岡倉天心が後半生を生きた、茨城県北茨城市の「五浦六角堂」は、車椅子での見学は大変苦労します。現地の状況を紹介します。

五浦の六角堂は、現在は茨城大学の管理施設で、正式名称は「茨城大学五浦美術文化研究所」です。東日本震災の津波で六角堂は流出しましたが、その後完全復元されています。
有料の施設ですが障がい者減免制度があり、本人と介助者1名の入場料が無料に減免になります。ただし施設は坂と段差がある構造です。車椅子での見学には限界があります。
アクセスは車が便利です。六角堂施設入口から100mほど先に無料駐車場、施設専用駐車場と県立駐車場があります。どちらも砂利面の未舗装で傾斜がある車椅子では苦戦する駐車場です。
駐車場から歩道のない舗装車道を通り施設入口に到着します。入口は登録有形文化財の「長屋門」。百年前の面影を今に伝える立派な門です。段差がある門ですが、一部簡易スロープがあるので、車椅子では慎重に通行します。
この門が入場受付です。障害者手帳等をここで提示して、入場料金の減免手続きをします。
段差のある門を通過すると、舗装された直進路があります。左にある「天心記念館」は出入口が段差で車椅子は入館できません。その先に「ウォーナー像」があります。
ここから先が階段路またはスロープ化された急坂路です。スロープはおそらく車椅子のために後付された路だと思われますが、激しい下り急坂スロープです。車椅子は慎重に進んでください。
急坂の下、その先が六角堂です。六角堂はさらに階段の下にあるので車椅子ではたどり着けません。階段の上から六角堂の屋根の一部を眺める、車椅子ではここまでが限界です。
オリジナルの六角堂は東日本大震災の津波で流出しました。現在の六角堂は再建されたものです。

施設低地部に住居であった「天心邸」と「亜細亜ハーなり」石碑があります。この2つは車椅子で見学が可能です。

現地の解説では震災の津波は「天心邸」の軒下まで到達したそうです。2施設とも流出せずにすみました。

健常者はこの先階段路で出口に向かいます。車椅子利用者は、来た道の急坂を逆に上ります。
今回訪問した日は、台風の影響で波が荒い日。大波が五浦の岩にくだけます。東京を捨て「アジアは一つ」の理想に燃えた天心が選んだ永住の地。怖いほどの自然との対峙が彼の後半生の思想と合致したのでしょうか。

「五浦六角堂」の車椅子見学は大変です。車椅子で訪れる場合は、複数の介助者との同行をお薦めします。
北茨城市の「天心記念五浦美術館」を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2017年9月の取材に基づいています)