2018年に、国の機関および地方公共団体の機関の多くで、障害者雇用率を不正に計上していることが明るみになりました。
その対策として、2019年に「障害者雇用促進法」が一部改正され、すべての公務機関で「障害者活躍推進計画」を策定し、公表することが義務付けられました。
改正法の施行は2020年4月1日。すでに多くの市区町村役場などが、策定した計画を公表しています。
行政機関などすべての公務機関で法律により策定が義務付けられた「障害者活躍推進計画」とはどのような内容なのか。ポイントを紹介します。
(1)計画期間
単年ではなく、2年以上5年以下程度の中長期計画が策定されます。ただし取り組みの進捗状況は、年に一回以上公表することが求められています。
(2)目標
現在公表されている事例を参照すると、多くの機関は、現状の障害者雇用数、雇用目標、定着目標を記載しています。
厚生労働省の作成指導要綱では、具体的で検証可能な数値目標を策定することが求められています。
多くの機関で採用されている目標のパターンは以下です。
・毎年6月1日に法定雇用率を上回る
・不本意な離職者を極力生じさせない
作成指導要綱では「満足度又はワーク・エンゲージメントに関するデータを収集し、原因、課題等 を整理及び分析するとともに、その目標(満足の割合等)を設定することが望ましい。」とされていますが、現時点ではそのような目標を掲載した事例は発見できていません。
(3)障害者の活躍を推進する体制整備
組織面や人材面での対策が記載されます。
責任者の指名、会議体の設置、定期的な研修の実施、などが記載されます。
(4)障害者の活躍の基本となる職務の選定・創出
作成指導要綱では「職務整理表の作成・活用、職務創出のための組織内アンケートの実施その他の各機関の実情に適した方法を通じて、職務の選定(既存業務の切出し等)及び創出(複数の作業の組み合わせによる新規業務の創出等)を着実に行う」「障害者一人ひとりの特性・能力等を把握し、可能な限り障害者本人の希望も踏まえた上で、本人に合った業務の割振り又は職場の配置を行う等、障害者と業務の適切なマッチング」「配置後においても、障害者本人の職務遂行状況や習熟状況等に応じ、継続的に職務の選定・創出に取り組む」ことなどを計画するように指示しています。
(5)障害者の活躍を推進するための環境整備・人事管理
この項は①職務環境、②募集・採用、③働き方、④キャリア形成、⑤その他の人事管理と、5つの計画テーマが設定されています。
「障害特性に配慮した作業施設・福利厚生施設等の整備(多目的トイレ、スロープ、エ レベーター、休憩室等)」する。
「障害特性に配慮した就労支援機器(音声読み上げソフト、筆談支援機器等)」を導入する。
「作業マニュアルのカスタマイズ化やチェックリストの作成、作業手順の簡素化や見直し」を行う。
などが作成指導要綱では①職務環境の計画事例として紹介されています。
また「障害特性に配慮した募集・採用の実施」「多様な任用形態の確保に向けた取組(ステップアップの枠組み等)」「知的障害者、精神障害者及び重度障害者の積極的な採用に努め、障害特性に 配慮した選考方法や職務の選定を工夫」「テレワーク勤務のための環境整備やフレックスタイム制の活用促進も重要」などのアドバイスがあります。
(6)その他 優先調達推進法に基づく障害者就労施設等への発注等
直接的な障害者雇用対策ではありませんが、障害者就労施設等への発注を積極的に行う計画を示した上で、「民間事業主における障害者の活躍を促進するため、法定雇用率以上の対象障害者を雇用していること等を国及び地方公共団体の公共調達の競争参加資格に含めることが望ましい。」としています。
2020年から策定が義務付けらえた「障害者活躍推進計画」の基本構成は以上です。多くの公務機関では、これに独自の政策を加えた計画を策定し、公表が始まっています。
(本稿は2020年6月に執筆しました)