アンケート調査から読む 障がい者入所施設と在所者の現状

障がい者入所施設と在所者の現状

全国の障がい者施設の内、入所支援サービス提供施設は約2,500箇所とされています。2018年度に全施設を対象に調査票を送付し、1,681件の有効回答を得たアンケート調査が実施されています。(平成30年度障害者総合福祉推進事業「障害者支援施設のあり方に関する実態調査」)

このデータから入所施設の現状を紹介します。

〇入所理由の一番は「家族の限界」

・「家庭での支援が困難であるため」が 68.1%

2番目の理由は「行動改善や生活能力の習得を目的に入所施設を利用するため」23.2%です。

「家庭での支援が困難」の内訳は

・「家族の高齢化や疾病により、介護者はいるが介護できない状態」41.0%

・「常時介護が必要な重度障害者であるため、介護が困難」38.2%

・「親の離婚や家族との死別等、介護者が不在」が15.4%

新規入所者の過半数は、主に親による介護に限界きたことが入所理由です。

新規入所者の年齢は、18歳から70歳台まで広範囲に分布しています。その中で、50歳から60歳前半の年齢層がやや多い傾向はありますが、極端なボリュームゾーンはありません。家族が介護の限界に達する年齢は一律ではないようです。

〇施設から地域への移行者は退所者の半分以下

・「死亡退所」32.3%、「病院(入院)」 21.8%、「自宅・アパート等(親族と同居) 14.0%

退所者の理由は、死亡と入院で過半数を占めます。

退所までの入所期間は、「5 年未満」 39.3%、「30 年以上」 13.9%で、長短極端な区分で過半数を占めます。

またアンケートでは「入所者の地域移行に取り組んでいない」施設が32.0%あり、その理由として「入所者にとって施設の支援が一番適切であるため、地域移行は不要」が、半数以下ですが37.4%あります。もちろん65.4%の施設は地域移行に取り組んでいます。

〇入所者は施設内で日常を過ごす

・「生活介護」が97.4%、「就労継続支援B型」が10.1%

昼間実施サービス内容の複数回答の結果です。

また生活介護の活動場所は「同一法人敷地内で活動」が96.1%です。入所者の平均的な日常生活が想像されます。

〇入所者の高齢化の状況

・利用条件における年齢上限を「定めていない」施設が 96.9%

「定めている」施設は 2.9%で、その平均上限年齢は「64.3歳」です。

・高齢化に伴う症状が顕著な人が「いる(いた)」 88.8%

ほとんどの施設には高齢化症状の入所者がいます。

では高齢化症状とは何か。

「全般的な 体力の低下」79.5%、「歩行困難」75.1%、「嚥下障害」 74.5%、「認知機能の低下」72.0%、などが上位回答です。

実施している支援は「形態特別食(きざみ・流動食等)の対応」 82.2%、「食事介助場面の増加」71.0%、「排泄介助場面の増加」 69.2%、「服薬管理場面の強化」 61.9%、「通院同行場面の増加」 61.3%、「口腔ケア場面の強化」 60.8%、などの回答が上位です。

・高齢化症状のある入所者の年齢「65~69 歳」 21.8%、「70~74 歳」 17.5%、「50~59 歳」 17.0%

一般的な年齢よりも早く、50歳から高齢化問題が発生しています。

また「看取り・終末期対応を実施する際の課題」として、「延命治療などについて本人への意思確認等が難しい」が複数回答で67.0%あります。

〇入所施設の医療・介護の状況

・医療的ケアを「実施している」 58.6%

ただし「施設で受け入れ可能な医療的ケア」の内容は、「服薬管理」が 78.1%、「浣腸」65.4%、「摘便」54.5%、「膀胱(留置)カテーテルの管理」 48.4%、「じょく瘡の処置(Ⅰ度・Ⅱ度)」45.7%、「創傷処置」43.1%などです。一般的にイメージされる医療的ケアとは差異があります。

・「看護職員を1名以上配置」 96.5%

常勤換算で平均2.2人を配置しています。利用者100人あたりでは平均4.5人になります。

・たん吸引・経管栄養について研修受講職員(医師、看護職員以外)は「対応していない」 60.6%

「看護職員の勤務時間帯」は「9:00~16:59」 96.0%、「17:00~19:59」 24.5%、「6:00~8:59」 22.5%です。

有資格者は確保しているが、十分なケアは出来ない状況が浮かび上がる数値です。

そのため入居者が「医療的ケアが必要になった場合」は、 86.6%の施設が「高齢者施設(特別養護老人ホーム等)への移行等で対応する」と回答しています。

〇規模・運営主体など入所施設の状況

・運営主体は97.4%が「社会福祉法人」

国、自治体、医療法人が運営する施設はごく少数です。

・1施設あたりの入所定員数は平均52.3人

40人未満の施設が15.8%。70人未満の施設で累計80%を超えます。

・1施設あたりの生活支援員は平均で約30名

管理者などを除く支援員の平均で、常勤専従者21.6人、常勤兼務者(専従換算)5.3人、非常勤者(専従換算)3.5人、合計で約30名です。

・在所者の障がい区分

「知的障害」が 69.5%、「身体障害」が 28.9%、「精神障害」が 1.2%、「難病等」が 0.4%。

・年間の死亡事故件数は 94.3%の施設が0件

転倒などの「介護事故」の市町村への年間報告件数は、平均で3.3件です。

以上、公開されている調査結果から読む、障がい者入所施設と在所者の現状です。

(本稿は2020年7月に執筆しました)

別稿で「施設で暮らす障がい者の人数 令和2年版厚生労働白書からの推計」を掲載しています。ご参照ください。