上野 東京都美術館 障害のある方のための特別鑑賞会 観覧ガイド

東京都美術館で企画される「特別展」は、開催期間中の月曜日に「障害のある方のための特別鑑賞会」が開催されています。申し込めば駐車場の利用も可能です。特別鑑賞会の実際について紹介します。(※コロナ禍以後、運用方法が変化しています。最新の情報を確認して利用してください)

東京都美術館は月曜日が休館日。「特別展」開催期間中の休館日の一日に開催されるのが「特別鑑賞会」です。対象は各種の障害者手帳を持っている人と介助者1名までで、観覧は無料です。

現時点では、入室時間は1時間ごとの時間指制です。入れ替え制ではなく退室時間は一律で16時までです。400名の定員を超えた応募があった場合は抽選になります。

鑑賞には事前の申し込みが必要です。申し込み方法の詳細は特別展毎のHPにあります。指定の期間内に、申込みフォームに従い、メールか葉書で申し込みを行います。当日は当選通知と障害者手帳をもって来場します。駐車場の利用も来館予定時刻を記載の上、事前申し込みが必要です。駐車場への入路は、トーハクの前、藝大の横の狭い道に入っていきます。道路に案内板はありません。

このイベントの特徴は、絶対的な入場者が少ないため、ゆっくり鑑賞できることです。人気の特別展で、通常は人の頭越しに作品を鑑賞するような特別展でも、ゆっくり鑑賞できます。

観客が少ないので、解説をしてくれる学芸員の方も、質問したいことがあれば聞きやすい雰囲気です。イヤホンガイドレンタルは、通常通り営業しています。手話通訳付きのワンポイント説明会も開催されます。

また車椅子利用の方が多いことに備えて、通常の来客者用のエレベーター以外に、業務用のエレベーターを稼働させて、スムーズな上下階移動に備えてくれています。

休館日に開催されますので、東京都美術館内のレストランや他の展示会はお休みです。他の公募展もみたいと思う方は、その展示会が当日開催されているか、HPなどでよく確認してください。また上野公園にある周りの施設も、月曜日は休館が多いのでご注意ください。

東京都美術館

興味のある特別展があり、かつ特別鑑賞会の日に時間がとれる方はぜひご利用ください。付き添いの方の記名は不要です。ご家族でなくとも、ヘルパーさんでもOKです。

別稿で「上野 東京都美術館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を参照してください。ぜひご覧ください。

(本稿は2022年8月に加筆しました)

国立西洋美術館 企画展示室 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

世界遺産「国立西洋美術館」には企画展示室と常設展示室があります。企画展示室では魅力的な企画展が開催されます。企画展示室は1997年の竣工。完全なバリアフリー設計ではなく、車椅子ではエレベーターを乗り継いで観覧します。本稿では国立西洋美術館企画展示室のバリアフリー状況を中心に紹介します。

なお常設展示室の詳しいバリアフリー状況は、別稿「国立西洋美術館 常設展示室 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を参照してください。

国立西洋美術館

国立西洋美術館には、身障者用を含めて専用駐車場はありません。上野公園内から徒歩でアクセスします。国立西洋美術館周辺の上野公園内歩道は、路面に凹凸があり、車椅子で通行すると小さな衝撃がきます。歩道内の一部の路面がフラット加工されているので、なるべくフラット路面選んで通行してください。

国立西洋美術館の敷地内へはスロープで。彫像作品が展示される前庭内は、車椅子での移動に大きな問題はありません。

国立西洋美術館は常設展、企画展ともに観覧料の障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。会場入口で障害者手帳等を提示して減免措置を受けてください。

1F本館正面入口から入館します。入口周辺のミュージアムショップやカフェのスペースは無料エリアです。正面入口から右手に進むと、1FとB1を結ぶエレベーターが1基あります。車椅子でエレベーターに乗り込み企画展示室があるB1へ下ります。

国立西洋美術館企画展示室

B1が企画展の入場ゲートです。ここで受付スタッフに障害者手帳等を提示します。受付でB1からB3を結ぶエレベーターに案内されB2へ下ります。このエレベーターは少し狭いので、大型の車椅子と介助者の同乗は苦戦する可能性があります。

国立西洋美術館企画展示室

B2が企画展示室の入口です。ほとんどの企画展では、B2展示室入口前のロビーで、企画展の内容紹介映像が放映されています。ベンチシートがモニターの前に並んでいます。車椅子用の特別なスペースの用意は通常ありませんが、適当にベンチシートの横や前に車椅子を停めて映像を見ることができます。

国立西洋美術館企画展示室

ロビーの横にバリアフリートイレがあります。この個室はやや狭く、車椅子が何とか入るサイズです。国立西洋美術館のトイレは、新館1Fのフリーエリアにもう一か所あります。こちらのトイレは変形レイアウトですが、スペースに余裕はあります。

企画展示室はB2とB3の2フロア構成です。その企画展により展示構成および鑑賞ルートに違いがあります。企画によってはB2フロアのみを使用という場合もありますが、もっとも多いパターンである2フロア開催の場合、健常者はB2とB3は階段利用です。車椅子利用者はB2に下りるときに利用した、B1とB3を結ぶエレベーターでB3に向かいます。

