義務教育の学年齢になると、全ての子どもが学校に入学する義務があります。重い障がいのある子の場合、進学先は大きく分けて3つあります。
普通校に行く、特別支援学校に通学する、特別支援学校に在籍して病院や家庭での訪問教育を受ける、以上の選択肢になります。
本稿では、普通学校への入学は難しいレベルの障がいがあるが、通学は可能という肢体不自由の子どもが、特別支援学校に進学するケースの実際をご紹介します。
入学前です。教育委員会や行政との面談や打ち合わせを行い、進学先を決めます。
特別支援学校の場合、教員と児童の数が普通校とは違います。特に重度の肢体不自由児を受け入れる学校は、児童に対し教員が一対一に近い人数で配置されます。
この教員の人事的な手配の都合で、出来ることなら早い時期での進学先の決定が望まれます。もちろん、急な引っ越しなどで期中での転校をしても、義務教育なので絶対に学校に入学できます。
ただし、教員の増員は来年4月まで待つとか、当面は臨時採用の補助教員での対応になるなど、出来る範囲での対応になります。
障がいのある子の場合、個別の教育目標を設定し、教育プログラムを組む授業になります。同じレベルのプログラムの子どもでグループを編成し、一緒に授業を受けることも行われます。そのため入学前に、個別の面接やヒヤリングが行われます。
入学前に子どもを学校に連れて行き、一定時間先生たちと一緒に過ごします。保護者として学校に正確に伝えなければならいことは、必要な医療的ケアの内容やアレルギーの有無、食事の制限や摂食のレベル、排泄の状況、コミュニケーションや理解能力の状況などになります。学校としては事故を恐れます。正しく子どものことが伝わるように、保護者も十分な準備をして、入学前の個別面談に臨むことが求められます。
入学時までに準備しておくものについて、学校から説明があります。基本的な持ち物やそれに名前を書いておくこと、などの話もありますが、用意する書類書面や必要な資料など、膨大な提出物の説明があり、期限までの提出を求められます。
普通校でも多くの提出物がありますが、特別支援学校の提出物はボリュームが違います。例えば屋内プールがあり、体育の授業でプール運動を行っている学校だと、プール運動を許可する医師の診断書の提出が求められます。膨大な提出物の要請は、入学後も続きます。
多くの特別支援学校では、スクールバスによるバス通学が実施されています。入学前にバス通学を希望した場合、入学の直前になって、学校からバスの乗降場所と行き帰りのバスの時間が連絡されます。
このバス乗降場所、すなわち自宅近くのバス停がどこになるかは、バスの大きさと道路の幅、バスが停車できるか、他の通学児童の数と位置の関係などによります。自宅から遠いバス停を指定されることもあります。通常は入学式の帰りから、バス通学が開始されます。
入学式当日です。入学式の朝はバス通学がまだないので、保護者が自力で連れて行きます。
特別支援学校は、普通校よりも入学者数が少ないケースが多いので、一人ひとりに時間をかけた入学式を行ってくれます。
主担当の先生とも顔合わせをします。障がいのある子の学校生活では、家庭と教師との連携がとても重要です。先生としても、学校活動に協力的な保護者であることを祈っているそうです。
初日から帰りはスクールバスを利用する場合、入学式が終わると、保護者はバスが着く前に急いで帰宅します。
家庭と教師との連携という面で、特別支援学校で入学直後から行われる特徴的な活動を2つご紹介します。
1点目は、日常的な電話連絡をはじめ、保護者会、個人面談、家庭訪問などが頻繁に行われることです。特に小学1年生の最初は重要です。直接コミュニケーションを十分に行い、障がいのある子の学校生活をキックオフします。
2点目は、毎日の連絡帳の記入です。家庭での様子、学校での様子、体温や食事、排泄の実績などを記入する連絡帳を、保護者と教師がそれぞれ毎日書き、やり取りをします。これは特別支援学校を卒業するまで継続します。とても大変ですが、その子の成長の記録としても貴重な資料になります。
学校側でその子の状況が把握できると、年度の個別教育計画が策定され、保護者にも説明があります。その内容が了解であれば、保護者がサインします。そして、特別支援学校での教育が本格的に始まっていきます。
その児童により、学校によりケースは様々ですが、障がいのある子の小学校生活はこのようにして始まります。
(本稿は2019年11月に執筆しました)