東京都千代田区三番町二番地。皇居千鳥ヶ淵に面した「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」は、環境省が管轄する国立の墓苑で、車椅子でお参りが出来る聖苑です。
1950年代になり、米軍からの遺骨送還、政府による遺骨の収集が本格化。身元不明の遺骨が比例して増加し、その取扱いが課題になりました。
憲法の定める政教分離に抵触しない方法で、国家として遺骨を奉安する施設として、この「国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑」が整備されました。現在では、施設の管理は環境省。拝礼式などの国主催の行事は厚労省の主幹になっています。
したがって、ここは政教分離に基づく国立の無宗教のお墓です。宗教法人である靖国神社とは、全く性格が異なります。
毎日開園していますが、夜間は閉まります。また慰霊行事が開催される際には、一般の参拝が制限されることもあります。お参りにお出かけの際には、事前に行事の予定をご確認ください。
それでは墓苑内のバリアフリー状況を紹介します。
西門周辺のバリアフリー状況です。墓苑の入口は、西門と東門の2つがあります。西門の横に来苑者用の無料駐車場があります。
駐車場には身障者用駐車スペースが1台分設定されています。
駐車場から墓苑内に入るルートは段差路です。
車椅子では駐車場から歩道に出て、西門から入ります。西門入口は段差回避できるスロープ部が設置されています。
その先の通路も同様に、段差回避スロープ部が設置されています。
西門側に屋外休憩スペースが用意されています。固定式テーブル席とベンチが配置されています。
次に東門周辺のバリアフリー状況です。東門からのルートは段差のないスロープ路です。
そのまま進むと左側に、2010年に建立された「平和祈念碑」「追悼慰霊碑」があります。
平和祈念碑は引揚死没者20万人の慰霊碑。引揚死没者20万人への哀悼の碑。追悼慰霊碑は戦後強制抑留で亡くなった5.5万人の慰霊碑。膨大な犠牲者の鎮魂碑です。
墓苑の奥に管理事務所があります。
その東門より横にトイレ棟があり、バリアフリートイレが用意されています。
スペースに余裕がある個室で、ウォシュレット付き便器が備えられています。
管理事務所の西門よりには、参拝者休憩所があります。
内部はテーブルと椅子が配置されています。ここに各種パンフレットが置かれています。
前には巨大なさざれ石が鎮座しています。
前屋・本屋周辺のバリアフリー状況です。前屋及び本屋の横側からアクセスすると段差があります。車椅子では前屋の正面からアクセスしてください。
段差なく前屋を通過できます。
前屋と本屋の中間地の両側に「御製の碑」があります。
一つは昭和天皇から下賜された御製。墓苑が創建された1960年の竣工です。
もう一つは、上皇陛下が戦後60周年を迎えるにあたり、歌会始めの儀で詠まれた御製。2005年の竣工です。
本屋へ向かう路面はフラットで、車椅子にデコボコの衝撃はほとんどありません。
本屋は段差のない構造で、車椅子でお参りができます。
本屋の横側まで進むことができます。
本屋の裏側には増設された納骨室があります。
慰霊行事のない日の千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、とても静かな空間です。
墓苑内の植物は、墓苑設計時に高名な専門家によって、100年先を見据えて植栽されたとのこと。墓苑の創建からすでに60年超の歳月が流れました。今ではしっかりと成長した静かな森となっています。
国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、車椅子でお参りが出来る聖苑です。
九段には戦争に関する公開施設があります。別稿で以下を掲載しています。ご参照ください。
「戦傷病者資料館国立しょうけい館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」
(本稿は2021年11月に書き直しました)