障害者権利条約の実施状況を監視する機関「障害者政策委員会」で、2016年度から2021年度にいたる5年間を期間とした「第3次障害者基本計画」の進捗状況や今後の課題について審議が行われています。
全体として日本の現状はまだまだ課題が多く、数多くのテーマが「以下の対応を求める」、「以下の点を懸念する」と評価されています。
その中で12の課題が「顕著に取組が進んでいる」と評価する方向で議論が進んでいます。
この5年間でどのような課題の取り組みが進捗したのか、令和4年3月24日に開催された「第63回障害者政策委員会」の資料から、分かりやすく編集して紹介します。
なお本稿では原文に基づいて「障害」という漢字表記を使用いたします。
1.合理的配慮の義務化
2021年5月に、事業者に対し合理的配慮の提供を義務付けることを主な内容とする法律が成立し、同年6月に公布された。
- 障害のある女子への支援
性犯罪、性暴力被害者のためのワンストップ支援センターが2018年10 月に全都道府県に設置された。
3.バリアフリーの推進
2018年には公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組の推進を規定するバリアフリー法の改正を行い、2020年には公立小中学校等を特別特定建築物としてバリアフリー基準適合義務の対象に追加するバリアフリー法の改正を実施した。一定規模以上のホテルにおけるバリアフリー客室の1%以上の整備義務化も行われた。
4.医療的ケア児への支援
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が2021 年6月に公布、同年に施行され、医療的ケア児支援センターの設置及び保育所及び学校における医療的ケアの支援が規定された。
5.精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築
2017 年度より、都道府県等自治体に対する補助事業において、ピアサポートの活用やアウトリーチ支援等が実施され、都道府県等自治体の取組を支援する委託事業が実施されている。
6.聴覚障害者への支援
聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律が、2020 年に公布、同年12 月に施行され、聴覚障害者による電話の利用の円滑化を図るため、電話による意思疎通を手話等により仲介する電話リレーサービスの提供を行う事業者に、交付金を交付するための制度が創設された。
7.特別支援教育の強化
特別支援教育支援員の外部人材の配置、通級による指導の制度化や教員定数の基礎定数化等、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対する支援が進んだ。
8.児童生徒への個別支援強化
小学校学習指導要領の改訂により、通級による指導を受ける児童生徒に個別の指導計画、及び個別の教育支援計画の作成が義務付けられ、通級を利用しない障害のある児童生徒に対しても個別の指導計画の作成を推奨した。
9.障害のある学生への合理的配慮の提供
障害者差別解消法の施行により、高等教育機関において障害のある学生への合理的配慮の提供が進展した。
10.働く障害者への支援
2016 年4月から事業主の障害者に対する差別禁止及び合理的配慮の提供が義務付けられ、「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」が策定され、紛争解決手続が整備された。
11.精神障害者の雇用義務
2018 年4月から精神障害者が雇用義務の対象に追加され、民間企業の実雇用率及び雇用障害者数が増加している。
12.文化芸術活動の推進
平成 30 年に障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が成立し、これを受けて障害者による文化芸術活動の推進に関する施策が計画的に推進された。
障害者政策委員会の審議は継続しています。次回の委員会で、見解の最終案が検討される予定です。
《生きるちから舎ニュース 2022年3月25日付》