがの化石館」が見学の拠点になります。アクセスはバス停から徒歩20分の案内。車の利用が便利です。おがの化石館には無料駐車場が用意されています。駐車場から「ようばけ」を眺めることができます。
駐車場の端に「ようばけ」の案内板があります。「ようばけ」からは時々巨石が転がり落ちるので、「ようばけ」の下の川岸は立入禁止です。手前の川岸は立ち入り出来ますが、過去には対岸まで転がった巨石もあったということです。落石に注意、そして毒蛇、毒虫にも注意するように書かれています。
駐車場から先は舗装路が続くので、車椅子で無理のない範囲を移動しながら、「ようばけ」を観察することができます。
「ようばけ」について説明します。秩父盆地は1,500万年前まで古秩父湾の海底でした。その後の地殻変動で隆起した地層を赤平川が浸食した地層が「ようばけ」で、1,500万年前の水深50mまでの海の浅い箇所で堆積した海成層が露出しています。
地層の境界線が何層にもはっきり見えるのは、砂岩と泥岩が交互に堆積したためです。堆積した年代によって大きく2区分され、「ようばけ」の上半分が「鷺の巣層」、下半分が「奈倉層」と呼ばれています。
特に「奈倉層」が化石の宝庫で、クジラ・サメ・ウミガメから貝、カニ、ウニなど、海の生き物の化石が大量に発掘されています。なかでも大型魚類の新種として認定された「チチブサワラ」の化石と、奇獣とよばれる「パレオパラドキシア」の化石が有名です。
これらの化石について、おがの化石館で学ぶことができます。次に、おがの化石館のバリアフリー状況を紹介します。
駐車場から段差解消箇所を通行して化石館に進みます。
おがの化石館は有料の施設で、入館料の障がい者減免制度はありません。2フロア構造の施設で、エレベーターはなく2Fへは階段で上がります。
エントランスまでは段差なく車椅子で移動できます。前庭に巨大な天然のコンクリート「石灰質コンクリーション」が展示されています。
埼玉の奇獣パレオパラドキシアの模型展示があります。
化石館の入口は2重のドアで、1枚目は手動ドア、2枚目は自動ドアです。手指消毒、検温をして、受付で入館料を支払い、化石館内に入ります。
バリアフリートイレは1Fにあります。スペースに余裕がある個室で、設備はシンプルなトイレです。
1F 展示室は小鹿野町で産出した化石を中心に、秩父地方の化石、ジオパーク秩父の紹介などが展示されています。パレオパラドキシアの骨格復元展示が目立ちます。
パレオパラドキシア化石の産出状況の展示です。
パレオパラドキシアの生体復元模型の展示もあります。
1Fの展示は車椅子で観覧できます。
2Fへは階段のみです。
2Fは「日本と世界の古生代から新生代の化石」を展示しています。
展示室内はフラットな構造です。
2Fは円形の構造で、周囲にテラスが設けられています。
2Fのテラスから「ようばけ」を眺めることができます。
「ようばけ」は「おがの化石館」周辺から車椅子で見学できます。「おがの化石館」は、1F だけの観覧で「ようばけ」に関する化石の勉強ができます。国指定天然記念物「ようばけ」は、観光地化されていない静かな景勝地です。
(本稿は2022年3月に書き直しました)