特別支援学校の運動会 体を動かすことが出来ない生徒のプログラム

特別支援学校の運動会 体を動かすことが出来ない生徒のプログラム

ほとんど体を動かすことの出来ない、重度重複障がいのある子ども達が通う特別支援学校の運動会を紹介します。

何をしているのか想像できますか。 見たことのない方には、ちょっと想像ができない世界です。

特別支援学校の運動会

重度重複障がい児といっても、障がいの状況は一人ひとり違います。運動会といっても、一人一人の「頑張れば出来ること」の目標を設定し、練習を重ね、挑戦することが教育目的になります。

指先だけはちょっと動かすことが出来る子、肘から先の運動は少しできる子、下肢は麻痺していても上肢は動かせる子、介助歩行なら可能な子など、それぞれに合った課題を設定し、その課題の克服を目的とした競技が行われます。

特別支援学校の運動会

紅組と白組に分かれます。最年長の学年の子が応援団長です。しゃべることが出来る子がいると、盛り上がります。いなくても、ボタンを押せば録音した声がでるマシーンなどを使って、盛り上げます。先生たちが一生懸命考えた競技が始まります。

特別支援学校の運動会

ほとんど体を動かせない最重度の障がいある児童の場合、例えば指先でちょっと触るだけで反応するスイッチを用意し、スイッチを押せば紐が引っ張られ棒が倒れる仕掛けにします。その子にとっては、自分の意志で指先を動かしてスイッチに触れることが課題です。

何度も練習を重ねて本番に臨みます。この課題も、当人にとっては難しいことです。なかなか出来ないことがよくあります。みんなで応援して、時間をかけてスイッチ押しに挑戦します。

もう少し腕の動きが出来る子の場合、例えばスロープの上にボールをセットし、そのボールをスロープに押し出して転がすことが課題になります。電動車いすのスイッチが押せる子なら、簡易な車椅子競技ができます。クラッチ歩行が可能な子なら、ちょっとした障害物競技ができます。

リレー競技も可能です。例えば紅白5人ずつの選手が、それぞれの課題に挑戦して、成功したら次の選手の番になります。早いチームが勝ちです。

団体競技もできます。例えば、玉入れではなく「玉寄せ」。中心円を決め、それぞれのチームが全員で円になり、中心円内を目指してボールを投げます。投げられない子は、スロープ台を使います。中心円内に多くのボールがあったチームが勝ちです。

重度重複障がいのある子ども達は、運動会で自分の課題に挑戦しています。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「特別支援学校 重度の障がいがある小学生の全校遠足」を掲載しています。ご参照ください。