東京都港区麻布の善福寺は、都内では浅草寺に次ぐ古い歴史があると伝承される名刹です。境内へは坂道を上りますが、車椅子でのお参りは可能です。現地のバリアフリー状況を詳しく紹介します。
なお本稿は2019年9月の取材に基づいています。
○歴史と見どころ
創建者は弘法大師。親鸞が訪れたことを契機に浄土真宗に変わった、と伝承されています。
織田信長に対抗した石山本願寺に、援軍の僧兵をおくった記録が残っています。
幕末には、ここ善福寺が初代米国大使公使館になりました。ハリス公司以下、米国スタッフの居住地はここでした。
本堂のバックにあるのは「元麻布ヒルズ」。タワー棟は29階建てです。
麻布山善福寺には、弘法大師と親鸞に関わる史跡、そして米国大使公使館の史跡、そしてタワーマンションをバックにした現代の風景があります。
○アクセスの状況
麻布十番駅から徒歩圏内です。
境内の駐車スペースは信徒専用です。参道の入口にスペースに余裕があるコインパーキングがあります。
麻布十番方面からアクセスした場合、境内の入口付近まではアップダウンはほとんどありません。
境内に向かう最後の道が傾斜の強い上り坂です。車椅子では力が入ります。元気な介助者がいれば、なんとか上ることが出来るレベルの坂道です。
○弘法大師の「柳の井戸」
最初の見どころは、弘法大師が杖をついたら清水が湧きだしたという井戸です。関東大震災や東京大空襲の際には、多くの都民の飲料になったと伝えられています。
現在でも少量ですが湧水が流れています。
そして井戸の横には柳があります。
「柳の井戸」は坂道の手前の参道にあり、車椅子から鑑賞出来ます。
○親鸞の「逆さ銀杏」
境内の「逆さ銀杏」は推定樹齢750年で、都内最大級の銀杏です。
この銀杏は、親鸞が土に刺した杖から生まれたという伝承で、枝が下に伸びて逆さに見えないこともない巨木です。
また墓地エリア入口には、大きな親鸞の立像が建てられています。像は段差の上で車椅子では行けませんが、境内からでも像を見ることは出来ます。
○初代米国大使公使館の地
境内には米国大使公使館を記念する碑があります。
当時は攘夷の熱風が吹き荒れた時代。攘夷派の襲撃を受け、庫裏などが焼失しました。
ハリス公司以下は、寺の僧の手配で難を逃れたと伝えられます。
○境内のバリアフリー状況
「逆さ銀杏」と米国大使公使館を記念する碑には、車椅子で近付くことができます。
境内には福沢諭吉夫妻のお墓、越路吹雪さんの歌碑がありますが、このエリアは段差があり、車椅子で近付くのは苦戦します。
境内の公衆トイレには障害者用トイレがあります。
○杉並区の善福寺との関係
善福寺といえば、東京都杉並区に同名の寺院があり、地名もあります。
杉並の善福寺は創建からの歴史が伝承されておらず、「麻布山 善福寺」との関係を示す確たる証拠はないそうです。
現在では幼稚園と葬儀場が目立ちますが、麻布山善福寺は歴史と伝承がある古寺です。坂道を上れれば、史跡が残る境内を車椅子でお参りできます。