観覧順のパターンの一つは、車椅子利用者はB2の展示を先にすべて見て、会場を出てB3へ下ります。現地では会場スタッフがきめ細かく誘導してくれるので、初めての利用でも困ることはありません。B3の展示を見終わると、同じエレベーターでB1へ。そしてB1で、1FとB1を結ぶエレベーターに乗り換えて、出口に向かいます。

企画展によっては、車椅子でも健常者とほぼ同じ動線でスタッフに誘導されることがあります。この場合の2フロア展示の動線は、B2の半分を見てからB3へ下り、そののち再度B2に上りもう半分を見ます。したがってB2で計2回会場内を逆流します。この観覧順のパターンでは、エレベーターには合計で6回車椅子で乗ることになります。スタッフの誘導にしたがってください。

展示方法のバリアフリーレベルはその企画展次第ですが、問題は混雑です。展示室内のワンフロア面積がそれほど広くないので、どの企画展でも展示室の通路幅は限界があります。

一つの目安ですが、チケット売り場に100人以上の行列が出来ている時は、企画展会場内は車椅子で苦戦するほどの状況になっています。あくまで経験上のことですが、行列が50人くらいまでなら、それほど圧迫されない印象です。

国立西洋美術館

国立西洋美術館の企画展示室は、車椅子では何度もエレベーターを乗り降りし、会場内を逆流しますが、会場スタッフが丁寧に誘導して下さるので、車椅子で安心して利用できます。

(本稿は2022年8月に加筆しました)

国立西洋美術館 常設展示室 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

世界遺産「国立西洋美術館」には、常設展示室と企画展示室があります。常設展示室はル・コルビュジエが設計した本館と新館にあり、コレクションはたいへん充実していますが、週末でも極端に混雑することはあまりありません。本稿は常設展示室のバリアフリー状況を中心に紹介します。

なお国立西洋美術館企画展示室の詳しいバリアフリー情報は、別稿「国立西洋美術館 企画展示室 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を参照してください。

国立西洋美術館

国立西洋美術館には、身障者用を含めて専用駐車場はありません。上野公園内から徒歩でアクセスします。上野公園内の歩道は、歩道内の一部の路面がフラット加工されています。車椅子で移動しやすい路面です。

国立西洋美術館は常設展、企画展ともに観覧料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。

国立西洋美術館は、3つの構造物からなる美術館です。本館はル・コルビュジエ設計で1959年竣工の世界遺産。新館は1979年の竣工。そして企画展示館が1997年の竣工。常設展は本館と新館を使用しています。

国立西洋美術館

常設展示室の入口は本館中央部にある「19世紀ホール」です。

国立西洋美術館

コルビュジエ設計の見どころとしては、天井部の三角窓「トップライト」、作品を下から照らせる「床照明」、そして建築的なプロムナードとして設計された2Fへ通じる「スロープ」などです。

国立西洋美術館

コルビュジエの設計と現状を紹介するパネルがあります。

国立西洋美術館

本館にはエレベーターはなく、1Fと2Fはこの「スロープ」と階段しかありません。1Fから2Fへのスロープは少し傾斜が急です。美術館の安全基準として、スロープはスタッフが車椅子の支援することになっています。若手の男性スタッフが車椅子を押してくれることが多いようです。

国立西洋美術館

本館2Fは回遊式の展示空間です。コルビュジエ設計の空間美を楽しみながら、コレクションを鑑賞します。

国立西洋美術館

階段で上る中3Fがありますが、現在は展示には使用されていません。本館2Fは全域がバリアフリーで、車椅子で問題なく鑑賞できます。

国立西洋美術館

2Fで本館から新館へフラットに移動します。

国立西洋美術館

新館2Fの鑑賞が終わると、2Fから1Fへはエレベーターで移動します。

国立西洋美術館

新館1Fも展示室です。

国立西洋美術館

常設展示室の会場内にはバリアフリートイレはありません。トイレは展示室の外、新館1Fです。ここに変わった形状のバリアフリートイレがあります。手前が手洗い設備で、奥のドアを開けると便器があるバリアフリートイレです。

国立西洋美術館

一般的なサイズの個室で、ウォシュレット付き便器、オストメイト装置が備えられています。

国立西洋美術館

企画展示室内にもバリアフリートイレがありますが、こちらのトイレはややスペースが狭いトイレです。

常設展の所蔵作品は「松方コレクション」がベースです。明治の元勲、松方正義氏の三男で、現川崎重工業、川崎造船所の初代社長の松方幸次郎氏のコレクションです。

松方コレクション

松方氏は第一次世界大戦時の造船特需で利益を上げ、その後世界恐慌で倒産の危機、と波乱万丈の人生をおくりました。大儲けした時代に、欧州で約1万点の作品を蒐集。倒産の危機に際して手放したコレクションが多数。またロンドンに保管していた膨大なコレクションは火災で焼失。パリに保管されていた400点ほどのコレクションだけが残り、戦後フランスから返還されました。元々は1万点のコレクションが400点になりました。

国立西洋美術館~常設展バリアフリー情報

本館は世界遺産です。エレベーターが後付されることはないので、これから先もプロムナードとして設計された「スロープ」を車椅子で上ります。

国立西洋美術館

国立西洋美術館の常設展示室は、上質なコレクションが鑑賞できるアート空間です。

(本稿は2022年8月に加筆しました)