2019年度の給与実績からみる福祉従事者待遇改善の状況

福祉従事者待遇改善

障がい福祉サービス従事者の低賃金が問題になっています。厚生労働省の2020年2月調査による、給与の状況が公表されました。2019年度の職員待遇改善の状況を紹介します。

○対前年比5%増

平均給与の増加率は、5%台になりました。

引き上げ方法のアンケート調査結果は、「定期昇給」が57%、「各種手当の増加新設」が39%、「賞与の増加」が38%、「定期昇給以外の賃上げ」が22%となっています。

約半分の障がい福祉サービス事業所で、職員に対して定期昇給が実施されました。

○平均月収は30万円台

常勤者の月額平均給与金額です。調査では「経験・技能を有する職員」と「一般職員」に区分けして金額を算出しています。

※「経験・技能を有する職員」=介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士又は保育士の資格を有する者、心理指導担当職員(公認心理師を含む)、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、サービス提供責任者

※平均給与額 = 基本給(月額)+ 手当 + 一時金(10月~3月支給金額の1/6)

「経験・技能を有する職員」が対前年増額21,540円の375,120円。

「一般職員」が対前年増加額17,250円の321,820円。

各種手当と賞与を加味した平均月額なので、この金額の12倍が年収になります。

年収を計算すると

「経験・技能を有する職員」=4,501,440円/年(前年増+258,480円)

「一般職員」=3,861,840円/年(前年増+207,000円)

政府が待遇改善の一つの目安にしているのが、年収440万円以上です。「経験・技能を有する職員」は、2019年度で450万円平均になりました。

○福祉・介護職員処遇改善加算制度の利用状況

障がい福祉サービス従事者の待遇改善のための直接的な政策として、福祉事業所を対象にした標記の加算制度があります。

定められた要件を満たした事業所が、所定の申請をすると、最大で職員一人当たり月額3万7千円が加算されます。

2019年度で8割を超える事業所が、何らかの加算を取得しています。未取得の2割弱の事業所にその理由をアンケートした結果が公表されています。

「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」30%

「賃金改善の仕組みを設けることにより、職種間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため」30%

「賃金改善の仕組みをどのようにして定めたらよいかわからないため」29%

「賃金改善の仕組みを設けることにより、福祉・介護職員間の賃金バランスがとれなくなることが懸念されるため」22%

以上が加算未取得の主な理由です。

他業種との単純比較による安易な評価はできませんが、2019年度の福祉の仕事の給与は、昇給率は5%程度、年収は400万円前後でした。

(本稿は2020年11月に執筆しました)