日本の障がい者政策の理念を定めた、国の障害者福祉政策の羅針盤「障害者基本法」。
「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現」する「共生社会」の実現が目的であることはよく知られています。
他には何が定められているのか。「障害者基本法」の主な内容を紹介します。
〇3つの基本原則
障害者基本法は、障害者福祉政策の羅針盤として、以下の3つ理念を目指しています。
・地域社会で共に生きる
障がいのある人もない人も、同じく生きる権利を保障します。ただし、法律の文面で「可能な限り」という留保とも受け止められる表現が使用されています。障がい者側から、「可能な限り」という表現を変更すべき、という意見が出されています。
・障がい者への差別をなくす
社会的障壁に対して合理的配慮をしないことも差別である、と定義されています。
・世界の人と協力し合う
共生社会の実現に向けて、国際的に協調して取り組むことが、日本の障害者福祉の理念です。
〇国民の責任
3つの基本原則を進めるために、障害者基本法では、国民に以下の責任が法的に定められています。
・基本原則を学び、理解し、守る
そして、それを学ぶための期間が「障害者週間」として、障害者基本法で定められています。
毎年12月3日から9日までの「障害者週間」に、3つの基本原則を学び、理解し、そして常時それを守るのが国民の責任です。
〇国・行政の責任
障害者基本法は行政府の責任を2つ定めています。
・基本原則を進める法律や制度をつくること
・その実行のために必要な予算を用意すること
とてもシンプルで分かりやすい責任です。
〇つくるべき法律と制度の内容
では、どのような分野の法律、制度、そして予算が必要なのか。障害者基本法は以下を規定しています。
・医療と介護
・障がい者のための年金
・学校、教育
・障がい児への特別な配慮(現行法では、女性障がい者への特別な規定はありません)
・就労、就業
・住宅の確保
・バリアフリー化(場所と情報)
・相談、支援、協力体制
・経済的負担の軽減
・文化活動への支援
・防災と防犯
・消費者保護
・選挙権の行使
・司法手続きにおける配慮
・国際協力
・傷病を予防する研究や制度の整備
この法律に基づいて策定されるのが「障害者基本計画」などの実行計画です。障害者基本法では「障害者基本計画」の策定から報告まで、国や行政機関の行為を法的に定めています。
〇立案するときに障がい者の意見を聞く
そして国や都道府県が障がい者福祉を検討する際には、障がい者の意見を聞くことを義務付けています。
障害者基本法は、以下の2つのレベルで、障がい者を交えた検討を行うことを定めています。
・障害者政策員会の設置(国策レベル)
・地方審議会(都道府県レベル)
障害者基本法は、共生社会の実現のために、3つの基本原則を定め、国民と行政府の責任を明らかにし、特に行政府が行うことと、その方法を定めている法律です。
(本稿は2020年6月に執筆しました)