奈良県の国営飛鳥歴史公園は5地区60haの広大な公園です。車椅子で利用できる3施設「キトラ古墳壁画体験館四神の館」「国営飛鳥歴史公園館」「高松塚壁画館」を中心に、現地のバリアフリー状況を紹介します。
「キトラ古墳壁画体験館四神の館」
キトラ古墳壁画の保存とその紹介を行う施設が「キトラ古墳壁画体験館四神の館」です。文化庁の施設で2016年の開館。観覧は無料。全館バリアフリー仕様です。
アクセスは車が便利です。施設に近い第一駐車場はバス6台、普通車20台を収容します。ここに身障者用駐車スペースが2台分あります。
駐車場から施設へは、緩やかな下り坂を進みます。傾斜は緩いので、車椅子での移動に問題ありませんが、駐車場から施設までの約70mは屋根無しなので、雨の日は濡れます。
施設の周囲は、明日香村の風景にマッチした公園として整備されています。施設の入口手前にはミュージアムショップがあり、車椅子で利用できます。
入口は建物のB1になります。B1がキトラ古墳を紹介する「展示室」。1Fが壁画を保存している「保存管理施設」です。
B1の展示室は通年開館で休館日があります。予約不要で無料で観覧できる施設です。先端のハイテクを導入したバリアフリーな展示です。B1にバリアフリートイレがあります。
壁画特別公開も車椅子で参加できます。保存管理されているキトラ古墳壁画の特別公開に参加しました。事前予約が必要です。B1から1F保存室へは健常者は階段で上がります。車椅子利用者はエレベーターに誘導されます。
特別公開の見学制限時間は10分。1回に10名程度が展示室に案内されます。展示室内はバリアフリー、車椅子での壁画鑑賞は可能です。
「国営飛鳥歴史公園館」
国営飛鳥歴史公園館は、飛鳥歴史公園の高松塚周辺地区にある入館無料の資料館です。1990年代の施設ですが、スロープ対応、バリアフリートイレの設置など、最低限のバリアフリー要件は満たしています。無料駐車場があり、身障者用駐車区画が2台分用意されています。飛鳥の歴史、見どころを紹介する資料館。飛鳥の知識を深めることができます。
国営飛鳥歴史公園館の展示は、明日香村周辺のジオラマ、有名スポットの写真パネル、知りたい情報を検索できるタッチパネルなどです。タッチパネルを操作すると、飛鳥の四季の写真を楽しむことも出来ます。オーソドックスな資料館をイメージして間違いありません。奇をてらったところのない、真面目な資料館です。
「高松塚壁画館」
飛鳥美人の復元画がある小さな資料館です。高松塚壁画館は昭和52年に開館した施設で、想像するよりも古くて小さな資料館です。広さは20坪ほど。入口から見渡すと、全てが見えます。
ワンフロアで入口に段差はありません。館内はフラットです。まだバリアフリーの概念が無い時代に誕生した施設ですが、車椅子で利用できます。有料の施設ですが入館料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。
アクセスは車が便利です。「国営飛鳥歴史公園館」の無料駐車場を利用します。そこから歴史公園館の横に下り、車道の下を通る地下道で高松塚地区へ進んで下さい。車道の横断は危険とされていますし、バリアフリールートが確保されていません。地下道ルートの利用をお薦めします。駐車場から高松塚壁画館までは、スロープ迂回路の距離も含めて500mほど、10分弱で着きます。
明日香村周辺の観光スポットを車椅子で巡るのは、簡単ではありません。有名スポットで決定的なバリアがあるのは「石舞台古墳」と「甘樫丘」。段差があるので車椅子では行けません。また「鬼の雪隠」「鬼の俎板」など石造物へのルートは、特別なバリアフリー面での整備はありません。
車椅子での飛鳥歴史公園観光は、「キトラ古墳壁画体験館四神の館」「国営飛鳥歴史公園館」「高松塚壁画館」、そして別稿で紹介する「県立万葉文化館」などの施設利用を中心に計画することをお薦めします。
(本稿は2018年6月の取材に基づいています)