バリアフリーとはいえませんが、明治神宮は車椅子で参拝できます。2019年に開館した「明治神宮ミュージアム」を中心に、現地のバリアフリー状況を紹介します。
参道のバリアフリー状況です。明治神宮は原宿駅方面からの「南参道」、代々木駅方面からの「北参道」、参宮橋駅方面からの「西参道」の3つのルートがあります。
車利用で参拝する場合は、現時点では代々木口からだけが通行可能です。守衛所で入苑証の交付をうけて駐車場へ進みます。
明治神宮の主な参道は、中央部が車椅子で通行が難しい砂利路面で、道の両端が舗装路面になっています。
端の舗装路を通行出来れば、車椅子での移動は可能です。
ところが端の舗装路は、樹木による中断、あるいはイベント設備の設置などにより、所々で途絶えます。
部分的には、車椅子で砂利路面を乗り越える区間があります。
明治神宮ミュージアムのバリアフリー状況です。場所は原宿駅側です。
取材した時点では、参道からミュージアムの敷地に入る箇所に多少段差があります。
段差解消が簡単にできる箇所なので、早期に改修されるかもしれません。
エントランスから館内にかけて、フラットでスペースに余裕があり、車椅子での利用に問題はありません。
明治神宮ミュージアムは、有料の施設ですが障がい者減免制度があり、障害者手帳の提示で本人の観覧料が無料に減免されます。バリアフリートイレは1Fにあります。一般的なサイズの個室で、ウォシュレット付き便器、オストメイト装置、折り畳み式のユニバーサルベッドが備えられています。
展示室は1Fと2Fでエレベーターがあります。展示室内も車椅子で見やすいフラット構造です。展示品は車椅子から鑑賞できます。
2Fの最後に、明治神宮の一年を映像で紹介するコーナーがあります。車椅子スペースが無い、独立椅子席が並べられているミニシアターで、車椅子では端か前か、空いているスペースから映像をみることになります。
旧「宝物展示室」があった施設は「フォレストテラス明治神宮」として営業しています。
御社殿のバリアフリー状況です。社殿の周辺はバリアフリー改修が進みました。
段差箇所には必ずスロープがあります。
拝殿へもスロープルートを通り、車椅子で進むことができます。
ただしお正月など、大混雑するときは車椅子での参拝は苦戦します。
明治神宮の森の歴史を紹介します。明治神宮の森は、椎や樫などの常緑広葉樹が中心です。楓や銀杏などは多くありません。
なぜ明治神宮は常緑広葉樹の森なのか。それは明治神宮が創建された際に、意図的に椎や樫が植栽されたからです。
明治天皇、続いて皇后がご逝去され、国民的な機運で創建された明治神宮。当時この地はただの荒れ地で、木も生えていなかったそうです。
荒れ地にどうやって明治の森を創るか。ドイツ留学で林学を学び帰国した教授を中心に、3人の専門家による検討が行われ、伊勢や日光のような杉は東京では育たない、100年の森を創るには常緑広葉樹しかない、と結論づけました。
これを受けて全国から10万本の献木があり、運搬や植樹の労働力を提供する青年団が全国で発足し、約11万人が労役を提供しました。
創建当時に植樹された樹木は365種。現在まで生き続けている樹木が234種。明治神宮は2020年に創建100年を迎えます。
参道は十分なバリアフリー水準ではありませんが、明治神宮ミュージアムはバリアフリー施設です。明治神宮は車椅子で参拝ができます。
明治天皇と皇后の御事績を描いた80枚の壁画が展示されている「明治神宮外苑 聖徳記念絵画館」を別稿で掲載しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2019年11月の取材に基づいています)