奈良 吉野山 車椅子散策ガイド バリアフリー情報

桜の名所で世界遺産がある「吉野山」。「下千本」を中心に、車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。

吉野山の観光シーズンは桜と紅葉の時期。特に桜の季節は交通規制がかかります。車椅子利用者の場合、ケーブルカーの利用は難しくアクセスは車が便利。マイカー、タクシー、バス、いずれの交通手段でも、オールシーズン観光の拠点になるのは「下千本観光駐車場」です。「下千本観光駐車場」から徒歩で「金峯山寺」方面に進むコースでバリアフリー状況を紹介します。

吉野山の観光

「下千本観光駐車場」は、400台を収容する駐車場で24時間利用可能です。通常は無料で観桜期は有料になります。身障者用駐車区画は出入口にある公衆トイレの近くです。この公衆トイレにバリアフリートイレがあります。設備はシンプルですが実用に耐えるトイレです。駐車場は車椅子で問題なく利用できます。

駐車場内から金峯山寺方面にかけてが、下千本の観光エリアです。距離的には金峯山寺仁王門まで700mほど。一般的には観光ルートとして、散策が推奨されるコースですが、車椅子で向かうと傾斜と道の狭さに苦しめられます。現地の状況を詳しく紹介します。

下千本の観光エリア

下千本観光駐車場から一般道に出ます。この道は、観光シーズンは一般車両通行禁止、あるいは一方通行規制がかかりますが、閑散期は一般車両が自由に通行します。

駐車場から出るとすぐに「下千本展望所」があります。緩やかな上り坂を進むと、「七曲坂」手前では少し下り坂になります。その先に「大橋」。現地に橋の解説があるのでご覧下さい。さらに進むとケーブルカーの「吉野山駅」。このあたりまでは、アップダウンも緩やかで道幅は多少の余裕があります。一般的な車椅子利用者なら、問題なく散策できます。

吉野山駅」を過ぎると、次にある観光スポットは「黒門

「吉野山駅」を過ぎると、次にある観光ポイントは「黒門」です。徐々に道が狭くなり、車が来ると車椅子を道端に寄せるのに気を使うようになってきます。そして上り坂が段々ときつくなります。気合を入れて「黒門」を越えます。

次の観光ポイントが「銅の鳥居」。このあたりで車椅子での移動に体力的な余裕がなくなります。一般的な車椅子利用者なら、元気な介助者が必要です。そしてこの先「仁王門」までは、車椅子にとって地獄のような急坂になります。しかも道は狭いので、無理な人は引き返してください。かなりの強者でなければ「仁王門」の下まで車椅子で行くのは困難です。

その先にある世界遺産、吉野山の金峯山寺。高台にそびえ立つ「蔵王堂」は高さ34mで、東大寺大仏殿に次ぐ木造大建築です。

吉野山の金峯山寺

構造物としては本堂である「蔵王堂」と「仁王門」、青いお顔の「秘仏本尊」が有名です。役行者が開祖である修験道の総本山。参拝に訪れたい世界遺産です。ただ残念ながら、車椅子での参拝は、現実的には無理です。状況を詳しく紹介します。

吉野山の金峯山寺

蔵王堂への通常ルートは、仁王門の下からの急な階段路です。車椅子はもちろん、体力に不安のある人にはお薦めできません。階段路の前に「スロープはこちら」という案内があります。山を上ってきて右手へ廻るルートです。この道も急坂で狭路、通常期は一般車両が自由に通行できるので、車両が来ると車椅子の逃げ場がない怖い道です。進むとスロープがあります。

スロープといっても、中央部は階段、両端が幅狭いスロープを組み合わせた急坂路で、傾斜角度30度くらいありそうな、転がり落ちそうなスロープです。しかもスロープ部は、一般的な車椅子がギリギリの狭さ。その距離は30mほどあります。このスロープを車椅子で上り下りするのは現実的ではありません。

何らかの方法で蔵王堂まで車椅子で進んだとします。蔵王堂の前の広場は、車椅子がスタックして動けなくなる深い砂利路面です。

蔵王堂の前は深い砂利路面

そして蔵王堂の入口は階段で、スロープはありません。金峯山寺は、車椅子では仁王門近づいて、下から見上げるのが精一杯です。

吉野山の金峯山寺

千本観光駐車場から仁王門の付近まで、お土産店や飲食店など数多くのお店があります。吉野葛、柿の葉寿司、梅干し、お漬物・・・。見る限りバリアフリーな店はほぼありません。入口には段差、狭い店内、店内にも段差。山の坂道の狭いスペースにあるお店なので、どうしてもそうなります。それでも何店舗かは、車椅子でも何とかなりそうなお店があります。急坂の横にあるほとんどのお店は、車椅子では利用困難な構造なので、道がフラットな箇所にあるお店を狙って下さい。

交通規制のない観光シーズン以外の時期に吉野山をドライブで楽しむ場合、道は狭く反対から車が来るとすれ違いが出来ない箇所が上千本方面まで連続します。ドライブに気合が必要な吉野山です。「観光車道」まで抜ければ、普通の2車線路になります。

吉野山の車椅子での散策

以上のように吉野山の車椅子での散策は、実際にはかなり困難が伴います。下千本観光駐車場の近くを、無理ない範囲で行動されることをお薦めします。この範囲にも数軒のお店があります。

車で吉野山を訪れた場合、最寄りの道の駅は「道の駅吉野路大淀iセンター」です。詳しくは別稿を参照してください。

(本稿は2018年6月の取材に基づいています)