特別支援学校では、児童生徒の様子を家庭と学校で毎日やりとりをする「連絡帳」があります。
そして「連絡帳」とは別に、夏休み、冬休み、春休みの期間は、その期間専用の記録をする冊子が配られます。起床時刻、睡眠時間や平熱などの生活健康面の記録、お出かけや旅行などの遊びの記録などが主な記載内容です。
重度の障がいのある児童生徒の場合、自分では書けませんので、保護者が記入していきます。それほどボリュームがある冊子ではありません。サッと書けるくらいのものをご想像ください。
この記録の目的は、お休み期間中の児童生徒の健康状態を、簡易的ではありますが家庭と学校の双方で把握することと、始業式のあと、どんなお休みを過ごしたのか、クラスやグループで校内発表をするネタにすることです。したがって、お休み期間のお出かけや旅行などの遊びの記録は、ネタとして重要です。
重度の障がいがある児童生徒のご家庭も、長いお休みの期間、ずっと家にいるだけではありません。家族で障がいの状況に応じた企画を考えてお出かけをします。そして写真や動画を撮る。普通の家庭と同じです。むしろ、自分一人ではどこにも行けない児童生徒なので、普通の家庭よりも、遊びの企画に熱心な家庭が多いのかもしれません。
楽しい思い出が出来たら、始業式の前に家庭でネタの編集をします。発語やコミュニケーションに課題のある児童生徒の場合、発表者本人からの説明は期待できません。記録帳のネタを先生がみて、本人に代わって発表します。
したがって、先生に良くわかるように編集します。どこに行って、何をして、どんなことが楽しかったのか、写真やパンフレットなどがあると、より伝わりやすくなります。凝りだすと結構手間のかかる編集作業になりますが、熱心にネタの編集に取り組むご家庭が多いようです。始業式の日に、このお休み期間中の記録帳を持たせます。
こんな発表をして、どうだった、という学校での様子は、毎日の連絡帳に先生が記載して、家庭に様子がフィードバックされます。
そして後日、記録帳は家庭に返却されます。毎日の連絡帳をずっと保管してあるご家庭が多いようですが、お休み期間中の記録帳も、一般に各家庭で、その後長期保管されます。あの年はここに行った、この年はこんなことをした。記録帳は家族の思い出の記録になっていきます。
デジタル時代になって、写真をプリントアウトすることが減っていますが、この記録帳はすべてペーパーなので、昔ながらの楽しみ方が出来ます。
単に「ここに行った」だけではなく、こんなことをして、どうだった、とまで書いてあるので、あの頃はそういうことを家族で考えていたのか、と思い出に残ります。
ただ重度の身体障がいのある人の場合、残酷なことですが、成長とともに、出来たことが出来なくなることがあります。昔の記録帳をみると、あの頃はこんなことも出来ていた、という寂しい思いをすることもあります。
一生懸命に生活をした記録です。仮に学校から冊子を渡されて提出を求められないとしたら、おそらくこういう記録を家族も残さないでしょう。重度の障がいのある家族がいる家庭には、このような記録の財産が眠っています。
(本稿は2019年11月に執筆しました)