ハンセン病負の遺産 重監房資料館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

重監房資料館

群馬県草津町にある国立の資料館です。国立療養所「栗生楽泉園」の隣接地に、2014年に開館しました。「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」により定められた、「ハンセン病患者の名誉の回復を図る」ために、差別と偏見の「歴史に関する正しい知識の普及啓発」を行い、「人権尊重の精神を育む」ことが理念です。

「重監房」とは1938年から1947年まで、「栗生楽泉園」にあった「特別病室」のことです。全国のハンセン病療養所から、行動に問題のある収容者が「草津おくり」にされ、ここに監禁されました。

重監房資料館は入館無料の施設です。団体見学は事前予約が必要で、現在は個人見学でも、コロナ対策で事前予約が推奨されています。また冬季は除雪が必要なため、11月15日から4月25日の間は、個人も事前予約が必要です。

アクセスは車が便利です。重監房資料館へは、国道から未舗装の横道に入り、大粒な石がゴロゴロしている道を400ⅿ~500ⅿほど通行します。この未舗装路面は車椅子では移動できません。車椅子利用者は、車またはタクシーの利用をお薦めします。

重監房資料館はバリアフリー仕様です。来館者用の広い無料駐車場があり、駐車場からのアプローチの先、エントランス前に1台分身障者用駐車スペースが設定されています。

重監房資料館

ただしレンガ壁に沿うアプローチには方向転換するスペースがありません。頭から身障者用駐車スペースに進むと、帰りはアプローチをオールバックで戻ることになります。

重監房資料館

エントランス周辺に段差はありません。出入口は幅広い自動ドアです。

重監房資料館

館内に入ると受付があります。予約名を告げ、検温と簡単なアンケートをして、入館手続きとなります。

重監房資料館

バリアフリートイレは用意されています。スペースに余裕がある個室で、ウォシュレット付き便器です。オストメイト、ユニバーサルベッドはありません。

重監房資料館

館内の展示は一定のルールに従い写真撮影はできますが、SNSなどへの掲載は禁止されています。

見学の最初は「レクチャー室」での映像プログラムの鑑賞です。ハンセン病患者への偏見と差別を中心に、日本の負の歴史が紹介されます。今回取材時に鑑賞したプログラムは、23分間の力作でした。レクチャー室は、教室スタイルの部屋で可動式の椅子が配置されています。車椅子での鑑賞は可能です。

次に重監房の「実寸大部分再現展示」がある、第一展示室に移動します。ここでは、重監房での監禁の様子を描いた「再現映像」を鑑賞します。7分間のプログラムです。壁をスクリーンにして可動式の椅子が配置されているので、車椅子で問題なく鑑賞できます。

再現映像を観た後に、重監房の「実寸大部分再現展示」の見学になりますが、ここは段差や通路が狭い箇所があり、車椅子では無理のない範囲での見学になります。車椅子から見学可能な範囲だけでも、重監房の異常さが深く理解できます。

展示で再現されている季節は冬。独房内は零下20度まで下がることもありましたが、薄い敷布と掛け布団だけが与えられていました。93名が収容され、23名が亡くなったと言われています。最長で500日を超えて収監された人がいます。おそらく2回の冬を重監房で過ごしたものと想像されます。

次は第二展示室へ。「歴史コーナー」「出土遺物展示」「発掘調査報告コーナー」「証言映像ブース」、そして企画展示コーナーなどがあります。

今回取材時は企画展「重監房を報道した男~関喜平展~」が開催されていました。重監房の存在は、一人の新聞記者のスクープにより世の中に知られました。

重監房資料館の隣接地は、現在も国立療養所「栗生楽泉園」があり、元患者が生活しています。もちろん、このエリアの見学はできません。

重監房資料館

重監房に収容された患者への食事の提供、そして重監房で亡くなった遺体の収容などは、栗生楽泉園に収容されていた患者の仕事であったそうです。冬季の遺体は監房内で凍り付いているので、気温が上がる昼過ぎにしか、収容できなかったということです。

重監房資料館

重監房があった地は、重監房資料館からは少し離れた場所で、草木をかき分けて進む未舗装路の先になります。重監房資料館は、車椅子で見学ができるバリアフリー施設です。

東京都東村山市の多磨全生園内にある「国立ハンセン病資料館」を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。

また別稿で、山梨県にあるハンセン病患者の救済に尽くし、自叙伝がベストセラーとなり、後に映画化された小川正子氏を紹介する記念館「小川正子記念館」を紹介しています。ご参照ください。

(本稿は2021年9月に執筆しました)