大自然を楽しむ観光地、長野県松本市の乗鞍高原。バリアフリーな観光スポットは限られますが、「一の瀬園地」の一部と「乗鞍自然保護センター」は車椅子で利用できます。現地の状況を紹介します。
乗鞍岳は標高3,000m超の日本で3番目に高い火山です。
もともとの地盤が隆起した地質が2,300m、そこに火山噴火による堆積物が700m乗って3,000m超。乗鞍岳は比率でいえば火山よりも隆起のほうが大きい山ですが、乗鞍高原は火山活動の痕跡で、溶岩の噴出でできた溶岩台地です。
古くから山岳信仰の対象であった乗鞍岳。遅くとも江戸時代には、乗鞍高原で人々の生活がありました。
その後は温泉開発、スキー場開発などによる環境破壊が進み、現在では乗鞍スカイラインはマイカーの乗り入れ禁止です。車椅子利用者にとっては、足を踏みいれるのが大変な環境保護エリアです。
乗鞍高原までがマイカー乗り入れ可能区域で、松本ICから1時間ほどです。ここまでなら車で簡単に行くことができます。
乗鞍高原内は、一般車両が通行できる車道があり、また各所にハイキングの起点になる駐車場があります。
ただしほとんどのハイキングコースは、車椅子での通行は無理なデコボコルートです。駐車場からまわりを見渡す程度しか出来ません。唯一「一の瀬園地」は、舗装路と木道が整備されています。
観光施設としては「乗鞍高原観光センター」があり、山頂へのシャトルバスの発着地で、食堂やトイレがあります。そのすぐ近くに乗鞍の自然を紹介する「乗鞍自然保護センター」があります。
車椅子で無理なく出来る乗鞍高原観光コースは、車でアクセスして「乗鞍高原観光センター」で休憩をとる。「乗鞍自然保護センター」で乗鞍の自然を学ぶ。そして「一の瀬園地」内を無理のない範囲で散策する。以上のコースをお薦めします。
乗鞍自然保護センターのバリアフリー状況です。乗鞍高原の中心部にある長野県立の施設です。広い無料駐車場には身障者用駐車区画があります。
建物エントランスはスロープ対応で、設備は古いながらもバリアフリートイレが用意されています。入館無料の施設です。冬季は閉館。4月から11月が開館期間です。
館内の展示は特別天然記念物ライチョウから始まります。ライチョウの生態をパネル展示。高山帯に住む孤高の鳥。絶滅危惧種です。
乗鞍には推定で100羽ほどが生息しているということ。生息域には車椅子では絶対にいけません。
乗鞍高原は数種のコウモリの生息域。そのなかでも「クビワコウモリ」が希少種。集団繁殖しているのは、乗鞍高原だけということです。
そこで繁殖用のコウモリ小屋「バットハウス」が、センターの横に建てられました。高層丸太小屋のような建物です。繁殖させて生態の調査、種の保護を行っています。見学は外観を見るだけです。
次に一の瀬園地のバリアフリー状況です。頑張ると車椅子でミズバショウが鑑賞できる、乗鞍高原の真ん中ある湿原域です。
「ネイチャープラザ一の瀬」を目指します。その前にある広い無料駐車場を利用します。「ネイチャープラザ一の瀬」横の公衆トイレに、バリアフリートイレがあります。
未舗装駐車場でデコボコな路面です。駐車場から30mほど頑張って移動すると、舗装歩道が始まります。
1.6kmほどある歩道で、300mほど進むと、歩道の脇の水の流れの淵に、最初のミズバショウ群生があります。
遊歩道はキャンプ場まで続きますが、アップダウンはかなりきつい舗装ルートです。無理のない範囲での散策をお薦めします。
ガイドブックに紹介される大きなミズバショウの群生地は、舗装歩道の終点地キャンプ場の更に1.5km先にあります。そこまでは車椅子では行けません。
「一の瀬木道」は、「ネイチャープラザ一の瀬」駐車場から南方面に1.5kmほど進んだ「まいめの池」駐車場が起点になります。木道の傷みが激しいため、2019年から2021年(予定)の間、木道はリニューアル工事のため通行止めになります。
乗鞍高原は「一の瀬園地」の一部と「乗鞍自然保護センター」は、車椅子で観光ができます。
観光客に人気の飛騨高山「高山さんまち」を別稿で紹介しています。ご参照ください。
(本稿は2019年10月に加筆しました)