2016年に施行された「障害者差別解消法」には、2013年国会で可決する際に12の附帯決議事項があります。また同法で策定が規定され、2015年に閣議決定した、政府の同法の推進に関する「基本方針」があります。
附帯決議事項と基本方針は当然共通項が多く、内容の多くは重複します。その中に、障害者差別解消法施行後に予想される3つの懸念があります。
国会及び政府が心配していることは何か。それはすなわち障害者差別解消法のウィークポイントであり、日本における障がい者との共生社会の弱点です。ポイントを絞って簡潔に紹介します。
〇不当な差別や合理的配慮が抽象的で分からない
最大の懸念事項はこれです。不当な差別的な取り扱い、合理的配慮の不提供とは何なのか。法律での規定だけでは分からないという懸念です。
そのため、行政機関の長や主務大臣による具体的な基準の作成、内閣府による事例の収集と公開などが基本方針となっています。
また障がい者側からの要求により、中小事業者が経済的に過度な負担を強いられることも懸念されています。
そのため、施行から3年を経ずとも、問題があれば法律の見直しを検討することが附帯決議されています。
〇相談窓口が機能しない、たらい回しになる
国や地方公共団体の窓口で、障がい者からの相談対応や紛争解決ができるか、という懸念です。その充実のために、附帯決議では「財政措置」にも言及しています。
基本方針では、各行政府で窓口を明確にして、職員の専門性を高めて、障がい者の個別の状況に応じた的確な対応をする。そして内閣府で、相談や紛争の事例を収集整理して、情報を提供する、としています。
〇障がい者施設と地域住民とのトラブルがおこる
障害者差別解消法では「グループホームやケアホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めない」としています。
一方で附帯決議と基本方針では「国及び地方公共団体は・・・・同意を求めないことを徹底するとともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。」としています。
障がい者施設に設置について、住民に同意は求めないが理解は得る、のが行政の役割です。
国会や政府からみると、国民の障害者差別に対する意識はそのレベルだと懸念されています。
現在、障害者差別解消法の現状と改正について、政府レベルでは「障害者政策委員会」で議論が行われています。
(本稿は2020年6月に執筆しました)