長野県富士見町の八ヶ岳富士見高原リゾートは、スキー場、ゴルフ場、日帰り温泉、宿泊施設などがある総合リゾートです。標高約1,400ⅿにハイキングコースや展望台が整備されたユニバーサルフィールド「創造の森」があり、ゴルフカートを改修した「天空カート」に乗り雲上の「天然空感」へ上がることができます。
天空カートは車椅子のままでは乗車できないので移乗が必要です。創造の森内の散策路は未舗装なので、オフロード型の車椅子に乗り換えて自然路を歩きます。
富士見高原リゾートのユニバーサルフィールドを楽しめるかは、その人の障がいとサポートの状況によります。足が悪い家族、障がいのある人とのお出かけの参考に、現地の状況を紹介します。
車椅子利用者のユニバーサルフィールド観光拠点は、日帰り温泉がある宿泊施設「ホテル八峯苑 鹿の湯」です。車椅子での利用について、事前に相談の連絡を入れることをお薦めします。周辺に広い駐車場があり、そこから段差なくホテル八峯苑のエントランスへ移動できます。
ホテル八峯苑はバリアフリー施設で、今後さらに客室のバリアフリー改修を進める計画があるそうです。1Fにはスペースに余裕があるバリアフリートイレがあります。ここで休憩をしてから、天空カート乗り場に移動することができます。
富士見高原リゾートは「バリアがあってもこれを楽しみながら解決できる環境づくりを目指し」様々なツールを導入しています。下の写真は左から悪路用電動車椅子「パラモーション」、お風呂用車椅子、小型電動カートです。悪路用電動車椅子「パラモーション」は別稿で詳しく紹介しているのでご参照ください。
ホテル八峯苑エントランスからら天空カート乗り場までは坂道を上がります。今回は事前に相談したところ、自分の車椅子に装着する「JINRIKI(ジンリキ)」を貸していただきました。介助者が人力車のイメージで車椅子をけん引する道具です。天空カート乗り場までの坂道を楽に移動できました。
天空カート乗り場とほぼ同じ高さの位置に、車椅子利用者用の駐車場が用意されているので、車でそこまで移動することもできます。障がい者用駐車場の利用は事前予約制です。
天空カートは有料のサービスです。天空カート乗り場で料金を支払います。車椅子利用者にとって、カートに移乗出来るかが大きなポイントです。カートは4人乗りで前後の席が利用できます。家族等の介助でカート内の床面の高さまで足を上げて乗り込め、シートで座位を確保できる人なら天空カートを利用できます。自分の車椅子は天空カート乗り場で預かっていただけます。
天空カートの補足情報です。カートのシートでは座位の確保が難しい人は、準備をしてシートの背もたれの角度を倒す対応ができるそうです。ただし対応には限界があるので、事前に富士見高原リゾートに相談してください。
カートの後部に大きなフックがあり、自分の車椅子を積むことができます。ただし電動など重い車椅子、サイズの大きな車椅子は積めません。また落下など積載に関するトラブル、創造の森内での自分の車椅子の破損などは、すべて利用者の自己責任になります。富士見高原リゾートは、無料で用意している創造の森用の「JINRIKI」付車椅子の使用を推奨しています。
天空カートは自動運転なので操作の必要はありませんがハンドルが前席左側についています。また前席のシートのほうが後席よりも若干低い位置です。下肢が不自由で上肢が動かせる人は前席の方が乗りやすく、且つ左側席でハンドルを握り座位を安定させることができます。
天空カートで乗り場より200ⅿ高い創造の森に移動します。急坂路の舗装路に埋め込まれた電磁誘導線に沿って、天空カートは時速3㎞で進みます。上り下りともに約25分の小旅行です。
周囲の景観を楽しみながら、ゆっくりとしたスピードでカートは進みます。美しい白樺の林があります。
カートから様々な植物や奇岩を楽しめます。天空カートは2012年に誕生しました。スピードは時速何キロがよいのか、何度も実証実験を行い、現在の時速3㎞に定まったそうです。確かにこれ以上のスピードだと、障がいのある人にとっては怖いかもしれません。ゆっくりと進む感覚が好きな方に利用していただきたい乗り物です。
天空カートで創造の森に到着します。創造の森の散策路の多くは足への負担が少ないウッドチップが撒かれた水はけのよい自然路で、アップダウンがあります。
創造の森で用意されている「JINRIKI」付オフロード用車椅子を貸していただきました。介助者が前後について車椅子を動かします。
天空カート乗降場の近くに、ドリンクスタンドが併設された車椅子で利用できるウッドデッキの展望台があります。
その下にも山肌から突き出したウッドデッキの展望台があります。ここへも段差を回避して車椅子で移動できます。
展望台からは富士山、南アルプス、北アルプス、そして諏訪湖など大パノラマを楽しめます。眼下の低地部は断層フォッサマグナです。
300ⅿほどの散策路を移動できる人は、もう一つの展望台まで車椅子で散策ができます。創造の森は「彫刻公園」で大自然の中に50体の彫刻を展示する屋外美術館でもあります。アートを鑑賞しながら自然路を車椅子で散策します。
美しい高原植物やお花、蝶やトンボ、野鳥のさえずりが楽しめます。
休憩ができるフリーテーブル席が置かれた広場が整備されています。車椅子で横から利用できる、動かせるテーブル席です。
「JINRIKI」付オフロード用車椅子で、自然に抱かれた展望台に行くことができます。一般的なバリアフリー観光では体験できない、大自然を体で感じる車椅子ハイキングが家族や仲間と楽しめます。
創造の森の散策を楽しみ、天空カートに移乗して下に降り、自分の車椅子に乗り換えます。ホテル八峯苑のレストランはランチ営業をしています。最後にレストランのバリアフリー状況を紹介します。
ホテル八峯苑の出入口はフラットな構造の自動ドアです。
レストランは1F日帰り温泉施設入口の近くにあります。ここまで段差なくエントランスから車椅子で移動できます。
店内はフラットでスペースに余裕があり、可動式のテーブル席が配置されています。
段差箇所にはスロープが設置されています。
大きな窓がある開放的なレストランです。
窓からは高原の美しい池の眺めが楽しめます。
富士見高原リゾートのユニバーサルフィールドは、四季折々の自然が楽しめる雲上の天然空感です。介助があれば天空カートやオフロード用車椅子への移乗ができる人、そして家族や仲間と自然の中での体験を楽しみたい人にお薦めします。
八ヶ岳高原にある「平山郁夫シルクロード美術館」の詳しいバリアフリー情報を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2022年9月に執筆しました)