都心最高峰 新宿箱根山への車椅子での近づき方と楽しみ方

東京都新宿区の「都立戸山公園」内にある「箱根山」は、江戸時代に築かれた山手線内最高峰の人造の山です。

車椅子で登山は出来ませんが、中腹の森から山頂を仰ぎ見ることはできます。無理をすれば車椅子でも近づけるルートを紹介します。

なお本稿は2019年9月に執筆しました。

都心最高峰 新宿箱根山

○箱根山の歴史

箱根山とは、この地が江戸の御三家、尾張徳川家の江戸下屋敷であったとき、庭園の池を掘った残土で造られたスケールの大きい築山です。

江戸時代の富士山信仰により、各地にこの種の人造山がありますが、現存する最大スケールの築山がこの箱根山です。標高は44.6mです。

尾張徳川家の江戸下屋敷

その後、ここは旧日本陸軍の戸山学校になり、近年、地中から大量の人骨が出土しましした。

現在でも、旧陸軍が建設した建物の基礎部などがそのまま放置されている場所もあります。

日中でも人気のないエリアで、夜は幽霊やお化けの目撃証言が多々ある心霊スポットでもあります。

旧日本陸軍の戸山学校

○現在の箱根山周辺

箱根山の周辺は、都営住宅や福祉系、研究系などの公的な施設が並ぶエリアです。

他に戸山教会や幼稚園があります。

箱根山の近くには、CVSなど商業店舗は全くありません。

駅からは距離があり、箱根山の近くに一般利用出来る駐車場はありません。

現在の箱根山周辺

○車椅子でも近づけるルート

早稲田駅方面からアクセスすると、箱根山通りが厳しい坂道なので、車椅子では辛いルートになります。

車椅子でも近づけるルート

戸山公園大久保地区方面の明治通り側から真っすぐにアクセスすると、箱根山の麓にでます。そこから中腹までが急な坂道です。このルートも車椅子利用者にはお薦めしません。

車椅子でも近づけるルート

比較的楽なのは、大久保通り方面からいったん都立戸山団地の中に入り、団地側からアクセスするルートです。それでも戸山公園に入ると未舗装でデコボコもありますが、頑張れば車椅子で箱根山の中腹ラインに行くことが出来ます。中腹ラインまで行けば、そこは緑豊かな山の中です。

車椅子でも近づけるルート

車椅子でも近づけるルート

車椅子でも近づけるルート

車椅子でも近づけるルート

○箱根山の楽しみ方

箱根山の見どころは紅葉です。とても新宿区にいるとは思えない深山幽谷の紅葉景色を楽しめます。

箱根山の楽しみ方

前出のルートで、箱根山の中腹ラインまで行けば、車椅子で本格的な山の紅葉が楽しめます。

箱根山の楽しみ方

紅葉情報は都立公園のHPでアップされています。見ごろ情報を確認して、出かけることが出来ます。

箱根山の楽しみ方

○登山証明書の発行

最後が階段ルートのため車椅子では山頂登頂はできません。

参考までの情報ですが、登頂した人には、都立公園の事務所から証明書が発行されます。

申告は自己申告。証拠は不要です。

事務所は箱根山から離れた戸山公園大久保地区にあります。

車椅子では山頂登頂はできません

箱根山は都心とは思えない自然が楽しめる場所です。ただしアクセスはバリアフリーではありません。

横穴墓群を車椅子でみる「吉見百穴」バリアフリー情報

埼玉県吉見町の「吉見百穴(よしみひゃくあな)」は、車椅子で見学ができる史跡です。しかし限界もあります。現地のバリアフリー状況を詳しく紹介します。

なお本稿は2016年10月の取材で初稿を執筆し、2019年8月に加筆修正しました。

 

○3つの見どころがある観光施設

「吉見百穴」には3つの見学ポイントがあります。

「百穴」は6世紀から7世紀にかけての墓です。確認されている穴の数は219基で、国内最大規模の横穴墓群です。

横穴がある岩山に「地下軍事工場跡」があります。戦時中に中島飛行機の工場を建設するために掘られた地下空間です。

そして「ヒカリゴケ」が横穴墓内などに自生しています。

3つの見どころがある観光施設

○駐車場から施設入口のバリアフリー状況

アクセスは車が便利です。200台を収容する無料駐車場があります。

障害者用駐車区画は駐車場の最も奥の場所に2台分用意されます。とてもスペースが広い障害者用駐車区画です。

「吉見百穴」は有料の施設です。観覧料の障害者減免制度はありません。受付で料金を支払い、施設内に入場します。

 

○資料展示館と埋蔵文化財センターを見学する

入口の右側に「資料展示館」があり、百穴のガイドビデオが放映されています。その音声は施設内全域で聞こえるように流れています。「資料展示館」は車椅子で入館は可能なフラットで開放的な資料館です。

「資料展示館」のさらに奥に「埋蔵文化財センター」があります。

「埋蔵文化財センター」は土足禁止で、スリッパに履き替えます。入口に段差はないので車椅子で入館可能です。入口に雑巾の備えはありません。出来れば自分で雑巾用意して、車椅子を拭いて入館してください。

「埋蔵文化財センター」は展示室内も含めてバリアフリーです。車椅子での館内移動に問題はありません。

「埋蔵文化財センター」内に綺麗な障害者用トイレがあります。他に独立棟のトイレにも障害者用トイレがあります。

 

○売店は2店舗

施設敷地内に売店が2店舗あります。いずれも舗装通路をすこし外れて、未舗装路を通って入店する店舗。車椅子ではアクセスに苦戦します。

 

