埼玉県本庄市にある明治時代の絹産業遺産。埼玉県指定文化財で無料公開されている施設です。内部も見学できますが、段差がある構造なので、車椅子では内部見学はできません。内部見学ルートの途中には、数段の階段を上がって下りる箇所があるので、見学には階段を通過できる運動能力が必要です。しかし外観の見学には十分なバリアフリー対策が施されています。現地の状況を紹介します。
アクセスと駐車場の状況です。児玉駅から200ⅿ、徒歩3分の案内。この間のルートはフラットな地形で、アップダウンはありません。駅から車椅子でのアクセスは可能です。
車利用の場合は、来館者用無料駐車場が用意されています。収容台数は普通車21台、バス2台、それに加えてブルーペイントされた身障者用駐車スペースが屋根なしで2台分用意されています。
駐車場に公衆トイレがあり、バリアフリートイレが設置されています。このトイレは不正利用防止のために施錠されています。使用したい場合は、競進社模範蚕室の受付スタッフに申請してください。すぐに対応していただけます。
駐車場から競進社模範蚕室の前庭やその周囲にかけて、まったく段差のないフラットな構造です。
路面の整備状況がよく、快適に車椅子で移動できます。競進社模範蚕室の外観は、正面から、横から、裏から、全方位問題なく車椅子で見学できます。
内部見学の入口には、段差回避スロープが設置されています。
ただしここまでです。一歩館内に入るとすぐに段差があります。また内部見学は土足禁止。用意されているスリッパに履き替えます。
この施設に関わる歴史、建物の構造、用いられた養蚕技術などの知識があると、見学の理解が深まります。
現地には2つの解説版が建っています。一つは「本庄市及び周辺の絹産業遺産」。エリア一帯の地理歴史が分かります。
もう一つは「競進社模範蚕室」。展示公開されている建物の構造とそこで用いられた養蚕技術、また建物の歴史が解説されています。
外観しか見学できない人にお薦めのチェックポイントです。
胸像は競進社社長で、独自の養蚕技術を開発し、その教育普及に努めた木村氏です。屋根の上にある4つの高窓は、湿度調節のための工夫。内部の湿気がここから排出されます。
建物からつながる4本のスロープは、作業効率を高める工夫。スロープの後ろ、建物の下部にある木製の窓のようなものは、主に吸気をするための換気口です。この奥の建物の床下に暖房のための炉があります。
内部の様子も少々紹介します。この廊下は温度湿度を調節するために設けられた調整空間兼作業スペース。
蚕室の床にある穴から、床下の炉の暖気が上がります。
段差をクリアできる人しか内部見学は出来ませんが、施設の周囲はバリアフリー仕様です。競進社模範蚕室は外観見学だけでも、訪れる価値のある絹産業遺産です。
(本稿は2021年6月に執筆しました)