東京都港区、カレッタ汐留内にある「アドミュージアム東京」は、電通第四代社長の遺志を継承する目的で設立された「吉田秀雄記念事業財団」が運営する、日本で唯一の広告ミュージアムです。
原則として日曜日と月曜日が休館です。入場は無料で現時点ではコロナ対策として事前予約制が導入されています。館内にトイレはありません。カレッタ汐留のバリアフリートイレの利用になります。
カレッタ汐留のB1とB2の2フロアにある施設で、常設展と企画展の会場はB2です。B1は所蔵する広告作品や資料が閲覧できるライブラリーです。ミュージアム内にB2とB1を結ぶ階段があります。車椅子ではカレッタ汐留のエレベーターを利用します。
2017年に全面リニューアルされました。B2の展示物はデジタル系が中心です。
タッチパネル式の展示や、モニターを鑑賞する展示があります。
全てがデジタルではありません。壁には懐かしいポスターの展示があります。
常設展示室はスペースに余裕があります。車椅子で問題なく観覧できるバリアフリーミュージアムです。
企画展示室もフラットでスペースに余裕があります。今回取材時は「元気がでる広告 ミニシアター」が開催されていました。映像広告の名作が次々に上映されます。
常設展示に、江戸時代からの日本の広告史を紹介する展示コーナーがあります。その概略を紹介します。
①江戸時代の広告
マーケティングの父、P・ドラッガーをして「マーケティングの原点」と言わしめた「三井の商法」が記された「引札」は、三井越後屋すなわち現在の三越のチラシです。コピーは「現金安売り掛け値なし」。世界史的にみても顧客志向の原点といわれています。
江戸時代に人気を博した「歌舞伎」は広告が満載の娯楽で「錦絵」は現代でいえば「ファッション雑誌」でした。最新の流行ファッションを着た美女が描かれ、呉服店の販売促進に役立ったそうです。
また実在の「粉おしろい」の商品名が劇中に口上される広告行為や、その「粉おしろい」を10個まとめ買いすると人気役者の「サイン入りうちわ」がもらえるというセールスプロモーション企画がありました。
幕間には「芝居見物御礼」としての興行主側からの挨拶の中で特定の商品名を口上し、更にその商品を「ご吹聴ください」というSNS的な手法まであったということです。
②明治時代の広告
明治時代になると新聞・雑誌が誕生し、いわゆる「マスメディア」に成長していきます。その明治期の初期マスメディア発展の立役者として紹介されているのは「福沢諭吉」で、「時事新報」の発刊は有名ですが、そこに積極的に広告を誘導して、日本初の広告代理店のスポンサーにもなったそうです。
③大正時代の広告
大正時代になるとポスター広告は芸術性をもってきます。そのなかでも日本初のヌード写真をつかった「壽屋の赤玉ポートワイン」のポスターは、今見てもインパクト十分な傑作です。実際に商品も驚異的な売上となり、現在のサントリーの基礎が築かれました。
入口の横はミュージアムショップです。歴史的な広告をモチーフにした、オリジナル商品が展示販売されています。
汐留のアドミュージアム東京は、車椅子で見学ができるバリアフリーな無料博物館です。
(本稿は2022年5月に書き直しました)