名勝「兼六園」は、車椅子での散策には限界があります。推奨されているバリアフリールートは、ごく一部の限定的なルートのみです。車椅子からみた兼六園の状況を紹介します。
身障者用駐車場として「県立伝統産業工芸館」前の駐車場が推奨されています。来館者用の無料駐車スペースがあり、身障者用区画が1台分用意されています。ここが空いていれば自由に利用できます。伝統産業工芸館へはスロープで入館します。1Fにバリアフリートイレがあります。
タクシーで来園する場合も、伝統産業工芸館での乗降をお薦めします。
伝統産業工芸館内を進むと、お土産コーナーのレジ兼総合案内所があるので、駐車している旨を申告します。特別な駐車手続きはありません。
総合案内所で兼六園の入園券を発券しています。入園料は障がい者減免制度があり、障害者手帳等の提示で本人と介助者1名が無料に減免されます。一般入園者もここで入園券を購入できますが、いわゆるプラスワンチケットは伝統産業工芸館では購入できません。プラスワンチケットを求めたい方は、小立野口の入園券売り場にまわって下さい。
伝統産業工芸館の奥から、そのままバリアフリーに兼六園に入園できます。
兼六園が推奨している車椅子ルートは、伝統産業工芸館の奥から園内に入る「小立野口」から、園内最大の池である「霞ヶ池」を一周して戻ってくるルートです。このコースでおおよそ兼六園の三分の一を巡ります。
推奨ルートといっても、未舗装路や小さな段差はあります。決定的な段差や急坂、深い砂利道がないルートで、一般的な車椅子利用者なら通行可能です。見どころの多いルートなので、ここだけでも兼六園を訪れる価値はあります。
次に推奨ルート以外のバリア状況を紹介します。
金沢城につながる石川橋方面の状況です。ある程度のオフロードが通行できる人なら、瓢池から蓮池門を抜け、石川橋を渡り金沢城へ抜けることはできます。
霞ヶ池から瓢池に抜けるルートは下りのオフロードです。途中の翠滝方面に向かうルートは段差があり通行不能ですが、真っすぐ進めばその先はほぼ平坦な長い砂利路面で、石川橋までたどり着けば舗装路です。それなりの体力が必要なので、元気な介助者と同行することをお薦めします。
21世紀美術館側の「真弓坂」ルートは、一般的な車椅子利用者は通行不能です。急な上り坂で、やや深い砂利道です。ただし決定的な段差箇所はありません。単純な力勝負です。真弓坂を通行できる車椅子利用者は、おそらくいます。
梅林などがある随身坂周辺は、散策ルートの途中に数段の段差や飛び石、車椅子では通行不能な橋などがある難所です。傾斜はそれほど強くはなく、砂利もさほど深くはありませんが、ルート選択が難しい。慎重にルートを見極めれば、車椅子で散策できないことはありません。梅林付近に立ち入らずに、メインルートだけを通行すれば迷いません。
推奨ルートを外れると、以上のような状況なので、一般的な車椅子利用者は推奨ルートだけの散策をお薦めします。そして伝統産業工芸館へ戻ります。
次に「県立伝統産業工芸館」の施設概要を紹介します。
金沢市のみならず石川県全域の工芸品に出会える施設です。古い建物ですが改修されてバリアフリー、1Fは無料のショップ、2Fは有料の工芸館ですが障がい者減免制度があり、本人と介助者1名の観覧料が無料に減免されます。
金沢といえば金箔の金沢箔。焼物なら九谷焼や珠洲焼。金の仏壇は七尾仏壇、美川仏壇も有名。加賀といえば友禅染。輪島といえば輪島塗1Fでこれらの市販品が販売されています。逸品が展示されているのが2Fで、2Fの展示品も購入希望の方は申し付け下さい、と案内されています。
2Fには4つの展示室があります。大きな2つの部屋が常設展、小さな2つの部屋が企画展です。常設展には伝統工芸品の逸品が展示されています。いずれも車椅子で見やすい展示で、伝統工芸品をバリアフリーに鑑賞できます。
兼六園の車椅子利用者の散策拠点は、伝統産業工芸館がお薦めです。そこから兼六園へ入り、推奨ルートを見学し、そして伝統産業工芸館で逸品を鑑賞します。車椅子で観光できるバリアフリーコースです。
隣接する「金沢城公園」の詳しいバリアフリー情報を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2017年5月の取材に基づいています)