東京都北区の旧古河庭園は、大正8年に完成した洋館、洋風庭園、日本庭園が原型を留めて残る貴重な庭園です。キャッチコピーは「和と洋が調和する大正の庭」。それが故に、車椅子で散策できる範囲は限定されます。
庭園のバリアフリー情報では「車いすルート」と「車いす利用可ルート(要介助者)」の2ルートが案内されています。それぞれの状況を紹介します。
旧古河庭園は来園者用の駐車場はありません。本郷通りに面する「正門」から入園します。「車いすルート」の起点は「正門」です。旧古河庭園の入園料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。
正門から園内に入ると、すぐに深い砂利路面になります。ここは「車いすルート」ですが、車椅子を動かすには力が必要です。
ほぼフラットな深い砂利路面が石造りの洋館の正面まで続きます。
洋館の手前に「バラ園入口」の案内がある、段差解消されたルートがあります。ここがバラ園と芝生に向かう「車いすルート」の入口です。
洋館の横の小路は、比較的砂利が浅い未舗装路面です。ここは車椅子で自走できる散策路です。この高さから、階段の下に広がるバラ園を見下ろすことができます。
そのまま芝生を周回する散策路に進めます。芝生周回路も比較的砂利が浅い散策路です。
芝生周回路の横にバリアフリートイレがあります。スペースは一般的なサイズの個室で、シンプルな設備のトイレです。
「車いすルート」はこの範囲です。正門から洋館正面まで、洋館横のバラ園から芝生周回路が「車いすルート」です。
「車いす利用可ルート(要介助者)」を紹介します。洋館正面の先から始まります。洋館は「大谷美術館」で、別途に観覧料が必要な施設です。名称は美術館ですが館内1Fの各部屋を自由見学する施設です。1Fには他に観覧料が不要な喫茶室が営業しています。どちらも段差構造なので、車椅子では洋館内に入ることはできません。
洋館正面を過ぎると、砂利が深くなってきます。フリーテーブル席が配置されるエリアを通過して「馬車道」と呼ばれる砂利路面坂道に進みます。
馬車道は決定的な段差がない道ですが、深い砂利路面の傾斜路です。介助者がいても簡単に車椅子で移動できる道ではありません。
坂道が終わるとほぼフラットな未舗装砂利路面になりますが、車椅子での移動に苦戦する砂利路面が続きます。
「広場」の横まで馬車道を車椅子で移動すると、日本庭園の心字池が車椅子から見える地点までたどり着けます。段差解消された入口から広場に移動します。広場の路面の砂利は、馬車道よりも少し薄くなります。
広場を横断して心字池に近づきます。石畳のデコボコ路になる手前まで、車椅子で進めます。その地点から車椅子で心字池を眺めることができます。
石畳路の先は、車椅子では通行できない決定的な段差がある散策路になります。
杖で歩けるレベルの人で、もう少し先まで頑張って進めると、心字池のビューポイントまでたどり着きます。
ただしここから先の「茶室」や「大滝」などがある一帯は、健脚の人でなければ通行できない激しい段差路になります。足が悪いレベルの人でも、旧古河庭園全体を周回するのは困難です。
旧古河庭園は車椅子で散策できる範囲が限定的で、かつ散策路は砂利路面です。障がいの状況や体力に応じて、無理のない範囲を散策してください。
別稿で主な都立庭園のバリアフリー情報を掲載しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2022年6月に執筆しました)