昭和43年に開園した皇居東御苑は、散策路やトイレなどのバリアフリー改修が進み、車椅子で楽しめる公園になっています。ただし公園を東西に分けてみた場合、「江戸城本丸跡」などがある西側が高台になり、「二の丸庭園」などがある東側と高低差があります。この坂道が車椅子での利用上の注意点です。
「大手門」から園内に入り、園内を概ね時計回りで散策し、「平川門」から退園する順で、皇居東御苑全体のバリアフリー状況を紹介します。
大手門周辺のバリアフリー状況です。内堀通りからフラットな舗装路で「大手門」に向かいます。
門の周辺は見どころが多い観光スポットです。車椅子で問題なく見学できます。
手荷物検査と入園チェックポイントを通過して、園内に入ります。
園内を進むと「三の丸尚蔵館」があります。三の丸尚蔵館は建て直され、2023年秋に一部開館しました。詳しくは別稿「一部開館した皇居東御苑 三の丸尚蔵館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」をご参照ください。
その先にある「同心番所」は、車椅子で問題なく見学できます。
次に左折した先にある「百人番所」も、フラットな舗装路面から車椅子で見学できます。
その先の「大番所」付近から、坂道が始まります。傾斜が苦手な車椅子利用者は、無理のない範囲で見学してください。
富士見櫓へのルートです。「大番所」の先からは、傾斜のある上り坂になります。
一般的な車椅子利用者と元気な介助者で、なんとか通行できるレベルの急な坂道です。無理な方は「大番所」付近から引き返してください。
坂道を越えれば、本丸エリアに出ます。
このエリアの南端に建つのが「富士見櫓」。櫓の手前まで散策路が整備されています。
富士見櫓の近くは、巨木が林立します。一見の価値がある林です。
本丸エリアは広々とした空間が広がります。
そこにある車椅子で利用できる「本丸休憩所」に隣接して、「本丸休憩所増築棟」が建てられ、2020年9月末から「天守復元模型」の展示が始まりました。
観覧は無料。出入口から内部にかけてフラットな構造で、車椅子で観覧できます。棟内は模型を一周する見学コースです。資料が多く残り、確かな時代考証ができる寛永期の天守を、宮内庁が約2年がかりで復元しました。高さは約2mです。
「天守復元模型」の詳細は、別稿「江戸城天守復元模型 皇居東御苑車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
富士見多聞のバリアフリー状況です。公開当初、内部は土足禁止でしたが、「富士見多聞」は現在では靴を脱がずに内部見学ができます。ただし車椅子での見学は、簡単ではありません。
「富士見多聞」へは本丸エリアから坂道を上がります。車椅子で通行できる可能性がある坂道は、南側の「松の廊下跡」方面からの道です。とはいえ、それほど楽な坂道ではありません。無理のない限りで通行して下さい。
東側と北側からのアクセス路は、傾斜がきつい、あるいは段差があるので、車椅子での通行はお薦め出来ません。
「富士見多聞」内への入口は、小さな段差がありますが、一般的な車椅子利用者なら通過可能です。
内部はフラットな通路が整備されました。車椅子で問題なく見学できます。
窓越しには「乾通り」などを眺めることが出来ます。
ただし江戸時代の窓です。
出口は段差が大きく、かつ途中に滑り止め段差がある急なスロープです。車椅子では慎重に移動する必要があります。
石室周辺のバリアフリー状況です。「富士見多聞」から本丸エリアの広場周辺に戻れば、ほぼフラットな散策路が続きます。その先にある「石室」は、フラットな舗装路面から車椅子で見学できます。
天守台と周辺のバリアフリー状況です。「天守台」はスロープ路で展望コーナーまで上がることができます。
このスロープの傾斜は急です。車椅子での坂登りは簡単ではありません。無理はしないことをお薦めします。
天守台スロープ以外は、車椅子で問題なく移動できます。「桃華楽堂」は、フラットな路面から、正面を車椅子で見学できます。
「桃華楽堂」の横に建つ「楽部庁舎」と、「二の丸雑木林」方面をつなぐ「汐見坂」は、急坂のため車椅子通行不可です。
車椅子通行不可の標識が掲示されています。
「汐見坂」は「楽部庁舎」の横から見下ろすか、「二の丸雑木林」の横から見上げてください。車椅子での「汐見坂」通行は危険です。
「天守台」の北側が「北桔橋門(きたはねばしもん)」です。この間は緩やかな傾斜路面で、車椅子の移動に問題はありません。
本丸エリアを車椅子で見学する場合は、「北桔橋門」から出入りすると、急坂を避けられます。ただし門につながる「代官町通り」は坂道です。
この先「書陵部庁舎」まで、ほぼフラットな舗装路が続きます。
「書陵部庁舎」を過ぎると「梅林坂」があります。
この坂はそれなりの傾斜があり、車椅子での通行は楽ではありません。元気な介助者が必要です。
坂を下りると、フラットな二の丸エリアに出ます。
二の丸雑木林から二の丸庭園のバリアフリー状況です。メイン通路を通れば、「二の丸雑木林」から「二の丸庭園」にかけて、車椅子で問題なく通行できます。
「諏訪の茶屋」は車椅子で近づいて見学できます。
「二の丸雑木林」の中を貫く未舗装路は、車椅子ではつらいデコボコ路です。そして「二の丸庭園」の池の裏側、滝が流れるエリアは、段差やデコボコ、飛び石などがあり、車椅子では通行不能です。
池の裏側を避けてメインルートで庭園を散策して下さい。
菖蒲園から藤棚にかけて、車椅子で通行可能です。
ただし菖蒲園散策路の一部は、未舗装路面です。車椅子では舗装路だけを選び、散策して下さい。
菖蒲園の詳しい情報は別稿「皇居東御苑 バリアフリー菖蒲園 車椅子散策ガイド」を参照してください。
「二の丸休憩所」は車椅子で利用できるフラットな構造です。
平川門周辺のバリアフリー状況です。二の丸エリアから「平川門」にかけて、傾斜路面になりますが、それほど急ではありません。車椅子での移動は十分可能です。
「平川門」は観光ポイントです。車椅子で問題なく見学できます。
門の先には内堀に架かる木製の橋があります。太鼓橋風ですが、傾斜は緩いので車椅子で通行できます。
「平川門」から「内堀通り」に出て、そのまま大手町方面へ進む先に、東京メトロ「竹橋駅」へつながるエレベーターが出来ました。
皇居東御苑は全域を見学すると坂道を通ります。坂道が苦手な人は「大手門」と「平川門」から三ノ丸及び二の丸エリアを見学、「北桔橋門」から本丸エリアを見学、と分けて散策すると急な坂道を避けることができます。
(本稿は2024年2月に加筆しました)