障害の表記を「障碍」に変えるべき、そのために「碍」の字を常用漢字表へ追加する検討をすることが、2018年に衆議院文部科学委員会などで決議されました。
これを受けて文化審議会国語分科会で検討が進められ、2021年3月に「障害の表記に関する国語分科会の考え方」がまとめられました。
その結論は、現時点では常用漢字に追加すべきではない、とされました。国語分科会の考え方の要点を簡潔に解説します。
〇常用漢字の定義に合致しない
国語分科会では「国語施策の観点から」と称する理由です。常用漢字の定義は「出現頻度と造語力(熟語を構成する能力)が高い漢字」とされています。「碍」の字は、この2点の定義に合致しないという結論になりました。つまり一般的に用いられる機会は少なく、「碍」の字を使用した熟語が少ないという理由です。
そして「検討の過程にある課題について周知又は問題提起するために漢字を追加することは、常用漢字表の趣旨と合っていない」と判断されました。
〇仏教語に由来する「障碍」の意味は前向きではない
「障碍」と表記して「しょうげ」と読む言葉があります。この言葉は国語辞典で以下のように説明されています。
「悪魔,悪霊などが邪魔すること。」
「事を行うときのさまたげとなるもの。特に,仏道のさまたげとなるもの。」
考え方次第ですが、一般的には良い意味をもつ漢字熟語ではありません。
しかしながら国語分科会では「害の字を、人に対して用いることが不適切であるという考え方」があり,この表記を受け入れ難いと感じている人たちがいることを重く受け止める」としています。
そして「新たな用語に関する議論を行うかどうかも含め検討されることが望ましい」と提言しています。
これらを踏まえて「国語分科会の考え方」では、以下の3点を「今後の対応」として結論付けました。
・「碍」については、直ちに常用漢字表に追加することはしない。しかし常用漢字表における課題の一つと捉え、出現頻度などの使用状況やこの漢字に関する国民の意識を調査するなど、国語施策の観点から引き続き動向を注視していく。
・常用漢字表の次の改定が行われる際には、選定基準の見直しが必要であるかどうか,改めて検討する。
・国語分科会では国語施策の観点から、用語全般に関する課題を広く解決していくための考え方を整理することができないか検討する。
要約すると、現時点では常用漢字表への追加はしないが、問題はあるので、今後も対策を検討する、としています。
《生きるちから舎ニュース 2021年3月23日付》