大仏様が鎮座する奈良「東大寺」。現地のバリアフリー状況と車椅子での参拝方法を紹介します。
東大寺はバリアフリー改修を進めています。現時点では、大仏殿までのバリアフリー歩道、大仏殿内の車椅子参拝ルート、バリアフリートイレの設置が実現しています。本稿執筆時点ではまだ長期休館中ですが、「東大寺ミュージアム」が2018年9月にリニューアルオープンします。バリアフリー化が進むはずです。
大仏殿までのバリアフリー歩道について、詳しく紹介します。大仏殿前交差点から東大寺参拝をスタートします。ここから「南大門」を経由して「中門」、左折して「西楽門」までの500m超が「車椅子ルート」です。その正体は、ゴツゴツする石畳みルートの中央部を1mほどフラットな路面に改修した道です。2004年に改修されました。アップダウンもなく、車椅子で移動することができます。
バリアフリー歩道の通行上の注意点です。参道中央部のフラットなバリアフリー舗装上は、鹿と記念撮影の観光客がいっぱいです。しかもなかなか動かない。車椅子に気が付いて避けてくれる人もいますが、車椅子でバリアフリー舗装上を通行できるとは限りません。もちろん鹿の落し物がバリアフリー舗装上にもあります。
もう一つの課題は、南大門の仁王像の拝観です。南大門を通るには段差を超える必要があるので、車椅子ルートは左右両方に迂回して配置されます。そのまま門の外側を迂回して通ると、仁王像を拝むことが出来ません。車椅子では門の段差の外側から覗き込んで仁王像を拝観します。
バリアフリー歩道は、大仏殿の西楽門まで続きます。ここが大仏殿へのスロープルートの入口です。入口にはスタッフが1名常駐しています。大仏殿は有料ですが観覧料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名の拝観料が半額に減免されます。
スロープルート入口スタッフに、拝観券を提示してスロープに入ります。つまり先にチケットを購入する必要が有ります。拝観券の売り場は階段の上です。
車椅子利用者だけで拝観に来た場合どうするのか、スタッフに尋ねると「私が買ってきます」というお答えです。そのような運営になっています。
西楽門からスロープで上ると「西回廊」へでます。西回廊から大仏殿までの回廊区間は、一般客は通行できません。ベビーカーも許されません。通行できるのは車椅子利用者と介助者のみです。
大仏殿への最後のスロープの先には木製の柵があり、自分で開閉します。大仏殿内を一周して大仏様の前に戻ってくると、そこにも木製の柵があり、ここも自分で開閉して西回廊に戻ります。
東回廊にはスロープがないので、一般参拝者とは逆に西楽門へ向かいます。したがって団体の中で一人車椅子という場合は、行きも帰りも健常者とは違うルートなので、団体行動は出来ません。
大仏殿スロープルートがある西楽門の近くに、公衆トイレがあります。この男女別トイレの入口に、それぞれバリアフリートイレが設置されています。入口なので異性介護でも利用できます。広さはありますが、現時点では設備はシンプルなトイレです。このトイレの前は喫煙場所なので、煙草が臭うトイレです。
バリアフリー歩道は、東塔跡方面へも伸びています。芝生広場のような東塔跡周辺を通る散策路は、舗装されてフラットです。ここは観光客が少ないエリア。若草山方面へ、しばらくの間は快適に車椅子で通行できます。
最後にバリアポイントの紹介です。バリアフリールートは「二月堂」まで届いていません。車椅子で向かうなら、二月堂方面へ向かう車道を通行します。この坂は急坂路ですが、元気な人、元気な介助者がいる人ならクリアできないことはないレベルです。
この坂道は観光タクシーの通行は認められています。体力のない方はタクシーの利用も選択肢です。ただし二月堂、法華堂(三月堂)、そして戒壇堂には段差があり、車椅子での内部の拝観はできません。
混雑の問題はありますが、東大寺の大仏様は、車椅子で拝観できます。二月堂、法華堂(三月堂)、戒壇堂は、バリアフリーではありません。
(本稿は2018年6月の取材に基づいています)