MIHO MUSEUMは滋賀県甲賀市信楽町、湖南アルプスの山中にある美術館です。I.M.ペイ氏による設計のテーマは桃源郷。受付であるレセプション棟からトンネルを通り、谷を渡る橋の先にある美術館は、建築容積の80%以上が地中に埋められています。建築物としての美術館と、約3千点のコレクションが楽しめるアートスペースです。
車椅子での利用状況を紹介します。アクセスは車が便利で、来館者用の無料駐車場が用意されています。またレセプション棟から美術館棟までの約500mの間は、車椅子対応の電気自動車が利用できます。今回問い合わせたところ、来館日時を事前に連絡していただければ、身障者用駐車スペースの確保と車椅子対応の電気自動車の準備をしておきます、というお話でした。車椅子利用者は来館前にMIHO MUSEUMへ連絡することをお薦めします。
身障者用駐車スペースは一般駐車場とは別に、レセプション棟の近くに設けられています。事前連絡をすると車の車種と色、ナンバーを聞かれ、現地に行くと駐車場の誘導スタッフの方が身障者用駐車スペースに誘導してくださいました。そして身障者用駐車スペースはパイロンが置かれて予約されていました。
レセプション棟への通常ルートは階段路です。車椅子では段差回避スロープ路に迂回します。雨天の場合、身障者用駐車スペースからレセプション棟入口までが屋根なし区間です。距離は70~80m程度。そこから先は電気自動車を利用すれば雨天でも濡れずに観覧できます。
段差回避スロープ路の入口にはわかりやすいサインが掲示されています。
スロープは緩やかな傾斜で途中に水平部が設けられています。バリアフリー法が推奨する模範的なスロープ路です。
スロープを上がるとレセプション棟が見えてきます。レセプション棟の入口まで、一部ですが小さなデコボコがある石畳風の路面を通行します。
レセプション棟の出入口は自動ドアです。受付で入館手続きをします。MIHO MUSEUMの観覧料は障がい者減免制度があり、本人は無料、介助者1名が団体料金に減免されます。
レセプション棟の前の円形広場が美術館棟まで行く電気自動車の乗り場です。乗り場には屋根があり、電気自動車も屋根とビニールシートがあります。電気自動車は予約制ではなく並んだ順で、10分から15分おきに運行されています。電気自動車の車両は、車椅子対応車両とそうではない車両があり、事前連絡をしておくと車椅子対応車両を運行する準備をしていただけます。
車椅子対応車両は中央部の座席を跳ね上げてスペースを作り、そこに簡易スロープを架けて車椅子で乗車します。車椅子仕様にすると、車椅子スペースと通常シートが1列になるので、一緒に乗車できる人数は車椅子1台と介助者2~3名です。
レセプション棟から美術館棟へのアプローチの状況です。全行程舗装路面ですが、トンネルに入るまでの区間は緩やかな上り坂です。坂道が苦手な車椅子利用者は電気自動車の利用をお薦めします。
前半は緑の中を進みます。枝垂桜が植栽されている道で、桜の下にはライトアップ装置が設置されています。
そしてトンネルに入ります。桃源郷へと続く道です。トンネル内も緩やかな傾斜がありますが、車椅子での通行に大きな問題はありません。
トンネルを抜けると美術館棟に渡る橋が見えてきます。
ここから先はほぼフラットな路面です。車椅子から谷を眺めながら通行できます。
美術館棟の正面入口は階段路です。階段を上がったエントランスが1F。電気自動車や車椅子は左に迂回し、B1のバリアフリー出入口に向かいます。
B1バリアフリー出入口は屋内サークルで、小さなデコボコがある石畳風路面です。電気自動車はここで乗降します。
館内はバリアフリー仕様で、車椅子で問題なく観覧できます。美術館棟は南館と北館があり、それぞれにエレベーターが設置されています。本来の来館コースである1Fの正面入口にエレベーターで移動しましょう。そこからピラミッド型のガラス天井が楽しめます。
1Fには大きなガラス窓があり、湖南アルプスを眺望します。手前の黒松はこの地の生きていた樹齢200年の老木で、美術館棟建設の際にいったん移植し、工事終了後に元の位置に戻されました。
コレクション鑑賞に加えて、美術館棟の建築美を館内各所で楽しむことが出来ます。
美術館棟には車椅子で問題なく館内から鑑賞できる美しい中庭があります。美術品、建築、遠景と近景が楽しめるミュージアムです。
美術館棟ではカフェ、レセプション棟ではレストランが営業しています。美術館棟観覧後は、電気自動車または徒歩でレセプション棟方面へ戻ります。
バリアフリートイレは、美術館棟に2つ、レセプション棟に1つ用意されています。最も広くて設備が充実しているのは、美術館棟北館のバリアフリートイレです。ウォシュレット付き便器、オストメイト装置が備えられています。
MIHOMUSEUMはできれば好天の日に訪れたい、車椅子で観覧できる美術館です。
(本稿は2023年6月に執筆しました)