○横穴墓群見学のバリアフリー状況

横穴墓の車椅子見学要領です。小さな岩山の側面に数多くの横穴がある奇観は、施設に入場すると全体が見えます。

平地に舗装通路が用意されているので、その上の通行はバリアフリーです。車椅子で岩山に近づくことができますが、その先の岩山の上には段差を上ります。

百穴がある岩山には階段ルートが整備され、頂上部には「見晴台」があります。ルートの途中には、横穴墓を覗きこめる箇所もあります。

岩山の上は車椅子では無理なルートです。登っている人が横穴墓を覗きこんでいる姿を、地上から眺めるしかありません。

この横穴墓は、古墳時代末期の6世紀末から7世紀末に造られたと考えられています。一つの穴に二つの段があり、複数の人が一つの穴に埋葬されたと推定されています。

明治時代から調査がすすめられました。穴の正体については、当初は住居という意見があったそうです。大正年代に国の史跡に指定されました。

横穴墓群見学のバリアフリー状況

○地下軍事工場跡のバリアフリー状況

2018年から地下軍事工場跡は、点検調査のため立入が禁止されています。それ以前の立ち入りできた時の状況を以下紹介します。

軍事工場跡は、昭和19年から20年にかけて、旧日本軍による朝鮮人強制労働で掘られた洞窟。飛行機の製造工場をつくる目的であったそうですが、未完のまま終戦。この岩山の下に、広くて背の高い地下通路と地下部屋が残されました。

軍事工場跡の通路や部屋は、床はかなりのデコボコですが、気合を入れれば車椅子で立ち入ることはできました。夏は涼しく冬は暖かい洞窟です。

公開されていたのは工場跡のごく一部ですが、それでも車椅子で周るには辛いほどの距離がありました。無理をせずに入口付近だけでも地下通路に入ると、その雰囲気を知ることができました。

仮面ライダーのロケ地、また心霊スポットとしても有名です。

 

○ヒカリゴケ観察のバリアフリー状況

ヒカリゴケは国指定の天然記念物。軍事工場跡の一部に自生しています。自生地の穴の前に「ヒカリゴケ」という看板があるので、観察スポットはすぐにわかります。

ただ、この観察スポットはかなりのデコボコ路面の先で、さらに小さな穴を覗きこんで中のヒカリゴケを見ます。車椅子での観察は苦戦します。

妖しく緑色に光るコケは、見る価値はあります。ご自身やご家族の障がいの状況に応じて、覗きこめるようであれば見学してください。

 

○百穴の地質について

百穴が分布する一帯は、凝灰質砂岩と呼ばれる掘削に適した岩盤が広がっています。

古墳時代の人も、旧日本軍も、この掘りやすい岩山を見つけたわけです。そして天然記念物のコケが自生しました。ここは不思議な歴史と偶然が積み重なった場所です。

百穴の地質について

「吉見百穴」は、施設としてバリアフリーレベルは高くはありませんが、車椅子からでも全体の不思議な光景を見ることは出来ます。

市原史跡上総国分尼寺跡展示館 バリアフリー情報

千葉県市原市の「市原史跡上総国分尼寺跡」には、車椅子で見学ができる復元された回廊とガイダンス施設があります。現地のバリアフリー状況を紹介します。

なお本稿は2018年1月の取材に基づいています。

・復元された中門、金堂、回廊

奈良時代に日本各地に建立された国分寺。上総国国分尼寺の史跡に、往時の様を再現した復元施設とガイダンス施設があり、いずれも入場入館無料です。

スロープがあり車椅子での見学は可能です。

独立棟タイプの公衆トイレがあり、障害者用トイレが用意されています。

史跡上総国分尼寺跡・展示館立派な復元施設で「中門」「金堂」それを結ぶ「回廊」があります。

 

・市原は古代の中心地

大規模な復元施設です。現地の解説版を要約すると「市原が上総国の政治文化の中心であったことを示す」ために復元したと書かれています。

史跡上総国分尼寺跡・展示館1993年に中門と展示館、1997年に金堂と回廊が公開されました。

史跡上総国分尼寺跡・展示館

・ギリギリのバリアフリー

1990年代の施設ですから、今どきのバリアフリー水準ではありません。

展示館脇に無料駐車場があり、障害者用駐車区画が1台分あります。

そこから段差回避のスロープを上り施設へ向かいます。

展示館の出入口は段差はありません。

復元施設へはほぼフラットは舗装歩道を進みます。

回廊にあがる車椅子ルートの案内があるので左折し、スロープで回廊に上ります。このスロープが木製で路面に隙間があります。車椅子での最大の難関はこの復元回廊へのスロープです。隙間に車椅子のタイヤを落とさないように気をつけてください。

史跡上総国分尼寺跡・展示館

・車椅子で復元回廊を巡る

回廊に上れば車椅子にとって大きな障害物はありません。

回廊内のスペースに下りるのは段差路。したがって車椅子では回廊を巡りながら、中門、金堂を中心に見学するコースになります。

資料に基づき、忠実に往時の様を復元しているそうです。

史跡上総国分尼寺跡・展示館

・展示館はビデオ解説が中心

復元施設の見学の前に、展示館で勉強するのが市原市のお薦めコースです。

展示館は小規模な施設。メインはビデオ解説です。展示館に入りスタッフに視聴を希望すると上映していただけます。上映後にジオラマ等を用いたスタッフの解説を聞くこともできます。最長30分コースという案内です。

史跡上総国分尼寺跡・展示館

・未完の復元施設

現地には、復元施設の完成予定図のようなものが掲示されています。「往時をすべて復元するとこういうイメージになる」ということです。用地は十分に確保されています。未完の復元施設なのかもしれません。

史跡上総国分尼寺跡・展示館

「市原史跡上総国分尼寺跡」は、一般的な知名度は高くありませんが、とても立派な復元施設です。展示館でしっかり勉強するなら、見学トータルで1時間は必要です。時間に余裕を持って利用してください。