千葉県千葉市にある千葉市美術館の企画展です。会期は2021年4月10日から7月4日までで、途中に展示入替があります。千葉市美術館は2020年にリニューアルオープンしたバリアフリー施設です。美術館全般のバリアフリー状況については、別稿「拡張リニューアルした千葉市美術館 車椅子利用ガイド バリアフリー情報」をご参照ください。
企画展の受付は8Fです。千葉市美術館は観覧料の障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。受付で障害者手帳を提示して、無料観覧券を発券していただきます。
会場は8Fと7Fの2フロア。展示される作品や資料は約250点。ボリュームがある企画展です。
壁掛け展示される作品は、問題なく車椅子で観覧できます。ケース内展示される小型の資料も、ほとんどは低い高さにあるので、車椅子目線で観覧できます。車椅子から見難い高さの展示品は、ごく一部だけです。
8F展示室から7F展示室への移動は、通常は階段ルートですが、エレベーターを利用しても、見損ねる展示品はありません。
8Fの最初の展示室は、1960年代の大型作品が中心。この時代は「立石紘一」名です。
漫画を描き始めたのは1965年から。ペンネームが「タイガー立石」です。展示されている解説によると、「人気作家になりかけた」と本人が語っていたということ。そして1969年にミラノに移住。イタリア語はまったく話せなかったそうです。
ミラノ時代に製作された「コマ割り絵画」が数多く展示されます。ミラノでも多方面の作品で人気作家となり、徹夜続きの多忙な日々をおくったことがわかる資料が展示されています。
現地のスタッフから、人を雇い、製作者ではなくマネジメントにまわったほうが良いのではとアドバイスされ、ゾッとしたという回顧禄があります。
1982年に日本に帰り、90年頃からは漫画や絵本は「タイガー立石」、絵画や彫刻は「立石大河亞」として発表されています。前後期あわせて13点の大作の陶が展示されますが、すべて1995年から96年に製作されたもの。エネルギッシュな創作活動であったことが偲ばれます。
作品や人生の選択をみると、個性的で変わった人であったことが想像されますが、最後に展示されている晩年のポートレートは、柔和な表情の普通の人。癌により56歳で亡くなっているので、おそらく50代前半のタイガー立石氏と思われます。
1Fの多目的ルームで、晩年の大作「水の巻」が映像で無料公開されています。様々な方向で表現された立石氏のPOP‐ARTが、すべて盛り込まれているような絵巻です。動画は30分。車椅子で視聴できるので、ぜひご覧ください。また4Fの「びじゅつライブラリー」で、立石氏の本が閲覧できます。
漫画作品や各種の資料を丁寧に見て、1Fや4Fにも立ち寄ると、「大・タイガー立石展」は、観覧に3時間以上かかるボリュームのある企画展です。