埼玉県東松山市の「埼玉県平和資料館」は、車椅子で利用できる施設です。2013年にリニューアルを実施し「埼玉ピースミュージアム」という愛称が付けられました。車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。
戦争の記憶をつなぎ、平和の尊さを伝える、埼玉県が運営する無料の施設です。常設展示と企画展示、そして展望タワーなどがあります。開館は1993年。改修されて全館車椅子で利用できるバリアフリー施設です。
徒歩圏内に駅はありません。車でのアクセスが便利です。38台を収容する来館者用の無料駐車場があります。埼玉ピースミュージアムは小高い丘の上にある施設。一般用の駐車場からは資料館のエントランスまで徒歩で坂道を上ります。エントランス付近から一般駐車場方面を見下ろした写真です。
身障者用駐車区画は坂の上、エントランスとほぼ同じ高さの場所に2台分用意されています。身障者用駐車区画へ上る車道は細い坂道で、対向車とすれ違いは出来ません。
身障者用駐車区画から資料館のエントランスまでは、緩やかな上り坂の舗装路で、50mほどの距離です。この間に屋根はありません。
エントランスから館内へ入ります。このフロアはB2になります。
すぐにインフォメーションコーナーがあり、パンフレット類が置かれています。「埼玉平和資料館」は入館無料です。検温、手指消毒をして館内を進みます。
資料館は高台に建つ地形を生かした設計で、B2の移動通路は車椅子で楽に移動できるレベルの緩やかな上り坂です。展示室の手前にエレベーターがあり、B1へ上ることができます。
B1には「分類展示室」と「マルチライブラリー」があります。「分類展示室」は、軍服、ラジオ・・・、などと資料が分類された小さな展示室でスペースは5坪ほどです。
「マルチライブラリー」は、大戦関係の視聴覚資料の貸し出しと視聴が出来るコーナー。こちらも同じく5坪ほどの広さで、管理スタッフが1名常駐しています。どちらも狭いながら、車椅子での利用は可能です。
エレベーターでB2へ戻り、通路を進むと「展示室」があります。常設展示室の入口は「タイムトンネル」。動く歩道を抜けると、戦時中にタイムスリップするという趣向です。
当時の学校や一般住居を再現した展示があります。展示物の中に入ることができますが、段差があり車椅子での立ち入りは出来ません。召集令状や当時の人形などの資料系展示は車椅子で見学可能です。
この資料館の目的は「風化しつつある戦争の体験を次の世代に引き継ぎ、県民に戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えることにより、平和に対する意識の高揚を図り、平和な社会の発展に寄与すること」です。
展示室を出て傾斜通路に戻り、更に先に進むとバリアフリートイレがあります。
設備が更新された綺麗なトイレです。スペースは一般的なサイズの個室で、ウォシュレット付き便器、オストメイト装置が備えられています。
トイレの先に進みます。そしていったん外に出ます。そこに展望塔があり、エレベーターで展望室へ上ることができます。
車椅子で展望室の利用は可能です。展望塔の高さは40m超。そもそも高台に建っているので、標高を加えると147.5mの高さから埼玉を眺望します。
狭い展望室ですが、低い位置からガラス面なので、車椅子から眺望を楽しめます。無料で利用できる望遠鏡が2台設置されていますが、車椅子ではやや利用しづらい高さ。子供は踏み台に乗って覗き込む望遠鏡です。ただし現在はコロナ対策で利用できません。周囲には高い建物がありません。眺めの良い展望室です。
展望塔の下は「ピースガーデン」という広場になっています。
広場に面して休憩コーナーがあり、飲料の自販機とフリーテーブルが置かれています。車椅子で利用できる休憩コーナーです。
資料館の周辺は「もみじ谷」や「さくら谷」がある散策コースです。自然を楽しむエリアですが、未舗装で段差があるルートのため、車椅子での散策は無理のない範囲に限られます。
すぐ近くにある「岩殿観音」は、趣のある素敵な古寺ですが、どのルートからも激しい傾斜や段差があり、車椅子での参拝はほぼ不可能です。
埼玉ピースミュージアムは、展示室、展望室ともに、車椅子で利用できる施設です。
(本稿は2021年8月に加筆修正しました)