東京都台東区谷中にある朝倉彫塑館は、彫刻家の朝倉文夫氏のアトリエと住居だった建物で、国指定名勝・国登録有形文化財です。2009年から2013年にかけて耐震補強と保存修復工事が行われましたが、昭和30年代の建物を復元しているのでバリアフリーではなく、車椅子での見学はできません。
朝倉彫塑館は有料施設ですが、入館料の障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。館内外の状況を紹介します。
アトリエ側が出入口です。敷地内は未舗装の砂利路面で出入口は段差構造、段差の上で下足を脱ぎ、用意されている下足入れ袋に入れて持ち運びます。受付はさらに段差の上にある窓口です。受付の先はアトリエ手前のホールで、横に男女共用のトイレがあります。トイレは館内に合計で3か所あります。いずれも元々ある設備を改修した昭和レトロなトイレです。
館内の見学ルートは、1Fのアトリエから住宅棟へ進み、階段で住宅棟の2Fへ上がり、外階段で屋上に上がり、そこから階段で1Fまで戻ります。旧アトリエ棟以外は、すべて見学できます。それぞれの見どころとバリアフリー面のポイントを紹介します。
コンクリート造りのアトリエ棟の1Fは、8.5mの高い天井のアトリエがあり、数多くの作品が展示されています。アトリエの床面はフラットでスペースに余裕があります。
アトリエ棟の1Fにある書斎は、恩師から譲り受けた文庫が並ぶ巨大な書庫があります。書物を手に取ることはできませんが、作り付けの書棚は必見です。
書斎から応接室を経由して木造住宅棟へ移動します。中庭の中心は「五典の池」。住宅棟内の各所から中庭の景観を楽しめます。
住宅棟の「天王寺玄関」から、靴を履いて外に出ることができます。五典の池からの水が玄関先まで流れています。天王寺玄関から一枚の窓越しに見る中庭の景観が見事です。
木造住宅棟1Fの3つの部屋を見学し、グッズ展示場の「ピアノの間」を楽しみ、階段で2Fへ上がります。
2Fの「素心の間」からは、周囲の景観と眼下の中庭が楽しめます。さらに階段で3Fへ上がります。
3Fの「朝陽の間」は大勢の客人を招くことができる大広間です。朝倉文夫氏が考案した、折り畳み収容ができる大きな座卓が置かれています。
3Fのテラスから屋上へ上がることができます。ここは急階段なので足の悪い人は注意してください。当時としては先駆的な緑化された屋上で、大きなオリーブの樹が育っています。
屋上から階段を下りてテラスに戻り、さらに数段を下りるとアトリエ棟2Fの「蘭の間」があります。
朝倉文夫氏が好きであった蘭の栽培のための温室で、ガラス天井から屋上の作品「砲丸」が見えます。
蘭の間には、朝倉文夫氏が愛した猫の作品が展示されています。
多数の猫を飼い、創作のモデルにしていたそうです。
蘭の間から階段で1Fに戻ります。グッズを購入したい場合は、受付でグッズの番号を申告し代金を支払い、品を受取ります。
台東区立朝倉彫塑館は見所が多々ある国指定名勝・国登録有形文化財です。
日暮里の大仏様がいらっしゃる、谷中霊園に隣接した「天王寺」のバリアフリー状況を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2022年11月に執筆しました)